創作企画「冥冥の澱」2
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高校を卒業したら、機関に入る。それで、司みたいに戦うんだ。
「靖及、おれ、ちゃんと戦えるかな?」
「翼なら、大丈夫だ。ただ、無茶はするな。司が、死にかけた話はしただろう?」
「うん……」
あの司ですら、死にそうになったことがある。全然死にそうにないのに。
鍵野の呪術は、司が全部教えてくれた。大切なものを守る決意は、靖及が教えてくれた。親戚のみんなは、優しさを教えてくれた。そして、ヒーローが夢をくれた。
だから、おれは、真っ直ぐ進むだけだ。それが、一番の近道。
「おれ、ヒーローになるから! 司も靖及も、みんな守るから!」
「ああ」
靖及が、おれの頭を撫でた。少し照れ臭いけど、嬉しい。
おれの腕が届くところなら、全部、おれが助けるんだ。
世界は、白か黒かでは分けられないことだらけで。人は、矛盾を抱えてばっかりで。全然、美しくないこともある。でも、少しずつ世界も、人間も、よくなってるって信じてる。
人との出会いは、重力みたい。ヒーローを真っ直ぐ目指せるのも、そのお陰。おれの名前が響くように、生きてみせるよ。
みんなが、笑顔でいられるように。勝利してみせるよ。
困った時に呼んでもらえる大人になるんだ。
おれの夢が、咲かせられますように。
今を懸命に生きて、魂燃やして、おれの“大好き”を守る。カッコよく。
ちゃんと学んで、闘志を胸に、旅を続けよう。
おれは、長い歴史の最先端に立っているんだって、知ってるから。未来を切り拓くんだ。
◆◆◆
「はじめまして。網代翼です。よろしくお願いします!」
「よろしくねぇ。僕、矢木六助。実は、はじめましてじゃないよ」
「え?」
「君が、赤ちゃんの頃に会ったことあるよ。それに、僕、司さんとよく組んでるよ」
山羊角の人は、「大きくなったねぇ」と、微笑みながら言った。
「今日は、梅の澱みだけど、油断しないようにね」
「はい!」
ふたりで、澱みが出たという建物に入る。そして、しばらく歩いていると、床が歪んだ。
「わっ!?」
「危ない!」
矢木さんが、おれを抱えて、コウモリみたいな羽根で飛ぶ。助かった。底の見えない大穴に落ちるところだった。
「うーん。これ、もう梅じゃないみたい」
「でも、おれは……」
「行くなら、付き合うよ?」
「様子を見ます」
策敵用の呪符を、大穴に落とす。
「中に本体がいます。小型です」
「じゃあ、降りる?」
「はい」
真っ暗な穴の中には、溺死体のような異形がいた。
「が、ァ…………」
「前衛、お願いします!」
「了解」
矢木さんが、鋭い爪で異形を相手取る。おれは、少しでも弱らせようと呪言を唱えた。
しばらくして。異形が倒れ込む。
「祓って!」
「天狐! 喰らえ!」
『コン!』
宵に教わったように、狐に喰わせた。
「討伐完了だね。お疲れ様」
「お疲れ様でした」
機関への報告を済ませ、帰路につく。
大丈夫。おれは、ちゃんと戦えた。
家に帰ると、「おかえり」と両親が迎える。
「司! 靖及! おれ、討伐出来たよ!」
「偉い! 優勝や!」
「よくやったな」
「へへ……」
その後、ふたりに祝われた。司の作った唐揚げは、いつも美味しい。靖及は、あんまり表情が変わらないけど、凄く喜んでくれてる。
今日も、大切な記憶になった。
「靖及、おれ、ちゃんと戦えるかな?」
「翼なら、大丈夫だ。ただ、無茶はするな。司が、死にかけた話はしただろう?」
「うん……」
あの司ですら、死にそうになったことがある。全然死にそうにないのに。
鍵野の呪術は、司が全部教えてくれた。大切なものを守る決意は、靖及が教えてくれた。親戚のみんなは、優しさを教えてくれた。そして、ヒーローが夢をくれた。
だから、おれは、真っ直ぐ進むだけだ。それが、一番の近道。
「おれ、ヒーローになるから! 司も靖及も、みんな守るから!」
「ああ」
靖及が、おれの頭を撫でた。少し照れ臭いけど、嬉しい。
おれの腕が届くところなら、全部、おれが助けるんだ。
世界は、白か黒かでは分けられないことだらけで。人は、矛盾を抱えてばっかりで。全然、美しくないこともある。でも、少しずつ世界も、人間も、よくなってるって信じてる。
人との出会いは、重力みたい。ヒーローを真っ直ぐ目指せるのも、そのお陰。おれの名前が響くように、生きてみせるよ。
みんなが、笑顔でいられるように。勝利してみせるよ。
困った時に呼んでもらえる大人になるんだ。
おれの夢が、咲かせられますように。
今を懸命に生きて、魂燃やして、おれの“大好き”を守る。カッコよく。
ちゃんと学んで、闘志を胸に、旅を続けよう。
おれは、長い歴史の最先端に立っているんだって、知ってるから。未来を切り拓くんだ。
◆◆◆
「はじめまして。網代翼です。よろしくお願いします!」
「よろしくねぇ。僕、矢木六助。実は、はじめましてじゃないよ」
「え?」
「君が、赤ちゃんの頃に会ったことあるよ。それに、僕、司さんとよく組んでるよ」
山羊角の人は、「大きくなったねぇ」と、微笑みながら言った。
「今日は、梅の澱みだけど、油断しないようにね」
「はい!」
ふたりで、澱みが出たという建物に入る。そして、しばらく歩いていると、床が歪んだ。
「わっ!?」
「危ない!」
矢木さんが、おれを抱えて、コウモリみたいな羽根で飛ぶ。助かった。底の見えない大穴に落ちるところだった。
「うーん。これ、もう梅じゃないみたい」
「でも、おれは……」
「行くなら、付き合うよ?」
「様子を見ます」
策敵用の呪符を、大穴に落とす。
「中に本体がいます。小型です」
「じゃあ、降りる?」
「はい」
真っ暗な穴の中には、溺死体のような異形がいた。
「が、ァ…………」
「前衛、お願いします!」
「了解」
矢木さんが、鋭い爪で異形を相手取る。おれは、少しでも弱らせようと呪言を唱えた。
しばらくして。異形が倒れ込む。
「祓って!」
「天狐! 喰らえ!」
『コン!』
宵に教わったように、狐に喰わせた。
「討伐完了だね。お疲れ様」
「お疲れ様でした」
機関への報告を済ませ、帰路につく。
大丈夫。おれは、ちゃんと戦えた。
家に帰ると、「おかえり」と両親が迎える。
「司! 靖及! おれ、討伐出来たよ!」
「偉い! 優勝や!」
「よくやったな」
「へへ……」
その後、ふたりに祝われた。司の作った唐揚げは、いつも美味しい。靖及は、あんまり表情が変わらないけど、凄く喜んでくれてる。
今日も、大切な記憶になった。