創作企画「冥冥の澱」
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「日下部さん、そっち行きました!」
「はい!」
女、日下部は太刀を引き抜き、異形に振り下ろす。
人を模した異形の首を飛ばした。
「やりました! 討伐完了です、日下部さん」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
戦闘態勢を解く。日下部は、巫女服から、私服の着物に戻った。
「いやぁ、日下部さんの太刀捌きは豪快ですねぇ」
「あら、そうかしら?」
「そうですよ。ああ、でも新年の剣舞は美しかったです。時に豪快に、時に繊細に。素晴らしい腕前です」
「まあ、ありがとうございます。でも、私なんて、まだまだです。お婆様は、一太刀で澱みを祓っていたそうですよ」
「それは、それは。日下部さんもいずれは、そうなるでしょう」
「精進します」
日下部は、16歳のうら若き乙女である。まだまだ、伸び代があると自負していた。
「では、解散ですね。機会があれば、また」
「ええ。また、よろしくお願いします」
妖と陰陽師は、別れる。
帰路、日下部は考えていた。自分の将来のこと。
私は、もっと見識を広げたいわ。
それは、望み。自己を確立するための旅路。
高校を卒業したら、それを始めよう。
きっと、世界は広くて。果てがない。
自宅へ着くと、丁度、来客が来ていた。
黒色の高級車から降りてきた男は、人好きのする笑顔で、女に寄って来る。
「こんにちは、かな? こんばんは? 夕暮れ時の挨拶には困るね、日下部さん」
「こんにちは、狐ヶ崎さん。私は太陽が出ている内は、こんにちはを使います」
「なるほど。俺もそうします」
「日下部家に何かご用事が?」
「いえ、あなたに会いに来ました」
「私?」
きょとんとした日下部に、狐ヶ崎は笑った。
「あはは。突然に感じましたか? 俺にとっては、そんなことないのですが。俺は、初めて会った時から、あなたのことが好きです」
「わ……私、殿方とお付き合いしたことがありませんわ……」
顔をほんのり赤く染め、日下部は告げる。
「俺も、お付き合いをしたことはありません。どうか、俺と恋仲になってくださいませんか?」
「少し、お時間いただきます。私、あなたのことが、その……」
「別に、俺のことは好きでなくても構いません。今は、ね。付き合う内に見えてくるものもあるでしょう。そのことを加味してお考えくださると、嬉しいです」
「はい。分かりました」
「では、失礼します。お返事、お待ちしてますね、花さん」
「は、はい。照雄さん……」
狐ヶ崎照雄は、車に乗って去って行った。
日下部花は、それを、ずっと見ていた。
どうしましょう。どうしましょう。男の人に告白されてしまったわ。
花は、その後、上の空で生活を送り、布団の中へ入った。
狐ヶ崎照雄さん。ひとつ歳上の人。いつも、優しく笑っている人。
あなた、私が好きなの? 何故? いえ、きっと、“何故”なんて、野暮なのでしょうね。
そうね。あなたが私の夢を笑わないのなら、私はきっと、あなたを愛するでしょう。
「はい!」
女、日下部は太刀を引き抜き、異形に振り下ろす。
人を模した異形の首を飛ばした。
「やりました! 討伐完了です、日下部さん」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
戦闘態勢を解く。日下部は、巫女服から、私服の着物に戻った。
「いやぁ、日下部さんの太刀捌きは豪快ですねぇ」
「あら、そうかしら?」
「そうですよ。ああ、でも新年の剣舞は美しかったです。時に豪快に、時に繊細に。素晴らしい腕前です」
「まあ、ありがとうございます。でも、私なんて、まだまだです。お婆様は、一太刀で澱みを祓っていたそうですよ」
「それは、それは。日下部さんもいずれは、そうなるでしょう」
「精進します」
日下部は、16歳のうら若き乙女である。まだまだ、伸び代があると自負していた。
「では、解散ですね。機会があれば、また」
「ええ。また、よろしくお願いします」
妖と陰陽師は、別れる。
帰路、日下部は考えていた。自分の将来のこと。
私は、もっと見識を広げたいわ。
それは、望み。自己を確立するための旅路。
高校を卒業したら、それを始めよう。
きっと、世界は広くて。果てがない。
自宅へ着くと、丁度、来客が来ていた。
黒色の高級車から降りてきた男は、人好きのする笑顔で、女に寄って来る。
「こんにちは、かな? こんばんは? 夕暮れ時の挨拶には困るね、日下部さん」
「こんにちは、狐ヶ崎さん。私は太陽が出ている内は、こんにちはを使います」
「なるほど。俺もそうします」
「日下部家に何かご用事が?」
「いえ、あなたに会いに来ました」
「私?」
きょとんとした日下部に、狐ヶ崎は笑った。
「あはは。突然に感じましたか? 俺にとっては、そんなことないのですが。俺は、初めて会った時から、あなたのことが好きです」
「わ……私、殿方とお付き合いしたことがありませんわ……」
顔をほんのり赤く染め、日下部は告げる。
「俺も、お付き合いをしたことはありません。どうか、俺と恋仲になってくださいませんか?」
「少し、お時間いただきます。私、あなたのことが、その……」
「別に、俺のことは好きでなくても構いません。今は、ね。付き合う内に見えてくるものもあるでしょう。そのことを加味してお考えくださると、嬉しいです」
「はい。分かりました」
「では、失礼します。お返事、お待ちしてますね、花さん」
「は、はい。照雄さん……」
狐ヶ崎照雄は、車に乗って去って行った。
日下部花は、それを、ずっと見ていた。
どうしましょう。どうしましょう。男の人に告白されてしまったわ。
花は、その後、上の空で生活を送り、布団の中へ入った。
狐ヶ崎照雄さん。ひとつ歳上の人。いつも、優しく笑っている人。
あなた、私が好きなの? 何故? いえ、きっと、“何故”なんて、野暮なのでしょうね。
そうね。あなたが私の夢を笑わないのなら、私はきっと、あなたを愛するでしょう。