創作企画「冥冥の澱」
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恋って、なんだか楽しそう。誰かを好きになるのって楽しそう。
そう思ってた無邪気な自分は、過去のもの。
僕は、穣さんのことが好き。だけど、全然楽しくない。
苦しい。苦しいよ。
こんなの、やだ。やめたいよ。
「六助」
「なぁに?」
「今日、いいだろ?」
僕の肩に手を置きながら、クラスメイトは言う。
「今日は、ダメだよ…………」
「今日“も”だろうが。どうしたんだよ?」
「僕……もう、しない……」
「は?」
恋した罰を受けるから。
「僕、好きな人が出来たから」
「はぁ? お前、俺のこと好きって言ってただろうが」
ひとりを選んだのが、罪だった。
「その好きは、恋じゃないの」
「お前……お前のせいで、俺は…………!」
胸ぐらを掴まれる。
やっぱり、神様は僕を赦さない。
「全部、返せよ……」
「僕は————」
「お前のせいで、彼女のこと捨てることになったんだぞ?」
「そんなこと、頼んでないもん」
「ふざけんなッ!」
顔を狙った拳を、受け止める。
「……顔以外にして」
その日、僕は罰を受けました。
◆◆◆
とても道徳的で、高い倫理観を持ち、博愛的な人が、他人にどう見えるか知ってる? 冷たい人に見えるんだよ。
かわいそう。
僕は、道徳を学び、踏みにじった。倫理を学び、踏みにじった。博愛を学び、踏みにじった。
そして、恋を知って、踏み潰された。
別に、一発一発は、大したことないの。でもね、一発ずつを、100人にされたら、どうなるのかな?
答えは、これ。
「痛…………」
お風呂に入ったら、傷だらけの体に沁みた。痛いのは、嫌い。苦しいのも、辛いのも、寂しいのも、虚しいのも。
それでも、僕は、恋を捨てられなかった。だって、穣さんが、「好きでいてもいい」って言ってくれたから。
僕は、ぺしゃんこになった恋心に、息を吹き込んで、まあるくした。紙風船みたいに。
浴槽から出る。お風呂の鏡に映った僕は、汚い。顔だけは、綺麗。
ママとパパに、バレないようにしないと。
お風呂から出る。バスタオルで、体を拭く時も、痛みに耐えた。
「お風呂、出たよ」
「ろっくん、なんだか元気がないわね?」
ママが問う。
「ろっくん、パパとママに、何でも話してごらん?」
パパが言う。
「なんでもないよ。好きな人が出来ただけ」
「まあ! 美世くん、聞いた?!」
「聞いたよ、五郎ちゃん。ろっくんにも、そういう人が出来たんだね」
「ろっくん、相手はどんな人なの?」
「優しい人だよ」
「そうなのね……やだ、泣いちゃう……」
ママが、目に涙を浮かべた。パパは、ママの背中をさする。
「ろっくん、パパとママは、応援するからね」
「ありがとう。パパ、ママ」
でもね、悪魔が触れていいような人じゃないんだよ。
僕は、本当にお日様の子なのかなぁ?
違うなら、そうなりたい。でも、どうすればいいのか分からない。
僕のことを、「お日様の子」と言ってくれた、あなたのことさえ疑うような人間なのに。
そう思ってた無邪気な自分は、過去のもの。
僕は、穣さんのことが好き。だけど、全然楽しくない。
苦しい。苦しいよ。
こんなの、やだ。やめたいよ。
「六助」
「なぁに?」
「今日、いいだろ?」
僕の肩に手を置きながら、クラスメイトは言う。
「今日は、ダメだよ…………」
「今日“も”だろうが。どうしたんだよ?」
「僕……もう、しない……」
「は?」
恋した罰を受けるから。
「僕、好きな人が出来たから」
「はぁ? お前、俺のこと好きって言ってただろうが」
ひとりを選んだのが、罪だった。
「その好きは、恋じゃないの」
「お前……お前のせいで、俺は…………!」
胸ぐらを掴まれる。
やっぱり、神様は僕を赦さない。
「全部、返せよ……」
「僕は————」
「お前のせいで、彼女のこと捨てることになったんだぞ?」
「そんなこと、頼んでないもん」
「ふざけんなッ!」
顔を狙った拳を、受け止める。
「……顔以外にして」
その日、僕は罰を受けました。
◆◆◆
とても道徳的で、高い倫理観を持ち、博愛的な人が、他人にどう見えるか知ってる? 冷たい人に見えるんだよ。
かわいそう。
僕は、道徳を学び、踏みにじった。倫理を学び、踏みにじった。博愛を学び、踏みにじった。
そして、恋を知って、踏み潰された。
別に、一発一発は、大したことないの。でもね、一発ずつを、100人にされたら、どうなるのかな?
答えは、これ。
「痛…………」
お風呂に入ったら、傷だらけの体に沁みた。痛いのは、嫌い。苦しいのも、辛いのも、寂しいのも、虚しいのも。
それでも、僕は、恋を捨てられなかった。だって、穣さんが、「好きでいてもいい」って言ってくれたから。
僕は、ぺしゃんこになった恋心に、息を吹き込んで、まあるくした。紙風船みたいに。
浴槽から出る。お風呂の鏡に映った僕は、汚い。顔だけは、綺麗。
ママとパパに、バレないようにしないと。
お風呂から出る。バスタオルで、体を拭く時も、痛みに耐えた。
「お風呂、出たよ」
「ろっくん、なんだか元気がないわね?」
ママが問う。
「ろっくん、パパとママに、何でも話してごらん?」
パパが言う。
「なんでもないよ。好きな人が出来ただけ」
「まあ! 美世くん、聞いた?!」
「聞いたよ、五郎ちゃん。ろっくんにも、そういう人が出来たんだね」
「ろっくん、相手はどんな人なの?」
「優しい人だよ」
「そうなのね……やだ、泣いちゃう……」
ママが、目に涙を浮かべた。パパは、ママの背中をさする。
「ろっくん、パパとママは、応援するからね」
「ありがとう。パパ、ママ」
でもね、悪魔が触れていいような人じゃないんだよ。
僕は、本当にお日様の子なのかなぁ?
違うなら、そうなりたい。でも、どうすればいいのか分からない。
僕のことを、「お日様の子」と言ってくれた、あなたのことさえ疑うような人間なのに。