創作企画「冥冥の澱」2
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産後2ヶ月。11月の晴れた日。
秋晴れとは裏腹に、段々と気持ちが落ち込んでいった。
ベビーベッドで眠る、息子の翼。可愛ええのに、触れたいのに、それをしてはいけない気がする。
こんな人間が、人の親になれる訳ないやんなぁ。
俺に出来ることなんて、ないんや。子育ては、博打やないし、お得意の計算でもない。
母親が、こんなんやから、この子の人生ご破算になってまう。
そもそも、俺は、女であることも妻であることも母であることも、放棄しかねん。最低や。鍵野をやめたように、全部捨てかねん。無責任や。
自信が、磨り減っていく。生きていくことさえ、とてつもない困難に思える。坂を登っていたと思っていたら、壁にぶち当たったような。
この世には、いない方がええ親もおる。俺は、それなんや。早く、消えんと。
「司?」
「…………」
「司、泣いてるのか?」
「え? あ、俺…………」
靖及さんに言われて気付いた。両目から、涙が流れている。
「俺……アカンな…………」
「どうした?」
「なんや、もう、何も出来ん……」
「司……ゆっくり休め……」
アンタは、いつも優しく抱き締めてくれるけど、今はどうしてか、体の芯が冷えきって。まるで、世界に独りきりみたいや。
「なんか、動けん…………」
「寝室まで運ぶ」
「……おおきに」
◆◆◆
凄く疲れてんのに、眠れん。嫌な考えが、ずっと渦巻いてる。
“鍵野の陰陽師として、しっかりせぇ”
“司は、女の子なんやから”
“人として、どうかと思うわ”
“大人げないねん”
“結局、責任逃れやろ?”
過去に言われた言葉が、深く刺さった。そんなもの、いつもなら、例え、突き刺さったとしても自分で抜けるのに。
「痛…………」
頭痛と腹痛がする。
ピンで留められた羽虫の気分や。ベッドから、動けん。もう、どこへも行けん。
布団を、ぐるぐる巻いて、体を丸めた。
寒い。こんな寒いとこに、独りで。
春になったら。春になったら、大丈夫になるやろか?
でも、そんな風には思えん。
春になっても、羽化出来ずに死ぬ蛹もおる。病気になったり、寄生虫に殺されたり。
ああ、そうか。俺は、あの子にとっての癌なんやわ。だから、早く死ななアカンねんな。
あの子を、俺が殺す前に。終わりにせんと。
翼には、靖及さんがおるから。大丈夫。俺なんて、おらん方がええ。
「ははは…………」
無痛分娩選ぶと、母親としての意識が足りんようなる、とか抜かしてた奴ら、笑てるやろな。
母親どころか、人間として落第や。
こんな人間いらん。早よ死ね。
秋晴れとは裏腹に、段々と気持ちが落ち込んでいった。
ベビーベッドで眠る、息子の翼。可愛ええのに、触れたいのに、それをしてはいけない気がする。
こんな人間が、人の親になれる訳ないやんなぁ。
俺に出来ることなんて、ないんや。子育ては、博打やないし、お得意の計算でもない。
母親が、こんなんやから、この子の人生ご破算になってまう。
そもそも、俺は、女であることも妻であることも母であることも、放棄しかねん。最低や。鍵野をやめたように、全部捨てかねん。無責任や。
自信が、磨り減っていく。生きていくことさえ、とてつもない困難に思える。坂を登っていたと思っていたら、壁にぶち当たったような。
この世には、いない方がええ親もおる。俺は、それなんや。早く、消えんと。
「司?」
「…………」
「司、泣いてるのか?」
「え? あ、俺…………」
靖及さんに言われて気付いた。両目から、涙が流れている。
「俺……アカンな…………」
「どうした?」
「なんや、もう、何も出来ん……」
「司……ゆっくり休め……」
アンタは、いつも優しく抱き締めてくれるけど、今はどうしてか、体の芯が冷えきって。まるで、世界に独りきりみたいや。
「なんか、動けん…………」
「寝室まで運ぶ」
「……おおきに」
◆◆◆
凄く疲れてんのに、眠れん。嫌な考えが、ずっと渦巻いてる。
“鍵野の陰陽師として、しっかりせぇ”
“司は、女の子なんやから”
“人として、どうかと思うわ”
“大人げないねん”
“結局、責任逃れやろ?”
過去に言われた言葉が、深く刺さった。そんなもの、いつもなら、例え、突き刺さったとしても自分で抜けるのに。
「痛…………」
頭痛と腹痛がする。
ピンで留められた羽虫の気分や。ベッドから、動けん。もう、どこへも行けん。
布団を、ぐるぐる巻いて、体を丸めた。
寒い。こんな寒いとこに、独りで。
春になったら。春になったら、大丈夫になるやろか?
でも、そんな風には思えん。
春になっても、羽化出来ずに死ぬ蛹もおる。病気になったり、寄生虫に殺されたり。
ああ、そうか。俺は、あの子にとっての癌なんやわ。だから、早く死ななアカンねんな。
あの子を、俺が殺す前に。終わりにせんと。
翼には、靖及さんがおるから。大丈夫。俺なんて、おらん方がええ。
「ははは…………」
無痛分娩選ぶと、母親としての意識が足りんようなる、とか抜かしてた奴ら、笑てるやろな。
母親どころか、人間として落第や。
こんな人間いらん。早よ死ね。