創作企画「冥冥の澱」
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「宵くん、最近きらきらしてますねぇ」と、紫水さんに言われたのが、少し前の話。
「私、恋をしてるんです」と答えた。
紫水さんは、恋をしたことがないらしい。
私も、長いこと恋を知らなかった。ジェンダーも性指向も、クエスチョニング。
今は、私は男で、男性を好きになることもある、ということが分かった。
紫水さんは、一体どういう恋をするのだろう? あるいは、恋愛をしない人なのかも?
その紫水さんに、恋をしたと告げられたのが、今日。大学構内のベンチに座り、いつものように話してる時に、頬を赤く染めながら言われた。
「相手は男性で、9つ歳上の方です」
「え、そんなところまで同じなんですか」
「偶然って続くのですね……」
共通項が増えたことは、なんだか嬉しく、面白い。
「それで、あの、宵くんに訊きたいことがありまして」
「なんでしょう?」
「その、恋人さんと、え、えっちなことしましたか?」
「…………え?」
「わぁー! すいません、すいません!」
真っ赤になる紫水さん。
「いや、別にいいですよ。しましたよ」
「すごい……宵くんは、凄いですねぇ……」
「まあ、私は、ご存知でしょうが、なんでもしてみたい人間なんで」
「僕は、恋とか愛とか、よく分からなくて」
「私も、愛のことは、まだ分かりません。ですが、恋は、少し分かります。自分が持って生まれてきた宝石を、より一層輝かせてくれる存在と出会うことだと思います」
「宝石……僕の宝石を、輝かせてくれる人……」
胸の前で、きゅっと手を握り締める紫水さん。想い人のことを考えているのだろう。
「紫水さんの宝石は、きっと美しい紫色なんでしょうね。紫水晶のように」
「宵くんの宝石は、どんな色ですか?」
「そうですね、インクルージョンと呼ばれる不純物が入った、夕焼け色の宝石でしょうか?」
私の宝石は、きっとサンストーンのよう。ヘリオライトとも呼ばれる、太陽の石。
「話が戻るのですが、“そういうこと”をする時ってどんな時なのでしょう? どんな気持ちなのでしょう?」
「うーん。正直、独占欲とか庇護欲とか、色々な感情がない交ぜになっていますね。相手との境界線をもどかしく思う気持ちもありますし」
「境界線、ですか?」
「はい。私と恋人を別つ、皮膚のことです。それを無くすことは出来ませんが、より深く繋がろうとするという意味合いもあるかと」
「なるほど。なんだか、宵くんのことを凄く大人に感じますね」
「いえ、私なんて、まだまだですよ」
「お話、ありがとうございました」
紫水さんは、一礼した。
「また、なんでも訊いてください。私に言えることは、そんなにありませんが」
「いいえ、宵くんのお話、とても参考になりました」
「それなら、よかったです」
恋するふたりは、微笑み合う。
あなたの恋が、良いものでありますように。きっと、紫水さんの初恋は、美しいものになるはず。
私は、そっと、彼の恋を応援した。
「私、恋をしてるんです」と答えた。
紫水さんは、恋をしたことがないらしい。
私も、長いこと恋を知らなかった。ジェンダーも性指向も、クエスチョニング。
今は、私は男で、男性を好きになることもある、ということが分かった。
紫水さんは、一体どういう恋をするのだろう? あるいは、恋愛をしない人なのかも?
その紫水さんに、恋をしたと告げられたのが、今日。大学構内のベンチに座り、いつものように話してる時に、頬を赤く染めながら言われた。
「相手は男性で、9つ歳上の方です」
「え、そんなところまで同じなんですか」
「偶然って続くのですね……」
共通項が増えたことは、なんだか嬉しく、面白い。
「それで、あの、宵くんに訊きたいことがありまして」
「なんでしょう?」
「その、恋人さんと、え、えっちなことしましたか?」
「…………え?」
「わぁー! すいません、すいません!」
真っ赤になる紫水さん。
「いや、別にいいですよ。しましたよ」
「すごい……宵くんは、凄いですねぇ……」
「まあ、私は、ご存知でしょうが、なんでもしてみたい人間なんで」
「僕は、恋とか愛とか、よく分からなくて」
「私も、愛のことは、まだ分かりません。ですが、恋は、少し分かります。自分が持って生まれてきた宝石を、より一層輝かせてくれる存在と出会うことだと思います」
「宝石……僕の宝石を、輝かせてくれる人……」
胸の前で、きゅっと手を握り締める紫水さん。想い人のことを考えているのだろう。
「紫水さんの宝石は、きっと美しい紫色なんでしょうね。紫水晶のように」
「宵くんの宝石は、どんな色ですか?」
「そうですね、インクルージョンと呼ばれる不純物が入った、夕焼け色の宝石でしょうか?」
私の宝石は、きっとサンストーンのよう。ヘリオライトとも呼ばれる、太陽の石。
「話が戻るのですが、“そういうこと”をする時ってどんな時なのでしょう? どんな気持ちなのでしょう?」
「うーん。正直、独占欲とか庇護欲とか、色々な感情がない交ぜになっていますね。相手との境界線をもどかしく思う気持ちもありますし」
「境界線、ですか?」
「はい。私と恋人を別つ、皮膚のことです。それを無くすことは出来ませんが、より深く繋がろうとするという意味合いもあるかと」
「なるほど。なんだか、宵くんのことを凄く大人に感じますね」
「いえ、私なんて、まだまだですよ」
「お話、ありがとうございました」
紫水さんは、一礼した。
「また、なんでも訊いてください。私に言えることは、そんなにありませんが」
「いいえ、宵くんのお話、とても参考になりました」
「それなら、よかったです」
恋するふたりは、微笑み合う。
あなたの恋が、良いものでありますように。きっと、紫水さんの初恋は、美しいものになるはず。
私は、そっと、彼の恋を応援した。