創作企画「冥冥の澱」
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アカンなぁ。これ、もう松やろ。
今回の討伐、驚異レベルは竹のはずやった。せやけど、澱みは急成長し、廃墟の地形を歪めよった。
俺と、今回の相方の六助ちゃんは、分断された。機関に連絡もつかん。完全に孤立や。
出口も分からんようなった。
「はぁ~」
どないしよ。とりあえず、殴る準備しとこか。
俺は、呪符を右手に巻き付けた。
壁に呪符を張り付けながら、歩く。
出て来いや。本体。
キィキィ、音がした。背後から。
黒い影が、俺の両足を掴み、宙吊りにする。
「かかった!」
無数の手の形の影。それが、俺の四肢を掴む。
コイツ、引き千切る気やな。俺を。
死んでやらん。こんなとこでは、死なん。
「掛けまくも畏き稲成空狐よ! 狐ケ崎の野原の柳の下に禊ぎ祓え給いし時に生り坐せる神狐等! 諸々の禍事・罪・穢有らんをば祓え給い清め給えと白すこと聞こし召せと恐み恐み白す!」
影が祓われ、右腕が自由になった。
「おらぁっ!」
俺の左腕をへし折った影を殴る。
「キィっ!」
「放せ! ドアホ! 網代司は、こんなとこでは死なへん! 畳の上で大往生するんや!」
殴る。殴り続ける。
「キィー!」
「さっきから! 耳障りやねん!」
殴る。殴る。左腕が自由になった。折れとるから、動かせへんけど。
「ぐッ……!」
右足が折られた。
「この! よくも!」
もう一度。次は左足のやつを狙う。
「キィイー!」
「クソ!」
体が、ぶん投げられる。
「が、は」
壁に叩きつけられた。息が、止まる。
続けて、骨折の痛みによる、ショック性の呼吸困難。
「は…………」
眼鏡、吹き飛んでもうた。見えへん。何も。息が、出来ん。
「司さん!?」
声。六助ちゃんか?
「呪符、壁に……」
最後の呼吸を、絞り出す。
「分かった! 待ってて!」
“司”
ああ。アンタか。俺は、帰るで。アンタと俺の家に。
「やすたか……さん…………」
◆◆◆
目覚めると、機関の病室にいた。横には、悲痛な顔の靖及さんがおる。
眼鏡なんて、なくても見えた。
「……な、なんや、ブラックマンデーでも、来たんか…………?」
「司!」
「ひゃはは、司ちゃんやで。閻魔様、ぶん殴って帰って、来たわ……」
「喋らなくていい」
「大丈夫、やって。口先から、生まれててん……」
「司…………」
「手ぇ、握ったってや……」
「ああ」
俺の右手。包帯が巻かれとる。靖及さんは、そっと俺の手を取った。まあ、痛いもんは痛い。
「六助ちゃんは……?」
「なんともない。さっきまで、ここにいて、お前の心配をしていた」
「なら、よかったわ……」
「司……」
「なんや?」
「よかった。帰って来てくれて……」
「……当たり前やん」
右手に頬をすり寄せられたから、指先で、少しつついた。
今は、これが精一杯や。治ったら、めちゃくちゃにしたろ。
今回の討伐、驚異レベルは竹のはずやった。せやけど、澱みは急成長し、廃墟の地形を歪めよった。
俺と、今回の相方の六助ちゃんは、分断された。機関に連絡もつかん。完全に孤立や。
出口も分からんようなった。
「はぁ~」
どないしよ。とりあえず、殴る準備しとこか。
俺は、呪符を右手に巻き付けた。
壁に呪符を張り付けながら、歩く。
出て来いや。本体。
キィキィ、音がした。背後から。
黒い影が、俺の両足を掴み、宙吊りにする。
「かかった!」
無数の手の形の影。それが、俺の四肢を掴む。
コイツ、引き千切る気やな。俺を。
死んでやらん。こんなとこでは、死なん。
「掛けまくも畏き稲成空狐よ! 狐ケ崎の野原の柳の下に禊ぎ祓え給いし時に生り坐せる神狐等! 諸々の禍事・罪・穢有らんをば祓え給い清め給えと白すこと聞こし召せと恐み恐み白す!」
影が祓われ、右腕が自由になった。
「おらぁっ!」
俺の左腕をへし折った影を殴る。
「キィっ!」
「放せ! ドアホ! 網代司は、こんなとこでは死なへん! 畳の上で大往生するんや!」
殴る。殴り続ける。
「キィー!」
「さっきから! 耳障りやねん!」
殴る。殴る。左腕が自由になった。折れとるから、動かせへんけど。
「ぐッ……!」
右足が折られた。
「この! よくも!」
もう一度。次は左足のやつを狙う。
「キィイー!」
「クソ!」
体が、ぶん投げられる。
「が、は」
壁に叩きつけられた。息が、止まる。
続けて、骨折の痛みによる、ショック性の呼吸困難。
「は…………」
眼鏡、吹き飛んでもうた。見えへん。何も。息が、出来ん。
「司さん!?」
声。六助ちゃんか?
「呪符、壁に……」
最後の呼吸を、絞り出す。
「分かった! 待ってて!」
“司”
ああ。アンタか。俺は、帰るで。アンタと俺の家に。
「やすたか……さん…………」
◆◆◆
目覚めると、機関の病室にいた。横には、悲痛な顔の靖及さんがおる。
眼鏡なんて、なくても見えた。
「……な、なんや、ブラックマンデーでも、来たんか…………?」
「司!」
「ひゃはは、司ちゃんやで。閻魔様、ぶん殴って帰って、来たわ……」
「喋らなくていい」
「大丈夫、やって。口先から、生まれててん……」
「司…………」
「手ぇ、握ったってや……」
「ああ」
俺の右手。包帯が巻かれとる。靖及さんは、そっと俺の手を取った。まあ、痛いもんは痛い。
「六助ちゃんは……?」
「なんともない。さっきまで、ここにいて、お前の心配をしていた」
「なら、よかったわ……」
「司……」
「なんや?」
「よかった。帰って来てくれて……」
「……当たり前やん」
右手に頬をすり寄せられたから、指先で、少しつついた。
今は、これが精一杯や。治ったら、めちゃくちゃにしたろ。