創作企画「冥冥の澱」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
母のレシピノートを見ながら、料理をしている。おろしたてのエプロンを身に付けて。
「何か、分からないことがあれば、遠慮なくお訊きくださいね」と、料理上手な瀬川さんが言ってくれた。心強い。
今は、シチューを作っている。野菜の切り方は、少し不恰好だけど、味は問題ない。
鍋をかき回す。焦げてないかな?
「宵様、大丈夫ですか?」
「はい。もう少しで、出来上がります」
「あら。クリームシチューですか。いいですね」
「母が、好きなんです。レシピノートに、“私の大好物!”と書いてありました」
「まあ、そうなのですね。花様に作って差し上げたいわ」
家では、ほとんど和食しか作られてこなかった。それが、父の好みだから。
しまった。失念していた。
「瀬川さん、家にスープジャーなんてあります?」
「私物でよければ、お貸しします」
「本当ですか? ありがとうございます」
「いえ、いいのですよ、これくらい。恋人様のためですか?」
「それもあります。彼が好きなんですよ、食べるのが。でも、それだけじゃなくて。私のためなんです。厨房に入るなと言われたから、入るんです」
「反抗期ですね」
ほほ、と瀬川さんが笑う。
「はい。そうです」
私も、笑顔を返した。
「出来ました! 瀬川さん、味見をお願いします」
「かしこまりました。いただきます」
お椀にシチューを少し入れて、瀬川さんに渡す。
「うん。美味しいです。宵様は、なんでも出来ますね」
「あはは。ありがとうございます」
「愛情たっぷりで、とても微笑ましいですわ」
「愛情、ですか?」
「ええ。お相手の好きなことに感心を持ち、歩み寄ることは、愛情なくして出来ることではありませんもの」
「そうですか。愛情…………」
私の、愛。こんなところにあったのか。
陽一さんのことを、私は愛せているのかな?
愛していたいな。ずっと、ずっと。
◆◆◆
陽一さんの元へ向かう。鞄の中には、クリームシチューを入れたスープジャー。
インターホンを鳴らす。
『はい』
「コンにちは。宵です」
『宵くん!』
嬉しそうな、あなたの声。その声が好き。
ぱたぱたと、足音がして、ドアが開く。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
お家に上がらせてもらう。戸締まりを終えた陽一さんを、後ろから抱き締めた。
「宵くん? どうしたの?」
「あなたといない時は、ずっとあなたに会いたいと思ってるんです」
「宵くん、顔見せて」
「嫌です」
「僕、宵くんの顔見たいなー」
「……意地悪ですね」
そっと、陽一さんから離れる。
「宵くん、大好きだよ」
正面から、抱き締められた。赤い顔、見られた。恥ずかしい。
「可愛いね、宵くん」
優しく、頭を撫でられた。実は、そういうこと、ほとんどしてもらったことないんです。
「好きです……」
「うん。ありがとう」
「あの」
「ん?」
「お腹、空いてますか?」
時刻は、午前11時30分くらい。
「空いてきたね。何食べる?」
「実はですね、クリームシチューを作って来ました」
「宵くんの手料理!?」
「はい。母のレシピノートを見ながら作りました」
「食べたい!」
リビングに通され、私は鞄から、スープジャーを取り出す。
陽一さんが、深皿とスプーンを持って来た。
「開けていい?」
「はい」
「わぁー。美味しそう!」
「どうぞ、召し上がってください」
「いただきます!」
「…………」
ドキドキする。大丈夫、きっと。
「美味しい! 鮭とカブが入ってるんだね!」
「はい……! 母の好物なんです」
「宵くん、ありがとう。凄く美味しいよ」
「よかったです」
ほっとした。本当に美味しそうに食べてくれるから。そんなところが、好き。
「陽一さん。あなたのこと、愛してます」
「僕も愛してるよ、宵くん」
幸せ。この幸せを、絶対に手放したくない。そのために、私は尽力しよう。
愛する人を、守るために。
「何か、分からないことがあれば、遠慮なくお訊きくださいね」と、料理上手な瀬川さんが言ってくれた。心強い。
今は、シチューを作っている。野菜の切り方は、少し不恰好だけど、味は問題ない。
鍋をかき回す。焦げてないかな?
