創作企画「冥冥の澱」2
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靖及さんが在宅で働いてくれるようになって、俺たち家族は、3人揃って過ごすことになる。
産後うつ。俺の精神は、それに侵されとる。
翅をもがれて、虫籠に放り込まれたみたいに惨めな気持ちやった。けど、靖及さんが、ずっと側で支えてくれて。翼は、日々成長していて。元気を分けてくれた。
ここは、虫籠の中やない。ふたりで作った家の中なんや。せやから、安心して暮らせる。
不安はある。元の俺に戻れるんか? いつも、そのことが心配や。
俺が急に泣くたびに、靖及さんは抱き締めて、「大丈夫だ」って言うてくれる。
冬は、ちゃんと日の光に当たらなならん。翼を抱いて、窓際へ行く。背を向けて、翼には強過ぎる光を抑えた。
「ええ子、ええ子。しっかり大きくなるんやで」
「あー……う……」
首がすわった翼を縦抱きして、「たかいたかい」すると、キャッキャとはしゃぐ。
「可愛ええなぁ」
この子の将来、楽しみやな。
「翼は、なんにでもなれる。俺と靖及さんがおるし、頼れる親戚もおる。せやから、自由に生きるんやで」
そうや。一週間振りくらいに、渚に顔見せたろ。翼を、ベビーサークルの中に座らせた。
「……渚? 今、平気やろ?」
スマホで、ビデオ通話を繋げる。
『平気やで。ちょうど、一作終わったとこや』
「ほら、翼。渚おじちゃんやで」
「あうー……」
『翼、元気か?』
「あ!」
『元気そうやな。これが気になるんか? 比翼のペンダントやで。比翼は、対の翼のことや。お前の名前と同じやな』
青色の翼。青い鳥モチーフなんやろな。
「あー」
「目で追ってるな。最近は、動くもんに興味津々やねん」
『そうかぁ。翼、もう少し大きくなったら、お母ちゃんから、ペンダントもらえるからな。楽しみにしときや』
「うー……」
「ほな、そろそろ切るで。渚は、寝食忘れたらアカンで」
『大丈夫や。最近は』
「ほんまかぁ? すぐ創作の悪魔に憑かれるからなぁ」
『ほんまやって。ほなな、なんかあったら、いつでも呼んでや』
「おおきに。ほな、またなぁ」
通話を切る。
「翼、絵本読んだろか? 何がええ?」
家にある絵本を並べた。
「う……!」
「それかぁ。さっき、渚のペンダント見たからなんか? 翼、頭ええなぁ。この話、あんま明るくないやんな? まあ、翼がええなら、ええんやけど」
青い鳥。モーリス・メーテルリンク作の童話。
「翼は、幸せの青い鳥を逃がさんようにするんやで?」
「うぅー」
俺は、翼を後ろから抱えるようにして、絵本を読む。
「むかしむかし、あるところに————」
◆◆◆
ベビーサークルの中で、司と翼が遊んでいる。
翼は、おもちゃのピアノの鍵盤をデタラメに押して、楽しそうにしていた。司は、それに拍手しながら、聴いている。
「司、翼」
「靖及さん」
「あ!」
ピアノから、こちらに興味を移す翼。
「翼、お父ちゃんやで」
「あうー」
翼を抱き締める司ごと、ふたりを抱き締めた。
「ひゃはは……」
「あー」
翼の小さな手が、俺に触れる。
いつまでも、この腕は、家族のために。
3人の幸せを守ると誓ったのだから。
産後うつ。俺の精神は、それに侵されとる。
翅をもがれて、虫籠に放り込まれたみたいに惨めな気持ちやった。けど、靖及さんが、ずっと側で支えてくれて。翼は、日々成長していて。元気を分けてくれた。
ここは、虫籠の中やない。ふたりで作った家の中なんや。せやから、安心して暮らせる。
不安はある。元の俺に戻れるんか? いつも、そのことが心配や。
俺が急に泣くたびに、靖及さんは抱き締めて、「大丈夫だ」って言うてくれる。
冬は、ちゃんと日の光に当たらなならん。翼を抱いて、窓際へ行く。背を向けて、翼には強過ぎる光を抑えた。
「ええ子、ええ子。しっかり大きくなるんやで」
「あー……う……」
首がすわった翼を縦抱きして、「たかいたかい」すると、キャッキャとはしゃぐ。
「可愛ええなぁ」
この子の将来、楽しみやな。
「翼は、なんにでもなれる。俺と靖及さんがおるし、頼れる親戚もおる。せやから、自由に生きるんやで」
そうや。一週間振りくらいに、渚に顔見せたろ。翼を、ベビーサークルの中に座らせた。
「……渚? 今、平気やろ?」
スマホで、ビデオ通話を繋げる。
『平気やで。ちょうど、一作終わったとこや』
「ほら、翼。渚おじちゃんやで」
「あうー……」
『翼、元気か?』
「あ!」
『元気そうやな。これが気になるんか? 比翼のペンダントやで。比翼は、対の翼のことや。お前の名前と同じやな』
青色の翼。青い鳥モチーフなんやろな。
「あー」
「目で追ってるな。最近は、動くもんに興味津々やねん」
『そうかぁ。翼、もう少し大きくなったら、お母ちゃんから、ペンダントもらえるからな。楽しみにしときや』
「うー……」
「ほな、そろそろ切るで。渚は、寝食忘れたらアカンで」
『大丈夫や。最近は』
「ほんまかぁ? すぐ創作の悪魔に憑かれるからなぁ」
『ほんまやって。ほなな、なんかあったら、いつでも呼んでや』
「おおきに。ほな、またなぁ」
通話を切る。
「翼、絵本読んだろか? 何がええ?」
家にある絵本を並べた。
「う……!」
「それかぁ。さっき、渚のペンダント見たからなんか? 翼、頭ええなぁ。この話、あんま明るくないやんな? まあ、翼がええなら、ええんやけど」
青い鳥。モーリス・メーテルリンク作の童話。
「翼は、幸せの青い鳥を逃がさんようにするんやで?」
「うぅー」
俺は、翼を後ろから抱えるようにして、絵本を読む。
「むかしむかし、あるところに————」
◆◆◆
ベビーサークルの中で、司と翼が遊んでいる。
翼は、おもちゃのピアノの鍵盤をデタラメに押して、楽しそうにしていた。司は、それに拍手しながら、聴いている。
「司、翼」
「靖及さん」
「あ!」
ピアノから、こちらに興味を移す翼。
「翼、お父ちゃんやで」
「あうー」
翼を抱き締める司ごと、ふたりを抱き締めた。
「ひゃはは……」
「あー」
翼の小さな手が、俺に触れる。
いつまでも、この腕は、家族のために。
3人の幸せを守ると誓ったのだから。