創作企画「冥冥の澱」
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かつて、私の想いは美しかった。
陽一さんから聞く思い出は、どれもこれも宝物のようで。その記憶を失ったことが、悲しくて。私は、度々泣いてしまった。
何を聞いても、自分のことだという実感がないんです。
「宵くん。大丈夫だから。僕が、宵くんのこと覚えてるから」
「はい……」
あなたは、いつも私を優しく抱き締めてくれる。
「でも、私……苦しいです…………」
みんな、大切だったはずなのに。
私の家族。幼馴染みの帆希さん。友人の紫水さんや密瑠さん。仲間のリリアンさんや司さん。同じ機関に所属している皆さん。たくさんの人たち。
その全てを覚えていない自分。
恋人のあなたのことも、忘れてしまった私。
「大丈夫。思い出せるよ」
「いつか、思い出せますか?」
「うん」
その、いつかって、いつ来ますか? 私が生きてるうちに来ますか?
「絶対、大丈夫だよ」
「絶対…………?」
「宵くんは、絶対に記憶を取り戻せるよ」
陽一さんに、そう言われると、そんな気がしてくるから、不思議だ。
「……キスしてください」
「えっ?」
「だって、したことありますよね?」
「ある…………」
「どうやってしてたんですか?」
「えーと、それは……」
「してみてください」
「う、うん」
陽一さんは、私の肩にそっと手を置いて、キスしてくれる。触れるだけの、優しいキス。
「他には?」
「あの、宵くん……」
「はい」
「いつもね、きみが積極的にしてたから、その……」
「じゃあ、キスしてもいいですか?」
「うん……」
私は、陽一さんの首に腕を回して、口付けた。
「ん…………」
キスは、段々と激しいものになっていく。
「ふ、は……あ……宵くん……」
「あなたのこと、大好きなんです」
記憶を失くす前の自分に、嫉妬してしまうくらいに。
◆◆◆
隣で眠るあなたを見つめる。
私、あなたの瞳の色を覚えてないんです。
世界で一番、好きな人のことなのに。どうしても、思い出せない。
空っぽ。だけど、それを知っていても、あなたは側にいてくれる。
人の記憶の連続性は、睡眠時に途切れてしまうんですよ。だから、眠る前の自分と、起きた後の自分が同一の存在なのかどうか、分からないんです。
私は、ずっと狐ヶ崎宵ですか?
前の私は、“狐ヶ崎の次男”以外なら、なんにでもなりたかったそうですが。こんな風には、なりたくなかったでしょうね。
ねぇ、陽一さん。記憶が戻ったら“この私”は消えてしまうんです。
けれど、そんな“私”のことも、あなたは覚えていてくれますよね?
陽一さんから聞く思い出は、どれもこれも宝物のようで。その記憶を失ったことが、悲しくて。私は、度々泣いてしまった。
何を聞いても、自分のことだという実感がないんです。
「宵くん。大丈夫だから。僕が、宵くんのこと覚えてるから」
「はい……」
あなたは、いつも私を優しく抱き締めてくれる。
「でも、私……苦しいです…………」
みんな、大切だったはずなのに。
私の家族。幼馴染みの帆希さん。友人の紫水さんや密瑠さん。仲間のリリアンさんや司さん。同じ機関に所属している皆さん。たくさんの人たち。
その全てを覚えていない自分。
恋人のあなたのことも、忘れてしまった私。
「大丈夫。思い出せるよ」
「いつか、思い出せますか?」
「うん」
その、いつかって、いつ来ますか? 私が生きてるうちに来ますか?
「絶対、大丈夫だよ」
「絶対…………?」
「宵くんは、絶対に記憶を取り戻せるよ」
陽一さんに、そう言われると、そんな気がしてくるから、不思議だ。
「……キスしてください」
「えっ?」
「だって、したことありますよね?」
「ある…………」
「どうやってしてたんですか?」
「えーと、それは……」
「してみてください」
「う、うん」
陽一さんは、私の肩にそっと手を置いて、キスしてくれる。触れるだけの、優しいキス。
「他には?」
「あの、宵くん……」
「はい」
「いつもね、きみが積極的にしてたから、その……」
「じゃあ、キスしてもいいですか?」
「うん……」
私は、陽一さんの首に腕を回して、口付けた。
「ん…………」
キスは、段々と激しいものになっていく。
「ふ、は……あ……宵くん……」
「あなたのこと、大好きなんです」
記憶を失くす前の自分に、嫉妬してしまうくらいに。
◆◆◆
隣で眠るあなたを見つめる。
私、あなたの瞳の色を覚えてないんです。
世界で一番、好きな人のことなのに。どうしても、思い出せない。
空っぽ。だけど、それを知っていても、あなたは側にいてくれる。
人の記憶の連続性は、睡眠時に途切れてしまうんですよ。だから、眠る前の自分と、起きた後の自分が同一の存在なのかどうか、分からないんです。
私は、ずっと狐ヶ崎宵ですか?
前の私は、“狐ヶ崎の次男”以外なら、なんにでもなりたかったそうですが。こんな風には、なりたくなかったでしょうね。
ねぇ、陽一さん。記憶が戻ったら“この私”は消えてしまうんです。
けれど、そんな“私”のことも、あなたは覚えていてくれますよね?