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自身の俊足を活かし、見回りをするのが、おれの役目だ。
薄暗い切の湿原にて、しばしの休憩をする。ここは、おれのお気に入りの場所だ。静謐で、どこか物悲しいが、そこが好きなのである。
「はぁ」
落ち着く。おれは、いつも、考えても仕方ないことばかり考えてしまうから。頭の中を空っぽに出来るこの時間が、ありがたい。
さて。そろそろ巡回を再開するか。
おれは、ぐっと脚に力を入れて、駆け出す。風を切って。景色を、あっという間に置き去りにして。走る。
そうして、虚の岬までやって来た。そこにある洞穴を覗くと、彼がいる。
「シンシャ」
「ナマエか。俺に何か用か?」
「いや…………」
「お情けで話しかけるな」
「おれだって、ひとりだ」
誰も、おれの速さについて来れないから、毎日毎日、ひとりで見回りをしているのだ。
「でも、孤独とは縁がないだろう? おまえは、何でも出来て、頼れるナマエ様だから」
「どうして、そんなことを言う? おれは、君を…………」
「俺を?」
「理解したいだけなんだ」
シンシャ。君は、いつもひとりで。夜に閉じ込められていて。
おれは、一歩、彼に近付いた。
「それ以上、こっちに来るな、ナマエ。毒を浴びたくはないだろう?」
「避けるから、平気だ」
「バカ。俺は、忠告したからな」
また、一歩、おれはシンシャに近付く。
「寂しくないのか?」
「そんなこと、考えてどうする?」
シンシャは、否定はしなかった。どこか、痛ましい。
「ひとりにしたくないんだ。おれの我が儘だよ」
「寛容だな、本当に」
「君は、聡明だ」
「そう思うなら、放っておいてくれ」
聡明な君の出した答えが、孤独なのだろう。しかし、それを受け入れていいのか? そんな“寛容”さはいらないのではないか?
「また、来るよ」
「来なくていい」
シンシャは、そっぽを向いて、答えた。
孤高を貫くつもりなら、尊重すべきなのかもしれないが、やはり、おれはシンシャにひとりでいてほしくはない。
いつか君が、みんなの輪に入りたいと言ってくれたなら、おれは力を貸すよ。
薄暗い切の湿原にて、しばしの休憩をする。ここは、おれのお気に入りの場所だ。静謐で、どこか物悲しいが、そこが好きなのである。
「はぁ」
落ち着く。おれは、いつも、考えても仕方ないことばかり考えてしまうから。頭の中を空っぽに出来るこの時間が、ありがたい。
さて。そろそろ巡回を再開するか。
おれは、ぐっと脚に力を入れて、駆け出す。風を切って。景色を、あっという間に置き去りにして。走る。
そうして、虚の岬までやって来た。そこにある洞穴を覗くと、彼がいる。
「シンシャ」
「ナマエか。俺に何か用か?」
「いや…………」
「お情けで話しかけるな」
「おれだって、ひとりだ」
誰も、おれの速さについて来れないから、毎日毎日、ひとりで見回りをしているのだ。
「でも、孤独とは縁がないだろう? おまえは、何でも出来て、頼れるナマエ様だから」
「どうして、そんなことを言う? おれは、君を…………」
「俺を?」
「理解したいだけなんだ」
シンシャ。君は、いつもひとりで。夜に閉じ込められていて。
おれは、一歩、彼に近付いた。
「それ以上、こっちに来るな、ナマエ。毒を浴びたくはないだろう?」
「避けるから、平気だ」
「バカ。俺は、忠告したからな」
また、一歩、おれはシンシャに近付く。
「寂しくないのか?」
「そんなこと、考えてどうする?」
シンシャは、否定はしなかった。どこか、痛ましい。
「ひとりにしたくないんだ。おれの我が儘だよ」
「寛容だな、本当に」
「君は、聡明だ」
「そう思うなら、放っておいてくれ」
聡明な君の出した答えが、孤独なのだろう。しかし、それを受け入れていいのか? そんな“寛容”さはいらないのではないか?
「また、来るよ」
「来なくていい」
シンシャは、そっぽを向いて、答えた。
孤高を貫くつもりなら、尊重すべきなのかもしれないが、やはり、おれはシンシャにひとりでいてほしくはない。
いつか君が、みんなの輪に入りたいと言ってくれたなら、おれは力を貸すよ。
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