創作企画「冥冥の澱」
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鍵野の新年会。従妹の司が、きらっきらの紅白の着物着て、家の中を歩く。去年、結婚した“縁起者”やからな。それに、命拾いもした。せやから、司の強運にあやかろうっちゅう訳や。
「よっ! べっぴんさん!」
親戚のオッサンらが司に声をかける。司は、勝ち気な笑みで「せやろ?」と返した。
実は、俺には目的がある。“あの人”のことを、恥じを忍んで、司に訊くんや。
司が普通の着物に着替えて、俺の隣の席に戻ってきた時がチャンスや。
あの綺麗な青色が、ずっと頭の中にあんねん。
夢にも見た。海の中で、“あの人”に会う夢。俺は、溺れながら、“あの人”を追いかけた。そして、想いを告げようとしたんや。けど、水中で言葉が紡げるはずもなく。俺の口からは、空気しか出んかった。そしたら、“あの人”が。
「ここは海だから、人は溺れて死んでしまうよ」
そう言った。どんな声だったかは、思い出せん。
俺は、なんて返せばよかったんやろ?
◆◆◆
「一青梓さんやろなぁ」
「一青、あずささん」
「この人やろ?」
司がスマホを弄り、結婚式の時の写真を出す。写る人並みの中に、“あの人”がいた。
一青梓さん。彼は、機関の観測班の人。そうかぁ、男の人なんやぁ。
「渚が片想いなぁ。なんや、おもろいな」
「おもろないわ!」
「いっつも、姉ちゃんらに寄って来られて、断る理由もあらへんからて付き合うて、あまりにも恋人甲斐がないからフラれて。っちゅう一連の流れのエキスパートやん」
「ぐうの音も出ぇへん!」
「ひゃははっ! 渚、頑張りやぁ~」
「他人事やな、自分」
「応援しとるで、“渚兄ちゃん”」
「……からかうなや」
人の恋路を。この女、ちょっと可愛いくて豪快で運がええからってナメよって。
そやった。
「司ぁ、これ、やるわ。快気祝いや」
「ありがとやで」
中身は、青色のシーグラスのピアス。
「はぁ~。分っかりやすいやっちゃなぁ! 梓さんに渡しや!」
「んなこと出来るかいな!」
「は~ん。じゃあ司ちゃんが、これ着けて、梓さんの前通ったろ。ほんで、なんかいい感じに渚の紹介をしてやな」
「アホ。いらん気ぃ回すなや」
「せやけど」
「ええねん、ええねん。俺の美の神であれば、そんで」
「殊勝やなぁ」
そうは言うたけど。
新年会から帰った後、俺は、「一青梓」でネット検索しとった。アホ。
結果。なんも出て来ぃひん。
「は?」
モデルかなんかしとるんとちゃうの? じゃなくても、SNSかなんかあらへんの?
「ないやん…………」
どないやねん。
世界は、一青梓さんのことを見付けてへんのか? ほんまに?
せやったら、ほんま、この世界の人間アホちゃうか?
ほんなら、俺が。俺が、アクセサリーのモデル頼んだろかなぁ?
美しい人が表舞台におらんのは、世界の損失やないの? なぁ、お狐様よ。
「よっ! べっぴんさん!」
親戚のオッサンらが司に声をかける。司は、勝ち気な笑みで「せやろ?」と返した。
実は、俺には目的がある。“あの人”のことを、恥じを忍んで、司に訊くんや。
司が普通の着物に着替えて、俺の隣の席に戻ってきた時がチャンスや。
あの綺麗な青色が、ずっと頭の中にあんねん。
夢にも見た。海の中で、“あの人”に会う夢。俺は、溺れながら、“あの人”を追いかけた。そして、想いを告げようとしたんや。けど、水中で言葉が紡げるはずもなく。俺の口からは、空気しか出んかった。そしたら、“あの人”が。
「ここは海だから、人は溺れて死んでしまうよ」
そう言った。どんな声だったかは、思い出せん。
俺は、なんて返せばよかったんやろ?
◆◆◆
「一青梓さんやろなぁ」
「一青、あずささん」
「この人やろ?」
司がスマホを弄り、結婚式の時の写真を出す。写る人並みの中に、“あの人”がいた。
一青梓さん。彼は、機関の観測班の人。そうかぁ、男の人なんやぁ。
「渚が片想いなぁ。なんや、おもろいな」
「おもろないわ!」
「いっつも、姉ちゃんらに寄って来られて、断る理由もあらへんからて付き合うて、あまりにも恋人甲斐がないからフラれて。っちゅう一連の流れのエキスパートやん」
「ぐうの音も出ぇへん!」
「ひゃははっ! 渚、頑張りやぁ~」
「他人事やな、自分」
「応援しとるで、“渚兄ちゃん”」
「……からかうなや」
人の恋路を。この女、ちょっと可愛いくて豪快で運がええからってナメよって。
そやった。
「司ぁ、これ、やるわ。快気祝いや」
「ありがとやで」
中身は、青色のシーグラスのピアス。
「はぁ~。分っかりやすいやっちゃなぁ! 梓さんに渡しや!」
「んなこと出来るかいな!」
「は~ん。じゃあ司ちゃんが、これ着けて、梓さんの前通ったろ。ほんで、なんかいい感じに渚の紹介をしてやな」
「アホ。いらん気ぃ回すなや」
「せやけど」
「ええねん、ええねん。俺の美の神であれば、そんで」
「殊勝やなぁ」
そうは言うたけど。
新年会から帰った後、俺は、「一青梓」でネット検索しとった。アホ。
結果。なんも出て来ぃひん。
「は?」
モデルかなんかしとるんとちゃうの? じゃなくても、SNSかなんかあらへんの?
「ないやん…………」
どないやねん。
世界は、一青梓さんのことを見付けてへんのか? ほんまに?
せやったら、ほんま、この世界の人間アホちゃうか?
ほんなら、俺が。俺が、アクセサリーのモデル頼んだろかなぁ?
美しい人が表舞台におらんのは、世界の損失やないの? なぁ、お狐様よ。