創作企画「冥冥の澱」
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恋は楽しくなかった。
網代司は、恋に敗れ続けてきたし、矢木六助の恋は、罪だったからである。
「司さん、怪我、もう大丈夫なの?」
「大丈夫やで。こんなん、お狐様パワーですぐ治るわ」
実際のところ、司の大怪我は、治りが早かった。それは、司の異様な生命力と、神狐の加護によるもの。
現在も、機関にて“あの時”の澱みの調査が行われており、ふたりは当事者として呼ばれたのだ。
「司さん、僕……僕のせいで……」
「んな訳あるかい! 悪いのは、あの異常な成長速度の澱みやろ」
しゅんとした六助の背中を、ばしんと叩く。
「うん…………」
「やめやめ。六助ちゃん、なんかおもろい話してや」
「面白い? うーんと。パパがママのことをお姫様抱っこして、羽根のように軽いねって言ってた」
「少女漫画やんけ」
「でも、僕たち、みんな羽根生えてるよ?」
「ふ、ふふふ。そういや、そうやな! おもろ!」
司は、自分の膝をばしばし叩いて笑った。
「ねぇ、司さん」
「なんや?」
「恋って、きらきらしてる? 僕の恋は、苦しかったよ。辛かったよ。何度も踏み潰されたよ。それでも、きらきらしてるのかなぁ?」
「しとるやろ。それが、心の中に入っとると、光るからな。司ちゃんは、ぎらっぎらやで」
六助の、踏み潰された紙風船みたいな恋心。それも、輝いているのだろうか?
「ま、俺も過去の恋はゴミカスみたいなもんやったけどな。いっつも捨てられてきたわ」
従兄のことを思い出す。実は、司自身も、鍵野渚と同じで、付き合った者に幻滅されてきた。
「でも、それは結果の話や。過程は、まあまあ輝いとったで。ほんで、今の俺は、もうずっと幸せが約束されとるからな。ぎらっぎらやろ?」
「つまり、僕が頑張れば、恋は輝くの?」
「ちゃうちゃう。“ふたりで”頑張れば、や。運命の糸になるか、祭りの紐くじみたいなんなるかは、正味分からんけどな。でも、引っ張らんと絶対に当たらんで」
「ふたりで…………」
六助は、両手を祈るように組む。
「好きな相手がおんねやら、人生賭けたれや。全ツッパや」
「僕、頑張る。穣さんと」
「みのるさんと?」
司は、大口を開けて、ポカンとした。
「僕の好きな人」
「熊谷穣さん?」
「うん」
照れながら、六助は肯定する。
「犯罪や! 歳の差えぐいで!」
「司さんも、そうでしょ?」
「うちは、ええねん。成人と成人なんやから。六助ちゃんは、高校生やんか!」
「だって、好きになっちゃったんだもん」
「可愛く言ってもアカンで」
「僕、カワイイから、何してもいいんだもん!」
六助は、ぷんぷん怒った。
「なんやその理屈」
「それに、プラトニックだもん。ゆるされるもん」
「……せやな。知らんけど」
まあ、幸せなら、ええんちゃう? 知らんけど。
恋とは、頭の中を這い回るバグのようなものである。
網代司は、恋に敗れ続けてきたし、矢木六助の恋は、罪だったからである。
「司さん、怪我、もう大丈夫なの?」
「大丈夫やで。こんなん、お狐様パワーですぐ治るわ」
実際のところ、司の大怪我は、治りが早かった。それは、司の異様な生命力と、神狐の加護によるもの。
現在も、機関にて“あの時”の澱みの調査が行われており、ふたりは当事者として呼ばれたのだ。
「司さん、僕……僕のせいで……」
「んな訳あるかい! 悪いのは、あの異常な成長速度の澱みやろ」
しゅんとした六助の背中を、ばしんと叩く。
「うん…………」
「やめやめ。六助ちゃん、なんかおもろい話してや」
「面白い? うーんと。パパがママのことをお姫様抱っこして、羽根のように軽いねって言ってた」
「少女漫画やんけ」
「でも、僕たち、みんな羽根生えてるよ?」
「ふ、ふふふ。そういや、そうやな! おもろ!」
司は、自分の膝をばしばし叩いて笑った。
「ねぇ、司さん」
「なんや?」
「恋って、きらきらしてる? 僕の恋は、苦しかったよ。辛かったよ。何度も踏み潰されたよ。それでも、きらきらしてるのかなぁ?」
「しとるやろ。それが、心の中に入っとると、光るからな。司ちゃんは、ぎらっぎらやで」
六助の、踏み潰された紙風船みたいな恋心。それも、輝いているのだろうか?
「ま、俺も過去の恋はゴミカスみたいなもんやったけどな。いっつも捨てられてきたわ」
従兄のことを思い出す。実は、司自身も、鍵野渚と同じで、付き合った者に幻滅されてきた。
「でも、それは結果の話や。過程は、まあまあ輝いとったで。ほんで、今の俺は、もうずっと幸せが約束されとるからな。ぎらっぎらやろ?」
「つまり、僕が頑張れば、恋は輝くの?」
「ちゃうちゃう。“ふたりで”頑張れば、や。運命の糸になるか、祭りの紐くじみたいなんなるかは、正味分からんけどな。でも、引っ張らんと絶対に当たらんで」
「ふたりで…………」
六助は、両手を祈るように組む。
「好きな相手がおんねやら、人生賭けたれや。全ツッパや」
「僕、頑張る。穣さんと」
「みのるさんと?」
司は、大口を開けて、ポカンとした。
「僕の好きな人」
「熊谷穣さん?」
「うん」
照れながら、六助は肯定する。
「犯罪や! 歳の差えぐいで!」
「司さんも、そうでしょ?」
「うちは、ええねん。成人と成人なんやから。六助ちゃんは、高校生やんか!」
「だって、好きになっちゃったんだもん」
「可愛く言ってもアカンで」
「僕、カワイイから、何してもいいんだもん!」
六助は、ぷんぷん怒った。
「なんやその理屈」
「それに、プラトニックだもん。ゆるされるもん」
「……せやな。知らんけど」
まあ、幸せなら、ええんちゃう? 知らんけど。
恋とは、頭の中を這い回るバグのようなものである。