創作企画「冥冥の澱」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スタート位置が、他人と違っていた。
その男、来目聖爾は、産まれながらに特別だった。
母親は、ある旧家の男に“お手付き”された、元女中。
父親のことは、よく知らない。ただ、“狐ヶ崎”という家の者だということくらいしか。
母親のことは、好きだった。美しくて、優しくて、愚かだったから。
聖爾の周りで、やけに人死にや行方不明事件が多いことには気付いていたのに、母親は聖爾を疑わなかった。
疑わなかったのか、疑えなかったのか。それは、聖爾にはどうでもいい。とにかく、必要だったものを母は与えてくれた。衣食住と、母と息子であるという役柄。それで充分。
聖爾が、16歳の時、母親が邪魔になった。裏社会で生きることを決めた聖爾には、自分の正体を知っている者が邪魔になった。
「母さん、もういらないから、さよなら」
「聖爾?」
「喰らえ、天狐」
右手を、母に翳す。
『コン』
狐の鳴き声が響き、母親を一呑みした。そうして、彼は母親を消した。
彼を拾ったのは、反社会的組織。その組織のお抱えの殺し屋として、聖爾は生きていく。
初めて人を殺したのは、5歳の頃。同じ幼稚園の園児。聖爾の好きな玩具を独占していたから、死んでもらった。
邪魔者には、みんな死んでもらった。それが、聖爾の日常。
組織にとって聖爾は、若いが、一流の殺し屋兼掃除屋で。髪の一本も残さず消してくれるから、重宝した。
聖爾は、表向きはフリーターとして、裏では呪術師として過ごす。組織がくれる金は、家の押し入れに貯め続けた。とくに、趣味はない。棒付き飴を買い込み、それを毎日齧ることくらいしか、好きではない。
生活費と、あとは、移動手段としてのバイクの維持費。必要なのは、それくらい。
つまらない人生。だが、狐に人を喰わせる瞬間は、とても気持ちがいい。その一瞬を続けていたくて、生きている。
「聖爾くん」
「はい」
「これ、新しい標的の資料。いつも通り、よろしく頼むよ」
「はい」
標的。次に殺す人間の、容姿やパーソナルな情報や日々の行動パターンの書かれた紙。それを読み、狐火で燃やす。
「何日ですか?」
「2週間以内に」
「了解」
◆◆◆
「お前、どこのもんだ?」
「どうでもいいっしょ。テメェはこれから死ぬんだからよ」
右手を突き出し、袋小路に追いつめた男に狙いを定める。
「ま、待て! 見逃してくれたら、倍額払う!」
「そういうの、いいんで。天狐、喰らえ」
無慈悲に、聖爾は命令する。
『コン』
狐の鳴き声。次の瞬間、男は跡形もなく消えた。
上着のライダースのポケットから、棒付き飴を取り出し、ばりばり噛む。
「……苺味」
組織に報告をし、仕事は完了。
次の仕事まで、テキトーにコンビニアルバイトをしよう。
来目聖爾は、日常を続ける。
その男、来目聖爾は、産まれながらに特別だった。
母親は、ある旧家の男に“お手付き”された、元女中。
父親のことは、よく知らない。ただ、“狐ヶ崎”という家の者だということくらいしか。
母親のことは、好きだった。美しくて、優しくて、愚かだったから。
聖爾の周りで、やけに人死にや行方不明事件が多いことには気付いていたのに、母親は聖爾を疑わなかった。
疑わなかったのか、疑えなかったのか。それは、聖爾にはどうでもいい。とにかく、必要だったものを母は与えてくれた。衣食住と、母と息子であるという役柄。それで充分。
聖爾が、16歳の時、母親が邪魔になった。裏社会で生きることを決めた聖爾には、自分の正体を知っている者が邪魔になった。
「母さん、もういらないから、さよなら」
「聖爾?」
「喰らえ、天狐」
右手を、母に翳す。
『コン』
狐の鳴き声が響き、母親を一呑みした。そうして、彼は母親を消した。
彼を拾ったのは、反社会的組織。その組織のお抱えの殺し屋として、聖爾は生きていく。
初めて人を殺したのは、5歳の頃。同じ幼稚園の園児。聖爾の好きな玩具を独占していたから、死んでもらった。
邪魔者には、みんな死んでもらった。それが、聖爾の日常。
組織にとって聖爾は、若いが、一流の殺し屋兼掃除屋で。髪の一本も残さず消してくれるから、重宝した。
聖爾は、表向きはフリーターとして、裏では呪術師として過ごす。組織がくれる金は、家の押し入れに貯め続けた。とくに、趣味はない。棒付き飴を買い込み、それを毎日齧ることくらいしか、好きではない。
生活費と、あとは、移動手段としてのバイクの維持費。必要なのは、それくらい。
つまらない人生。だが、狐に人を喰わせる瞬間は、とても気持ちがいい。その一瞬を続けていたくて、生きている。
「聖爾くん」
「はい」
「これ、新しい標的の資料。いつも通り、よろしく頼むよ」
「はい」
標的。次に殺す人間の、容姿やパーソナルな情報や日々の行動パターンの書かれた紙。それを読み、狐火で燃やす。
「何日ですか?」
「2週間以内に」
「了解」
◆◆◆
「お前、どこのもんだ?」
「どうでもいいっしょ。テメェはこれから死ぬんだからよ」
右手を突き出し、袋小路に追いつめた男に狙いを定める。
「ま、待て! 見逃してくれたら、倍額払う!」
「そういうの、いいんで。天狐、喰らえ」
無慈悲に、聖爾は命令する。
『コン』
狐の鳴き声。次の瞬間、男は跡形もなく消えた。
上着のライダースのポケットから、棒付き飴を取り出し、ばりばり噛む。
「……苺味」
組織に報告をし、仕事は完了。
次の仕事まで、テキトーにコンビニアルバイトをしよう。
来目聖爾は、日常を続ける。
