創作企画「冥冥の澱」
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不思議なことがある。祖先を辿ると、異性愛者ばかりなこと。それともやっぱり、“家”のために、そうさせられていたのか?
狐ヶ崎宵は、疑問に思う。
そうまでして、“こんな家”を守るの?
鍵野は、狐ヶ崎のやり方がゆるせなくて、分派した。その鍵野にすら、「狐ヶ崎憎し」という“習い”があって。脈々と受け継がれる呪いみたいなものがあって。
でも、あなたは、そんな縛りを物ともせず、自由に生きている。
「司さんは、どうしてそんなに強いんですか?」
「あん? なんや、自分。藪から棒に」
司は、怪訝な顔を向けた。
「私は、“狐ヶ崎”を壊したいんですよ。だから、何かの参考になるかと」
「ならんと思うで。俺は、“鍵野”やないけど、“鍵野”を壊してへんからな」
「ですが…………」
「ま、酒一杯くれるっちゅうなら、昔話くらい聞かせたるわ」
「紗絡さん、司さんに、オススメのカクテルをお願いします」
「ハーイ」
宵の注文に、オーナーの紗絡八卦は、愛想よく返事をする。
そして、網代司が、まだ鍵野司だった頃の話を始めた。
◆◆◆
祖父母の言う、狐ヶ崎家の悪口を聞きながら、少女は思う。
そんなん、ウチに関係あらへんがな。だいたい、狐ヶ崎と別れたのは、何十年も昔の話やろ。
「あんな家、早よ、潰れたらええねん」
「ほんまになぁ」
「ほんまに、そうやの?」
「なんやて? 司」
「悪いもんは、永遠に悪いもんなんか? その狐ヶ崎やって変わるかもしれへんやろ?」
祖父に、果敢に言い返した。
「変わらんわ。そういう“構造”やねん。仮に、ええ子が産まれても、すり潰されて終わりや。狐ヶ崎の長男以外、みぃんな、闇ん中や」
「せやけど……」
「司。お前は、鍵野の女として、立派になり」
祖母が諭す。
それが、少女の癇に障った。
「ウチは、“鍵野”の“女”にしかなれんの?! そんなんおかしいんちゃう?!」
「司ぁ! 何を言うとんのや!」
「ウチは……いや、俺は、そんなん嫌や……!」
「司、そんな、男ん子みたいなこと言うて……」
祖母が嘆く。
知ったことではない。
「俺は、自由にやらせてもらうで! “鍵野”でいるかも、“女”でいるかも、そんなん分からん! 俺は、なんにでもなれるんや!」
司は、吠えた。生まれながらに、自分は自由なのだと。
かつて遊んだ、人生ゲームを思い出す。
人生なんて、賽の目次第やないの? どうなるか、決まっとるもんやの? それは、ちゃうやろ。
「俺は、ただの鍵野司や! 家も、業も、背負わされたないわ! 運命は全部、俺の手で掴み取ったる!」
例え、それが不運だったとしても、それは自分で掴んだもの。それは、自分の力で乗り越えていくもの。
「よう見ときや! 俺が、天下取ったるからな!」
「お前、何言うてんねん…………」
祖父に、呆れられた。
知らんがな。天下取る言うたら、取るんや。
この世は、俺の晴れ舞台やねん。
◆◆◆
「ほんで、俺は、靖及さんと天下取ったっちゅう話や」
「最終的に、惚気になってるじゃないですか」
「ひゃっはっはっはっ!」
「しかも、本当に参考にならない。あなたは、元々強い人なのでは?」
「そうなんちゃう? 知らんけど」
「でも、いい話でした。やっぱり、私は、狐ヶ崎を壊します」
「ええんちゃう? 知らんけど」
宵と司は、家への反骨心を持つ者同士。今夜は、少し長めに酒を酌み交わした。
狐ヶ崎宵は、疑問に思う。
そうまでして、“こんな家”を守るの?
鍵野は、狐ヶ崎のやり方がゆるせなくて、分派した。その鍵野にすら、「狐ヶ崎憎し」という“習い”があって。脈々と受け継がれる呪いみたいなものがあって。
でも、あなたは、そんな縛りを物ともせず、自由に生きている。
「司さんは、どうしてそんなに強いんですか?」
「あん? なんや、自分。藪から棒に」
司は、怪訝な顔を向けた。
「私は、“狐ヶ崎”を壊したいんですよ。だから、何かの参考になるかと」
「ならんと思うで。俺は、“鍵野”やないけど、“鍵野”を壊してへんからな」
「ですが…………」
「ま、酒一杯くれるっちゅうなら、昔話くらい聞かせたるわ」
「紗絡さん、司さんに、オススメのカクテルをお願いします」
「ハーイ」
宵の注文に、オーナーの紗絡八卦は、愛想よく返事をする。
そして、網代司が、まだ鍵野司だった頃の話を始めた。
◆◆◆
祖父母の言う、狐ヶ崎家の悪口を聞きながら、少女は思う。
そんなん、ウチに関係あらへんがな。だいたい、狐ヶ崎と別れたのは、何十年も昔の話やろ。
「あんな家、早よ、潰れたらええねん」
「ほんまになぁ」
「ほんまに、そうやの?」
「なんやて? 司」
「悪いもんは、永遠に悪いもんなんか? その狐ヶ崎やって変わるかもしれへんやろ?」
祖父に、果敢に言い返した。
「変わらんわ。そういう“構造”やねん。仮に、ええ子が産まれても、すり潰されて終わりや。狐ヶ崎の長男以外、みぃんな、闇ん中や」
「せやけど……」
「司。お前は、鍵野の女として、立派になり」
祖母が諭す。
それが、少女の癇に障った。
「ウチは、“鍵野”の“女”にしかなれんの?! そんなんおかしいんちゃう?!」
「司ぁ! 何を言うとんのや!」
「ウチは……いや、俺は、そんなん嫌や……!」
「司、そんな、男ん子みたいなこと言うて……」
祖母が嘆く。
知ったことではない。
「俺は、自由にやらせてもらうで! “鍵野”でいるかも、“女”でいるかも、そんなん分からん! 俺は、なんにでもなれるんや!」
司は、吠えた。生まれながらに、自分は自由なのだと。
かつて遊んだ、人生ゲームを思い出す。
人生なんて、賽の目次第やないの? どうなるか、決まっとるもんやの? それは、ちゃうやろ。
「俺は、ただの鍵野司や! 家も、業も、背負わされたないわ! 運命は全部、俺の手で掴み取ったる!」
例え、それが不運だったとしても、それは自分で掴んだもの。それは、自分の力で乗り越えていくもの。
「よう見ときや! 俺が、天下取ったるからな!」
「お前、何言うてんねん…………」
祖父に、呆れられた。
知らんがな。天下取る言うたら、取るんや。
この世は、俺の晴れ舞台やねん。
◆◆◆
「ほんで、俺は、靖及さんと天下取ったっちゅう話や」
「最終的に、惚気になってるじゃないですか」
「ひゃっはっはっはっ!」
「しかも、本当に参考にならない。あなたは、元々強い人なのでは?」
「そうなんちゃう? 知らんけど」
「でも、いい話でした。やっぱり、私は、狐ヶ崎を壊します」
「ええんちゃう? 知らんけど」
宵と司は、家への反骨心を持つ者同士。今夜は、少し長めに酒を酌み交わした。