「宵様、大丈夫ですか?」
「はい。もう少しで、出来上がります」
「あら。クリームシチューですか。いいですね」
「母が、好きなんです。レシピノートに、“私の大好物!”と書いてありました」
「まあ、そうなのですね。花様に作って差し上げたいわ」
家では、ほとんど和食しか作られてこなかった。それが、父の好みだから。
しまった。失念していた。
「瀬川さん、家にスープジャーなんてあります?」
「私物でよければ、お貸しします」
「本当ですか? ありがとうございます」
「いえ、いいのですよ、これくらい。恋人様のためですか?」
「それもあります。彼が好きなんですよ、食べるのが。でも、それだけじゃなくて。私のためなんです。厨房に入るなと言われたから、入るんです」
「反抗期ですね」
ほほ、と瀬川さんが笑う。
「はい。そうです」
私も、笑顔を返した。
「出来ました! 瀬川さん、味見をお願いします」
「かしこまりました。いただきます」
お椀にシチューを少し入れて、瀬川さんに渡す。
「うん。美味しいです。宵様は、なんでも出来ますね」
「あはは。ありがとうございます」
「愛情たっぷりで、とても微笑ましいですわ」
「愛情、ですか?」
「ええ。お相手の好きなことに感心を持ち、歩み寄ることは、愛情なくして出来ることではありませんもの」
「そうですか。愛情…………」
私の、愛。こんなところにあったのか。
陽一さんのことを、私は愛せているのかな?
愛していたいな。ずっと、ずっと。
◆◆◆
陽一さんの元へ向かう。鞄の中には、クリームシチューを入れたスープジャー。
インターホンを鳴らす。
『はい』
「コンにちは。宵です」
『宵くん!』
嬉しそうな、あなたの声。その声が好き。
ぱたぱたと、足音がして、ドアが開く。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
お家に上がらせてもらう。戸締まりを終えた陽一さんを、後ろから抱き締めた。
「宵くん? どうしたの?」
「あなたといない時は、ずっとあなたに会いたいと思ってるんです」
「宵くん、顔見せて」
「嫌です」
「僕、宵くんの顔見たいなー」
「……意地悪ですね」
そっと、陽一さんから離れる。
「宵くん、大好きだよ」
正面から、抱き締められた。赤い顔、見られた。恥ずかしい。
「可愛いね、宵くん」
優しく、頭を撫でられた。実は、そういうこと、ほとんどしてもらったことないんです。
「好きです……」
「うん。ありがとう」
「あの」
「ん?」
「お腹、空いてますか?」
時刻は、午前11時30分くらい。
「空いてきたね。何食べる?」
「実はですね、クリームシチューを作って来ました」
「宵くんの手料理!?」
「はい。母のレシピノートを見ながら作りました」
「食べたい!」
リビングに通され、私は鞄から、スープジャーを取り出す。
陽一さんが、深皿とスプーンを持って来た。
「開けていい?」
「はい」
「わぁー。美味しそう!」
「どうぞ、召し上がってください」
「いただきます!」
「…………」
ドキドキする。大丈夫、きっと。
「美味しい! 鮭とカブが入ってるんだね!」
「はい……! 母の好物なんです」
「宵くん、ありがとう。凄く美味しいよ」
「よかったです」
ほっとした。本当に美味しそうに食べてくれるから。そんなところが、好き。
「陽一さん。あなたのこと、愛してます」
「僕も愛してるよ、宵くん」
幸せ。この幸せを、絶対に手放したくない。そのために、私は尽力しよう。
愛する人を、守るために。