創作企画「冥冥の澱」
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人は、堕落する。流れを止めた水は、濁る。
赦さない。赦さない。
「明、汝れは、天狐如きで我に勝てるとでも?」
弟、狐ヶ崎宵の姿の神狐が嘲る。
「何故、俺を襲う?! 狐ヶ崎のために尽くしてきたのに!」
「汝れは、つまらぬ。つまらぬ者は、いらない。宵の方が面白かったな。もう喰らってしまったが」
あの馬鹿、死んだのか。
「要するに、これは愚弟の不始末だろう? それなら、宵を殺して終わりでいいはずだ。何故、氏神が狐ヶ崎の者を殺す?!」
「宵の妄言は、きっかけに過ぎぬ。あやつのお陰で、我は、久々に現世に来た。そうしたら、狐ヶ崎は穢れていた。だから、浄化する」
「穢れ…………?」
「何故、嫡男が他を虐げるようになった? 何故、家長が家族を傷付けるようになった? 何故、男が女を支配するようになった? 答えは、汝れらが穢れた魂だからだ。洗い流すしかない」
月が雲で隠れた夜。神狐の周りには、狐火が浮き、辺りを照らしている。
「汝れの裁定は終わっている。“黒”だ。死ね」
止まっていた異形が、動き出す。笑いながら、明の右腕に爪を立てる。
「クソ! 天狐!」
自身の狐を呼ぶ。しかし、狐は出て来ない。
「天狐! おい、どうした?!」
爪が、肉に食い込む。
明の天狐は、もう動けない。恨みを食べ過ぎたのだ。
「アアアアアハハハハハハハ!」
異形は、もう一方の爪をもって、明の右腕を切り落とした。おびただしい量の血が出る。
傷口に血が集中し、明の頭は白む。呼吸が、上手く出来ない。
「ぐっ……あ…………」
膝をつく、狐ヶ崎明。
「四肢を落とせ」
無慈悲な神。
「アアアアアハハハハハハハ!」
爪が、明に向けられる。
その時。
「明さん!」
「さい……ぞ…………」
「しっかりせぇ! 狐ヶ崎のぼん!」
彩蔵と、鍵野の女。
日本刀で、異形の爪を受ける彩蔵。明を引きずり、逃がそうとする司。
「止血せんと、アカンな……」
呪符を取り出し、それを傷口に当てる。血が流れるのは、止まった。
再び、司は明を引きずる。
「余所者がひとり。分家の者がひとり。邪魔をするなら、喰らうぞ」
「さわ……るな……劣等の女……」
「アンタなぁ、こんな時にまで————」
影の中から飛び出した大狐が、司を呑み込もうとした。
「どけ…………!」
明は力を振り絞って立ち上がり、右足で司を蹴る。
明の右脚が喰われた。
「あ…………」
目を見開く。司は、それを見ることしか出来なかった。
「あの馬鹿のせいで、狐ヶ崎は、俺は、終わりか…………」
次の瞬間、今度は、明が丸呑みされる。
「あ、ああ……明さん……! 明さん!」
彩蔵は、異形を放って、明がいたところまで駆けて来た。
「そんな…………」
戦意喪失。放心している彩蔵を、神狐が一口で呑み込んだ。
「……クソっ!」
司は、家屋の中へ退避する。
中では、砂江が状況を機関に報告し続けていた。
「司さん、逃げましょう」
「アカン。もうひとり、おるはずや」
「狐ヶ崎照雄さんは、もう食べられました」
それは、佐野が目視し、報告している。
「間に合わんかったか……」
司は、壁を殴った。
同時刻。静岡の狐ヶ崎家では、祖父母・父母・息子の雪光が喰われたことを、娘の雪夜が見ていた。
また、大阪の鍵野本家では、父母が喰われ、鍵野渚の両親も喰われる。
そして、隠居していた狐ヶ崎照雄・翳雄の両親も、姿を消した。
赦さない。赦さない。
「明、汝れは、天狐如きで我に勝てるとでも?」
弟、狐ヶ崎宵の姿の神狐が嘲る。
「何故、俺を襲う?! 狐ヶ崎のために尽くしてきたのに!」
「汝れは、つまらぬ。つまらぬ者は、いらない。宵の方が面白かったな。もう喰らってしまったが」
あの馬鹿、死んだのか。
「要するに、これは愚弟の不始末だろう? それなら、宵を殺して終わりでいいはずだ。何故、氏神が狐ヶ崎の者を殺す?!」
「宵の妄言は、きっかけに過ぎぬ。あやつのお陰で、我は、久々に現世に来た。そうしたら、狐ヶ崎は穢れていた。だから、浄化する」
「穢れ…………?」
「何故、嫡男が他を虐げるようになった? 何故、家長が家族を傷付けるようになった? 何故、男が女を支配するようになった? 答えは、汝れらが穢れた魂だからだ。洗い流すしかない」
月が雲で隠れた夜。神狐の周りには、狐火が浮き、辺りを照らしている。
「汝れの裁定は終わっている。“黒”だ。死ね」
止まっていた異形が、動き出す。笑いながら、明の右腕に爪を立てる。
「クソ! 天狐!」
自身の狐を呼ぶ。しかし、狐は出て来ない。
「天狐! おい、どうした?!」
爪が、肉に食い込む。
明の天狐は、もう動けない。恨みを食べ過ぎたのだ。
「アアアアアハハハハハハハ!」
異形は、もう一方の爪をもって、明の右腕を切り落とした。おびただしい量の血が出る。
傷口に血が集中し、明の頭は白む。呼吸が、上手く出来ない。
「ぐっ……あ…………」
膝をつく、狐ヶ崎明。
「四肢を落とせ」
無慈悲な神。
「アアアアアハハハハハハハ!」
爪が、明に向けられる。
その時。
「明さん!」
「さい……ぞ…………」
「しっかりせぇ! 狐ヶ崎のぼん!」
彩蔵と、鍵野の女。
日本刀で、異形の爪を受ける彩蔵。明を引きずり、逃がそうとする司。
「止血せんと、アカンな……」
呪符を取り出し、それを傷口に当てる。血が流れるのは、止まった。
再び、司は明を引きずる。
「余所者がひとり。分家の者がひとり。邪魔をするなら、喰らうぞ」
「さわ……るな……劣等の女……」
「アンタなぁ、こんな時にまで————」
影の中から飛び出した大狐が、司を呑み込もうとした。
「どけ…………!」
明は力を振り絞って立ち上がり、右足で司を蹴る。
明の右脚が喰われた。
「あ…………」
目を見開く。司は、それを見ることしか出来なかった。
「あの馬鹿のせいで、狐ヶ崎は、俺は、終わりか…………」
次の瞬間、今度は、明が丸呑みされる。
「あ、ああ……明さん……! 明さん!」
彩蔵は、異形を放って、明がいたところまで駆けて来た。
「そんな…………」
戦意喪失。放心している彩蔵を、神狐が一口で呑み込んだ。
「……クソっ!」
司は、家屋の中へ退避する。
中では、砂江が状況を機関に報告し続けていた。
「司さん、逃げましょう」
「アカン。もうひとり、おるはずや」
「狐ヶ崎照雄さんは、もう食べられました」
それは、佐野が目視し、報告している。
「間に合わんかったか……」
司は、壁を殴った。
同時刻。静岡の狐ヶ崎家では、祖父母・父母・息子の雪光が喰われたことを、娘の雪夜が見ていた。
また、大阪の鍵野本家では、父母が喰われ、鍵野渚の両親も喰われる。
そして、隠居していた狐ヶ崎照雄・翳雄の両親も、姿を消した。