創作企画「冥冥の澱」2
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飴を噛む。メロン味だった。
「メンドクセェなぁ」
来目聖爾は、もう、うんざりしている。
あの男を尾行して、夜道を歩く。そして、人気がなくなったところで。
「喰らえ、天狐」
右手を翳して、“アイツ”を殺した。オレと無関係であることの罰を受けろ。
もっと早く、こうするべきだったのだ。自分が自分でなくなる前に。
結論から言って、聖爾は、もうダメだった。変化は、不可逆。心ない殺人鬼には、もう戻れない。
ぐちゃぐちゃに。全部、ぐちゃぐちゃになった。
「なぁ、天狐。これでもう、アイツとオレは無関係じゃねぇよなぁ? 加害者と被害者だ」
『キューン』
「……ははは」
正しく、関係者である。最悪な関わり方だが。聖爾には、それしか思い付かなかった。
殺した者と殺された者。あの世があるのならば、自分に会いに来ればいい。恨み言をぶつけてくればいい。
聖爾は、いつも通りに家に帰った。そして、バイト先で余っていた弁当を電子レンジで加熱してから、食べる。特に、美味しいとも不味いとも思わない。その後、シャワーを浴びた。
排水口へ流れていく水は、真っ赤な色。返り血なんて、浴びてないのに。
シャワーの後は、特にすることがないから、聖爾は就寝した。
◆◆◆
『殺しちゃったね』
「ああ…………」
『愛してたのに』
「じゃあ、オレは、どうすりゃよかったんだよ?」
『好きにしたらいい』
「好きにしたよ」
『本当に?』
「本当…………?」
なんだ、それは?
本当は? 別に何かあるというのか?
本当は。ただ。
「…………」
目覚めは、最低だった。深夜、ベッドから飛び起きて、トイレに駆け込む。
「うっ……おぇっ…………」
胃の中のものを、全て吐いた。冷や汗が止まらない。息が苦しい。
「はーっ……はぁ…………」
聖爾は、物心ついてから初めて涙を流した。雫が、便器の中の吐瀉物の上に落ちていく。
「はぁっ……は、あ…………」
後悔。彼を殺したことへの、強い罪の意識。それが、重くのしかかってくる。
耐えられない。耐えられない。耐えられない。こんな現実は、到底受け入れられない。
だから、来目聖爾は、全てを終わらせることにした。
「本当は、ただ、抱き締めてほしかったのに…………!」
慟哭。深夜のアパートの一室だろうが、そんなことはどうでもよかった。
有刺鉄線の刺青がある首に、右手を添える。
「喰らえ、天狐!」
『キューン』
最期は、やっぱり狐の鳴き声。
聖爾の何かしらの深層意識を反映して、部屋には、首のない死体が転がる。
聖爾が浴びた初めての血は、自分のものだった。
「メンドクセェなぁ」
来目聖爾は、もう、うんざりしている。
あの男を尾行して、夜道を歩く。そして、人気がなくなったところで。
「喰らえ、天狐」
右手を翳して、“アイツ”を殺した。オレと無関係であることの罰を受けろ。
もっと早く、こうするべきだったのだ。自分が自分でなくなる前に。
結論から言って、聖爾は、もうダメだった。変化は、不可逆。心ない殺人鬼には、もう戻れない。
ぐちゃぐちゃに。全部、ぐちゃぐちゃになった。
「なぁ、天狐。これでもう、アイツとオレは無関係じゃねぇよなぁ? 加害者と被害者だ」
『キューン』
「……ははは」
正しく、関係者である。最悪な関わり方だが。聖爾には、それしか思い付かなかった。
殺した者と殺された者。あの世があるのならば、自分に会いに来ればいい。恨み言をぶつけてくればいい。
聖爾は、いつも通りに家に帰った。そして、バイト先で余っていた弁当を電子レンジで加熱してから、食べる。特に、美味しいとも不味いとも思わない。その後、シャワーを浴びた。
排水口へ流れていく水は、真っ赤な色。返り血なんて、浴びてないのに。
シャワーの後は、特にすることがないから、聖爾は就寝した。
◆◆◆
『殺しちゃったね』
「ああ…………」
『愛してたのに』
「じゃあ、オレは、どうすりゃよかったんだよ?」
『好きにしたらいい』
「好きにしたよ」
『本当に?』
「本当…………?」
なんだ、それは?
本当は? 別に何かあるというのか?
本当は。ただ。
「…………」
目覚めは、最低だった。深夜、ベッドから飛び起きて、トイレに駆け込む。
「うっ……おぇっ…………」
胃の中のものを、全て吐いた。冷や汗が止まらない。息が苦しい。
「はーっ……はぁ…………」
聖爾は、物心ついてから初めて涙を流した。雫が、便器の中の吐瀉物の上に落ちていく。
「はぁっ……は、あ…………」
後悔。彼を殺したことへの、強い罪の意識。それが、重くのしかかってくる。
耐えられない。耐えられない。耐えられない。こんな現実は、到底受け入れられない。
だから、来目聖爾は、全てを終わらせることにした。
「本当は、ただ、抱き締めてほしかったのに…………!」
慟哭。深夜のアパートの一室だろうが、そんなことはどうでもよかった。
有刺鉄線の刺青がある首に、右手を添える。
「喰らえ、天狐!」
『キューン』
最期は、やっぱり狐の鳴き声。
聖爾の何かしらの深層意識を反映して、部屋には、首のない死体が転がる。
聖爾が浴びた初めての血は、自分のものだった。