創作企画「冥冥の澱」
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アイツを見てると、なんかムラムラする。
来目聖爾の心の中に、何かが落ちてきた。それは、ひとつの小石のようなもの。しかし、それは波紋を広げた。
それが恋だと、聖爾は気付いていない。そんなものは知らない。だから、「なんかムラムラする」「泣かせたくなる」「めちゃくちゃにしたくなる」「喰らいたくなる」という、聖爾の本能的な欲求しか浮かばないのである。
「天狐。アイツ、美味いのかな?」
『コン』
「不味そうだよな」
『コン……』
薄く笑い、聖爾は、相手に目を向けた。向こうは、聖爾が見ていることに気付いていない。生まれながらの狂人の目に。獲物を見る獣じみた男に。
特段、何をするでもなく、獣の男は去った。
その夜、獣は夢を見る。大きな化け狐になって、気になる“アイツ”を貪る夢。
最初に、内腿を舐めた。びくりと反応する体が、面白かった。そして、その部分を齧る。柔らかくて、存外美味しい。
悲鳴が聴こえる。もっと聴きたいと思った。
次は、脇腹にしよう。そこを舐め上げてから、泣き喚く獲物を噛んだ。まだ、肉には食い込ませない。軽く、噛んだだけ。それなのに涙をこぼす顔が哀れで、面白い。面白いから、よく見せろ。爪を立てて、顔を掴んだ。頬に、赤い線が出来る。
雫が、狐の手に滴った。それを舐めると、塩辛くて、それはそれで、味わい深い。
「アアアハハハハハハ!」
獣から、笑い声のようなものが漏れ出た。
それを聴いた者は、怯え、身を守るように腕を動かす。
だから、両腕を食いちぎってやった。
響く絶叫。
楽しい。楽しい。
美味い。気分がいい。
もっと欲しい。
獣の欲望は、膨れ上がった。
化け狐は、肌を舌で舐め、肉を爪で引き裂き、牙で噛み、味わう。
夢中でそうしているうちに、獲物は静かになり、ぴくりとも動かなくなった。
『また殺しちゃったね』
「…………天狐か」
『何人目?』
「知らねぇ」
『壊し方しか知らないものね』
「ア?」
『愛してたのに』
「ハ?」
そこで、夢は醒める。
「…………」
来目聖爾は、目覚めた。朝日が、カーテンの隙間から入り込んでいて、不快に思う。
愛してたのに?
愛? 愛ってなんだ?
オレが? アイツを?
愛してたのに、殺した?
「なんだそれ……」
馬鹿らしい。恋愛なんて、繁殖のための迂遠なシステムだ。くだらない。
そう、一蹴しようとした。
だけど、自分の心臓の様子が、おかしくて。聖爾は、胸元のシャツを、ぐしゃりと握る。
「馬っ鹿みてぇ…………」
来目聖爾の心の中に、何かが落ちてきた。それは、ひとつの小石のようなもの。しかし、それは波紋を広げた。
それが恋だと、聖爾は気付いていない。そんなものは知らない。だから、「なんかムラムラする」「泣かせたくなる」「めちゃくちゃにしたくなる」「喰らいたくなる」という、聖爾の本能的な欲求しか浮かばないのである。
「天狐。アイツ、美味いのかな?」
『コン』
「不味そうだよな」
『コン……』
薄く笑い、聖爾は、相手に目を向けた。向こうは、聖爾が見ていることに気付いていない。生まれながらの狂人の目に。獲物を見る獣じみた男に。
特段、何をするでもなく、獣の男は去った。
その夜、獣は夢を見る。大きな化け狐になって、気になる“アイツ”を貪る夢。
最初に、内腿を舐めた。びくりと反応する体が、面白かった。そして、その部分を齧る。柔らかくて、存外美味しい。
悲鳴が聴こえる。もっと聴きたいと思った。
次は、脇腹にしよう。そこを舐め上げてから、泣き喚く獲物を噛んだ。まだ、肉には食い込ませない。軽く、噛んだだけ。それなのに涙をこぼす顔が哀れで、面白い。面白いから、よく見せろ。爪を立てて、顔を掴んだ。頬に、赤い線が出来る。
雫が、狐の手に滴った。それを舐めると、塩辛くて、それはそれで、味わい深い。
「アアアハハハハハハ!」
獣から、笑い声のようなものが漏れ出た。
それを聴いた者は、怯え、身を守るように腕を動かす。
だから、両腕を食いちぎってやった。
響く絶叫。
楽しい。楽しい。
美味い。気分がいい。
もっと欲しい。
獣の欲望は、膨れ上がった。
化け狐は、肌を舌で舐め、肉を爪で引き裂き、牙で噛み、味わう。
夢中でそうしているうちに、獲物は静かになり、ぴくりとも動かなくなった。
『また殺しちゃったね』
「…………天狐か」
『何人目?』
「知らねぇ」
『壊し方しか知らないものね』
「ア?」
『愛してたのに』
「ハ?」
そこで、夢は醒める。
「…………」
来目聖爾は、目覚めた。朝日が、カーテンの隙間から入り込んでいて、不快に思う。
愛してたのに?
愛? 愛ってなんだ?
オレが? アイツを?
愛してたのに、殺した?
「なんだそれ……」
馬鹿らしい。恋愛なんて、繁殖のための迂遠なシステムだ。くだらない。
そう、一蹴しようとした。
だけど、自分の心臓の様子が、おかしくて。聖爾は、胸元のシャツを、ぐしゃりと握る。
「馬っ鹿みてぇ…………」