創作企画「冥冥の澱」
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逃げている。僕を追いかけてくる闇から、逃げ続けている。
過去は、変えられない。いつも、すぐ後ろにいて、そこにあり続ける。
そして、その影から、いくつもの腕が伸びてきて、僕を痛めつけようとするの。
だから、走っている。
「六助くん」
「え?」
つい、足を止めて、振り向いてしまった。
僕は、塩の柱になってしまうの?
「六助くん、おいで」
「……うん」
その手は、僕を殴ったり、叩いたりしなかったから。手を取った。
僕が、手を引かれた方へ行くと、お日様の下で。木漏れ日の下に、あなたがいる。
今朝見た夢を、覚えていた。
優しい声で、僕を呼ぶ。優しい手で、僕を掴む。あなたの夢。
僕、平気だよ。穣さんがいるから。
今日から、学校が始まる。
担任の先生、僕を憎んでる。保健室の先生、僕を嫌ってる。クラスメイト、僕を蔑んでる。
仕方ないよね。
「おはよう、パパ、ママ」
「おはよう、ろっくん」と、ふたり。
朝ごはんは、いつも、パパが作ってくれる。料理が上手だから。
「いただきます」
ホットミルク、体が温まる。フレンチトーストは、甘くて美味しい。アボカドのサラダ、凄く好き。卵焼きは、塩味のもの。
「ごちそうさまでした」
学校に行かないと。
「いってきます」
「いってらっしゃい、ろっくん」と、僕を送り出す、パパとママ。
僕は手を振ってから、歩き出す。
冬の空気は澄んでいて、冷たくて、鋭い。マフラーも手袋もコートもあるのに、寒い。
「嫌だな…………」
◆◆◆
放課後。僕は、穣さんの家へ行く。
「いらっしゃい」
「ただいま!」
「……おかえり」
笑顔で迎えてくれる、あなたが好き。
「大好きだよ……!」
何度でも、言わせてほしい。
「僕も、大好きだよ」
何度でも、聞かせてほしい。
「ぎゅってして!」
あなたの腕の中に、飛び込んだ。
僕のこと、絶対に離さないでね。じゃないと、どこまでも落ちていっちゃうから。
「ろっくん、家においで」
「うん!」
手を繋いで歩く。
とっても幸せな時間。ずっと、こんな時間が続けばいいのにな。
でも、あの夢だけは、どうしようもない。僕には、どうにも出来ない。
穣さんの家で、話をする。他愛ない話。
「六助くん」
「なあに?」
「これ、もらってくれる?」
「え……?」
それは、首に白いリボンを巻いたテディベアだった。
「カワイイね。でも、なんで?」
「六助くんの誕生日、過ぎちゃったけど、お祝いしたくて。生まれてきてくれて、ありがとう」
「ありがとう……!」
僕の誕生日、12月23日。あの頃は、僕たち、凄く距離があったもんね。
「この熊、名前は?」
「え? えーと……みのる……?」
「あははっ! 僕の好きな人と同じ名前だ!」
過去は、変えられない。いつも、すぐ後ろにいて、そこにあり続ける。
そして、その影から、いくつもの腕が伸びてきて、僕を痛めつけようとするの。
だから、走っている。
「六助くん」
「え?」
つい、足を止めて、振り向いてしまった。
僕は、塩の柱になってしまうの?
「六助くん、おいで」
「……うん」
その手は、僕を殴ったり、叩いたりしなかったから。手を取った。
僕が、手を引かれた方へ行くと、お日様の下で。木漏れ日の下に、あなたがいる。
今朝見た夢を、覚えていた。
優しい声で、僕を呼ぶ。優しい手で、僕を掴む。あなたの夢。
僕、平気だよ。穣さんがいるから。
今日から、学校が始まる。
担任の先生、僕を憎んでる。保健室の先生、僕を嫌ってる。クラスメイト、僕を蔑んでる。
仕方ないよね。
「おはよう、パパ、ママ」
「おはよう、ろっくん」と、ふたり。
朝ごはんは、いつも、パパが作ってくれる。料理が上手だから。
「いただきます」
ホットミルク、体が温まる。フレンチトーストは、甘くて美味しい。アボカドのサラダ、凄く好き。卵焼きは、塩味のもの。
「ごちそうさまでした」
学校に行かないと。
「いってきます」
「いってらっしゃい、ろっくん」と、僕を送り出す、パパとママ。
僕は手を振ってから、歩き出す。
冬の空気は澄んでいて、冷たくて、鋭い。マフラーも手袋もコートもあるのに、寒い。
「嫌だな…………」
◆◆◆
放課後。僕は、穣さんの家へ行く。
「いらっしゃい」
「ただいま!」
「……おかえり」
笑顔で迎えてくれる、あなたが好き。
「大好きだよ……!」
何度でも、言わせてほしい。
「僕も、大好きだよ」
何度でも、聞かせてほしい。
「ぎゅってして!」
あなたの腕の中に、飛び込んだ。
僕のこと、絶対に離さないでね。じゃないと、どこまでも落ちていっちゃうから。
「ろっくん、家においで」
「うん!」
手を繋いで歩く。
とっても幸せな時間。ずっと、こんな時間が続けばいいのにな。
でも、あの夢だけは、どうしようもない。僕には、どうにも出来ない。
穣さんの家で、話をする。他愛ない話。
「六助くん」
「なあに?」
「これ、もらってくれる?」
「え……?」
それは、首に白いリボンを巻いたテディベアだった。
「カワイイね。でも、なんで?」
「六助くんの誕生日、過ぎちゃったけど、お祝いしたくて。生まれてきてくれて、ありがとう」
「ありがとう……!」
僕の誕生日、12月23日。あの頃は、僕たち、凄く距離があったもんね。
「この熊、名前は?」
「え? えーと……みのる……?」
「あははっ! 僕の好きな人と同じ名前だ!」