創作企画「冥冥の澱」
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毒を盛られた気がした。
缶コーヒーを“アイツ”からもらった聖爾は、コンビニバイトの休憩時間にそれを飲み干した後、空き缶を眺めて、思う。
190mlの毒は、苦かった。内側から、その毒が聖爾のことを蝕む。
空き缶を洗い、鞄にしまった。一体、何をしてるんだ? と思いながら。
「来目くん」
「はい」
聖爾と同じ、バイトの女に、声をかけられた。
「あの、これ、よかったら、どうぞ……」
「ありがとうございます」
差し出された、手作りであろうカップケーキを受け取り、鞄にしまう。
その後、仕事に戻り、淡々とレジ打ちをこなす。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
挨拶もそこそこに、いつも通り、さっさと帰宅した。
「…………」
鞄から、カップケーキの入った袋を取り出し、ゴミ箱の中に落とす。
「気持ち悪り」
あの女、しょっちゅう手作りの菓子を渡してきたり、話しかけてきたりして、うぜぇ。
手作りのものは、いつも食べずに捨てている。後日、「美味しかった?」と訊かれると、「美味しかったです」と嘘をつく。
聖爾は、次に“アイツ”からもらったものを取り出した。手に取って、しばし眺める。
それを、食器棚の中にしまった。
客観的に見て、あのカップケーキの女と、自分は同じなのだろうか? だとしたら、吐き気がする。
「チッ」
舌打ちして、聖爾は、風呂場へ向かう。ピアスを全て外して、服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
排水口へ流れていく水が、黒ずんだ赤色に見える。全身が、返り血で汚れているからだ。
もちろん聖爾は、返り血を浴びたことなどない。天狐に一呑みさせれば、そんなものは出ない。
けれど、自分は間違いなく人殺しだ。己の快楽のために、殺し続けている。
罪悪感などない。後悔もない。
だけど、もしも、いつか。“アイツ”にこのことを知られたら?
いつか、あのカップケーキみたいに、ゴミ箱に捨てられるのかな?
◆◆◆
レジ打ちをしていると、あの男が来た。
「これ、この前のお返しです」と、ポケットから棒付き飴を取り出して、例の彼に差し出す。
「お兄さん、律儀だなぁ」
苦笑しつつ、赤色の飴を受け取ってくれた。
「これ、何味?」
「さあ。いつも、口に入れてから分かるんで」
「そんなことでいいの?」
「味にこだわりないですね」
噛み心地がよければ、それで。と続ける。
「へぇ。それじゃ、お疲れさん」と、彼。
「ありがとうございました」
コンビニから出た男は、考える。
飴、噛むんだ。変な男。
缶コーヒーを“アイツ”からもらった聖爾は、コンビニバイトの休憩時間にそれを飲み干した後、空き缶を眺めて、思う。
190mlの毒は、苦かった。内側から、その毒が聖爾のことを蝕む。
空き缶を洗い、鞄にしまった。一体、何をしてるんだ? と思いながら。
「来目くん」
「はい」
聖爾と同じ、バイトの女に、声をかけられた。
「あの、これ、よかったら、どうぞ……」
「ありがとうございます」
差し出された、手作りであろうカップケーキを受け取り、鞄にしまう。
その後、仕事に戻り、淡々とレジ打ちをこなす。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
挨拶もそこそこに、いつも通り、さっさと帰宅した。
「…………」
鞄から、カップケーキの入った袋を取り出し、ゴミ箱の中に落とす。
「気持ち悪り」
あの女、しょっちゅう手作りの菓子を渡してきたり、話しかけてきたりして、うぜぇ。
手作りのものは、いつも食べずに捨てている。後日、「美味しかった?」と訊かれると、「美味しかったです」と嘘をつく。
聖爾は、次に“アイツ”からもらったものを取り出した。手に取って、しばし眺める。
それを、食器棚の中にしまった。
客観的に見て、あのカップケーキの女と、自分は同じなのだろうか? だとしたら、吐き気がする。
「チッ」
舌打ちして、聖爾は、風呂場へ向かう。ピアスを全て外して、服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
排水口へ流れていく水が、黒ずんだ赤色に見える。全身が、返り血で汚れているからだ。
もちろん聖爾は、返り血を浴びたことなどない。天狐に一呑みさせれば、そんなものは出ない。
けれど、自分は間違いなく人殺しだ。己の快楽のために、殺し続けている。
罪悪感などない。後悔もない。
だけど、もしも、いつか。“アイツ”にこのことを知られたら?
いつか、あのカップケーキみたいに、ゴミ箱に捨てられるのかな?
◆◆◆
レジ打ちをしていると、あの男が来た。
「これ、この前のお返しです」と、ポケットから棒付き飴を取り出して、例の彼に差し出す。
「お兄さん、律儀だなぁ」
苦笑しつつ、赤色の飴を受け取ってくれた。
「これ、何味?」
「さあ。いつも、口に入れてから分かるんで」
「そんなことでいいの?」
「味にこだわりないですね」
噛み心地がよければ、それで。と続ける。
「へぇ。それじゃ、お疲れさん」と、彼。
「ありがとうございました」
コンビニから出た男は、考える。
飴、噛むんだ。変な男。