繭期がきた僕は、クランへと行くことになる。
　そこでは、友人が出来たし、尊敬する人も出来た。一人前のヴァンプになるために、僕は、日々を過ごしている。
　ティーチャーグスタフは、少々苛烈な方だが、純粋な強さを持つ人で、とても憧れる。
　ティーチャーミケランジェロは、優美な所作の方で、僕らにも優しく接してくれる素敵な方だ。
　ティーチャークラウスは…………正直、よく分からない。この先、彼を理解出来るといいのだが。
　先日、ソフィ・アンダーソンとかいうダンピールが入ってきた。僕は特に興味がなかったのだが。
　今日、そいつは、剣の試合で相手を負かした。そんなことがあっていいのか？　ダンピール風情に負けるなんてことが？
　僕は、運動でも勉学でも、あいつにだけは負けたくない。負けるものか。

「ティーチャーグスタフ、僕の剣は、どこを改善すべきでしょうか？」

　授業終わりに、僕は尋ねた。

「貴様の剣は、軽い。軽過ぎるな。だが、速さがある。それを武器にするといいだろう。下手に重さを持つ必要はない」
「はい！　ありがとうございます、ティーチャーグスタフ」

　僕は、僕らしくあればいいのだ。自信を持とう。
　ある日、僕らの間で、共同幻想騒ぎが起きた。

「カ、カイブツ！」
「何を言ってるんだ？　カイブツなんていやしないよ」

　僕は、友人にそう諭す。しかし、次の瞬間。

「あ……牙、のあるカイブツ、カイブツが見える……！」

　幻覚は、容赦なく、僕にも襲いかかってきたのだ。

「そんな……どうすれば……」

　僕は、地面に膝をつく。冷や汗が出る。
　たすけて。

「貴方たち！　大丈夫よ、安心して」
「ティーチャーミケランジェロ……」

　僕らを、優しく抱き締め、「ただの幻覚よ」と言う。

「そう、そうだよ、幻覚なんだ」

　僕は、少し落ち着きを取り戻して、友人の手を引き、群衆から離れた。
　しばらくして、ティーチャーミケランジェロが共同幻想のトリガーを発見、鎮圧する。
　後日、僕は、ティーチャーミケランジェロの元を訪ねた。

「ティーチャー、先日は、ありがとうございました。あなたのお陰で、僕も友人も無傷で済みましたから、お礼を」
「あら、いいのよ。貴方たちを守るのは、当然のことよ」
「僕は、その当然が出来ることは、素晴らしいことだと思います」
「ありがとう。貴方は優しいのね」

　ああ、そうか。僕は、強く、優しくなりたいのか。
　僕は、ふたりの恩師に感謝した。