創作企画「冥冥の澱」
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陽キャは、怖い。すぐに距離を詰めようとしてくるから。
城井は、砂江砂絵にとって、そんな陽キャのひとりだった。
「事務班の城井です! 砂絵ちゃん! 城井だよ!」
「ぎゃっ!」
なんで、毎回ハグしてくるのだろう?
珍しく、自分より身長が低い女の子。自分より若くて、可愛くて、明るい女の子。
砂江には、眩し過ぎる。
「砂絵ちゃん宛の書類だよ!」
「は、はい。ありがとうございます……」
「あ、休憩時間だね。砂絵ちゃん、城井とお話ししよう?」
「はぁ、まあ、いいですけど……」
出会った当初は、こんなに普通には話せなかった。砂江が、一方的に怯えていたから。
ふたりで、自販機前の椅子へ移動する。
対戦よろしくお願いします。
砂江対陽キャの闘いが、今、始まる。
「砂絵ちゃん、ハニーのお話して!」
「嫌ですぅ」
「どうして?」
「ワタシの愛する人のことは、原則秘密なのです。友人とかでもない限り、教えません」
「城井は、友達じゃないの?」
「ひぃー! そんな目で見ないでください!」
「どんな目?」
「可愛い仔犬みたいな……」
「城井、可愛い? 砂絵ちゃん、ありがとう!」
「あああ、もう…………」
助けてください。ハニー、陽キャが眩しいよ。
砂江は、結婚指輪を見ながら、助けを求めた。
「じゃあ、別のお話でもいいよ! 砂絵ちゃんのお話聞かせて?」
「ワタシには、愛する人と……トビズムカデと、オオゲジと、アシダカグモと、ヤマトアカヤスデと、ポメラニアンの仔犬と、キンクマハムスターがいます……」
「砂絵ちゃん、家族がいっぱい!」
「はい。みんな、大切な家族です」
「みんなの名前は?」
「トビズムカデのアカギくん、オオゲジのテングくん、アシダカグモのハントくん、ヤマトアカヤスデのヤスホちゃん、仔ポメのポンくん、キンクマハムのキンちゃんです」
「写真ある?」
「はい。こちらのフォルダに」
スマホで画像を開き、城井に見せる。
「白くて、ふわふわなのが、ポンくん?」
「そうです」
「可愛いね!」
「ありがとうございます」
「みんな、可愛いね!」
「はい。可愛いです」
城井の笑顔が、砂江には眩しい。
いつも明るく、朗らかなアナタが、ワタシは、羨ましいのです。
対戦ありがとうございました。
◆◆◆
「キミに、オレが分かるというの?」
砂江は、大学生の頃に「好きです」と告白された。その返事が、これ。
「アナタ、ワタシのこと、なんにも知らないじゃない。好きとか、おかしいよ」
冷たい声。暗い性格。真っ黒な、心。
「キミはさ、オレと違って、いつも朗らかで穏やかでさ。オレなんか、好きになることないんだよ。ワタシ、アナタのこと苦手なの」
嫌いになれよ。憎めよ。こんな女でも男でもない、よく分からない奴。
だけど、アナタは。
「教えてください。あなたのこと。僕は、あなたのことが知りたいです」
「……馬鹿。知られたくないよ。だって、本当は……」
嫌われたくない。嫌われたくない。
「本当は、キミのこと好きだよ。でも、オレは、普通じゃないらしいし……これ以上関わると、キミも不幸になるよ……」
精神疾患持ち。性的少数者。生きるのが、辛い。
「砂江先輩がいるなら、僕は不幸にはなりません」
「……本当に馬鹿だね、キミは」
過去のワタシへ。アナタは、その人と結婚します。あまり意地悪しないように。
城井は、砂江砂絵にとって、そんな陽キャのひとりだった。
「事務班の城井です! 砂絵ちゃん! 城井だよ!」
「ぎゃっ!」
なんで、毎回ハグしてくるのだろう?
珍しく、自分より身長が低い女の子。自分より若くて、可愛くて、明るい女の子。
砂江には、眩し過ぎる。
「砂絵ちゃん宛の書類だよ!」
「は、はい。ありがとうございます……」
「あ、休憩時間だね。砂絵ちゃん、城井とお話ししよう?」
「はぁ、まあ、いいですけど……」
出会った当初は、こんなに普通には話せなかった。砂江が、一方的に怯えていたから。
ふたりで、自販機前の椅子へ移動する。
対戦よろしくお願いします。
砂江対陽キャの闘いが、今、始まる。
「砂絵ちゃん、ハニーのお話して!」
「嫌ですぅ」
「どうして?」
「ワタシの愛する人のことは、原則秘密なのです。友人とかでもない限り、教えません」
「城井は、友達じゃないの?」
「ひぃー! そんな目で見ないでください!」
「どんな目?」
「可愛い仔犬みたいな……」
「城井、可愛い? 砂絵ちゃん、ありがとう!」
「あああ、もう…………」
助けてください。ハニー、陽キャが眩しいよ。
砂江は、結婚指輪を見ながら、助けを求めた。
「じゃあ、別のお話でもいいよ! 砂絵ちゃんのお話聞かせて?」
「ワタシには、愛する人と……トビズムカデと、オオゲジと、アシダカグモと、ヤマトアカヤスデと、ポメラニアンの仔犬と、キンクマハムスターがいます……」
「砂絵ちゃん、家族がいっぱい!」
「はい。みんな、大切な家族です」
「みんなの名前は?」
「トビズムカデのアカギくん、オオゲジのテングくん、アシダカグモのハントくん、ヤマトアカヤスデのヤスホちゃん、仔ポメのポンくん、キンクマハムのキンちゃんです」
「写真ある?」
「はい。こちらのフォルダに」
スマホで画像を開き、城井に見せる。
「白くて、ふわふわなのが、ポンくん?」
「そうです」
「可愛いね!」
「ありがとうございます」
「みんな、可愛いね!」
「はい。可愛いです」
城井の笑顔が、砂江には眩しい。
いつも明るく、朗らかなアナタが、ワタシは、羨ましいのです。
対戦ありがとうございました。
◆◆◆
「キミに、オレが分かるというの?」
砂江は、大学生の頃に「好きです」と告白された。その返事が、これ。
「アナタ、ワタシのこと、なんにも知らないじゃない。好きとか、おかしいよ」
冷たい声。暗い性格。真っ黒な、心。
「キミはさ、オレと違って、いつも朗らかで穏やかでさ。オレなんか、好きになることないんだよ。ワタシ、アナタのこと苦手なの」
嫌いになれよ。憎めよ。こんな女でも男でもない、よく分からない奴。
だけど、アナタは。
「教えてください。あなたのこと。僕は、あなたのことが知りたいです」
「……馬鹿。知られたくないよ。だって、本当は……」
嫌われたくない。嫌われたくない。
「本当は、キミのこと好きだよ。でも、オレは、普通じゃないらしいし……これ以上関わると、キミも不幸になるよ……」
精神疾患持ち。性的少数者。生きるのが、辛い。
「砂江先輩がいるなら、僕は不幸にはなりません」
「……本当に馬鹿だね、キミは」
過去のワタシへ。アナタは、その人と結婚します。あまり意地悪しないように。