創作企画「冥冥の澱」
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どこ~?!
砂江砂絵は、道に迷っていた。杜崎神社へ続く道の、入り口が分からない。
“杜崎さん”
“はい”
“今度、お休みの日に、杜崎神社へお邪魔してもよろしいですか?”
“構いませんが、砂江さんには少々辛い道のりかと”
“えっ!?”
“体力が要りますよ”
“で、では、ハニーと行きます……そうすれば、無敵なので……”
“そうですか”
そんなやり取りを、先日した。
「砂絵さん、あそこじゃないですか?」
「へぇ? あそこ!?」
「だと思います」
「信じる。信じるからねぇ……!」
方向音痴の砂江は、パートナーのことを信じる他ないのである。
そうして、飛び込んでみたら。木々の間を一本の古道が通っていた。
「それっぽい!」
「ですね」
その道を、ひたすら進んで行く。すると。
「お次は、石段ですかぁ~?!」
「これは、難敵ですね」
パトラッシュ、僕はもう疲れたよ。
脳内再生されるアニメ、フランダースの犬の最終話。
「帰ります?」
「行くもん…………」
杜崎さん。ワタシの友達になってくれるかもしれない人。いや、正直、全然分からないけど。少なくとも、嫌われてはいない。はず。
持ってきたペットボトルの麦茶を飲む。
「い、行くぞ~」
「はい」
一段、また一段と登っていく。途中、足が重くなり、登る速度がナメクジみたいに遅くなった。
「ひぇ……まだ着かないの……?」
「もう、少しです……」
パートナーも、だいぶ消耗している。それは、そうだ。ふたりとも、あまり運動をしないタイプのオタクなのだから。
呼吸が荒れている。気力を振り絞って、なんとか進む。
「着いた~!」
「お疲れ様です」
「お疲れ様!」
労い合う、オタクふたり。
「道の真ん中は、通っちゃダメだよ。ぶつかるから……」
「はい」
境内を歩く。
「デッカ」
「デカいですね」
「梅が咲いてる」
この季節に? 何故?
「え? どこですか?」
「え? どこって、周り全部……」
あ。そうか、これ、見えないのか。
「ああ、砂絵さんには見えるんですね。綺麗なんでしょうね」
「う、うん。とても綺麗」
こういう場所って、色々なものが“見えて”しまう。
不用意に口にしないように、気を付けなくてはならない。
「こんにちは」
こちらに気付いた神社の者が、箒を携え、挨拶をしてきた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは」
ふたりで、挨拶を返す。
朗らかな美人。緊張する。初めて、杜崎さんを見た時も、緊張したけど。
「あの、杜崎さんはどちらに?」
「杜崎は、私ですけど……」
「え!? あ、お、奥様?! えと、あの、宵子さんですか……?」
「はい。杜崎宵子です。あなたは?」
「あわ……申し遅れました、ワタシ、杜崎さんの同僚の砂江砂絵です……」
「まあ、あなたが? 夫から、お話は伺っています。ようこそ、いらっしゃいました」
「宵子さん」
「還さん」
奥から、杜崎還がやって来た。
「こんにちは。砂江さん、と、こちらは……」
「あ、はい。こちら、ワタシのパートナーの————」
ざぁっと。強めの秋風が吹く。
梅の花弁が舞い、絵になる夫婦だなぁ。なんて、思う砂江だった。
砂江砂絵は、道に迷っていた。杜崎神社へ続く道の、入り口が分からない。
“杜崎さん”
“はい”
“今度、お休みの日に、杜崎神社へお邪魔してもよろしいですか?”
“構いませんが、砂江さんには少々辛い道のりかと”
“えっ!?”
“体力が要りますよ”
“で、では、ハニーと行きます……そうすれば、無敵なので……”
“そうですか”
そんなやり取りを、先日した。
「砂絵さん、あそこじゃないですか?」
「へぇ? あそこ!?」
「だと思います」
「信じる。信じるからねぇ……!」
方向音痴の砂江は、パートナーのことを信じる他ないのである。
そうして、飛び込んでみたら。木々の間を一本の古道が通っていた。
「それっぽい!」
「ですね」
その道を、ひたすら進んで行く。すると。
「お次は、石段ですかぁ~?!」
「これは、難敵ですね」
パトラッシュ、僕はもう疲れたよ。
脳内再生されるアニメ、フランダースの犬の最終話。
「帰ります?」
「行くもん…………」
杜崎さん。ワタシの友達になってくれるかもしれない人。いや、正直、全然分からないけど。少なくとも、嫌われてはいない。はず。
持ってきたペットボトルの麦茶を飲む。
「い、行くぞ~」
「はい」
一段、また一段と登っていく。途中、足が重くなり、登る速度がナメクジみたいに遅くなった。
「ひぇ……まだ着かないの……?」
「もう、少しです……」
パートナーも、だいぶ消耗している。それは、そうだ。ふたりとも、あまり運動をしないタイプのオタクなのだから。
呼吸が荒れている。気力を振り絞って、なんとか進む。
「着いた~!」
「お疲れ様です」
「お疲れ様!」
労い合う、オタクふたり。
「道の真ん中は、通っちゃダメだよ。ぶつかるから……」
「はい」
境内を歩く。
「デッカ」
「デカいですね」
「梅が咲いてる」
この季節に? 何故?
「え? どこですか?」
「え? どこって、周り全部……」
あ。そうか、これ、見えないのか。
「ああ、砂絵さんには見えるんですね。綺麗なんでしょうね」
「う、うん。とても綺麗」
こういう場所って、色々なものが“見えて”しまう。
不用意に口にしないように、気を付けなくてはならない。
「こんにちは」
こちらに気付いた神社の者が、箒を携え、挨拶をしてきた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは」
ふたりで、挨拶を返す。
朗らかな美人。緊張する。初めて、杜崎さんを見た時も、緊張したけど。
「あの、杜崎さんはどちらに?」
「杜崎は、私ですけど……」
「え!? あ、お、奥様?! えと、あの、宵子さんですか……?」
「はい。杜崎宵子です。あなたは?」
「あわ……申し遅れました、ワタシ、杜崎さんの同僚の砂江砂絵です……」
「まあ、あなたが? 夫から、お話は伺っています。ようこそ、いらっしゃいました」
「宵子さん」
「還さん」
奥から、杜崎還がやって来た。
「こんにちは。砂江さん、と、こちらは……」
「あ、はい。こちら、ワタシのパートナーの————」
ざぁっと。強めの秋風が吹く。
梅の花弁が舞い、絵になる夫婦だなぁ。なんて、思う砂江だった。