創作企画「冥冥の澱」
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イギリスはロンドンの地下鉄に、日本人の女がひとり、乗車していた。それを見た者のほとんどは、こう思った。
どうして、着物を着たお姫様が、地下鉄なんかに乗っているのだろう?
その女は、別にお姫様でもなければ、ガラスケースの中のお人形でもなく、狐ヶ崎花という名前の人間である。
花は、ヨーロッパ巡りの真っ最中だ。息子の宵に言われて、自身のやりたいことを思い出し、実行している。
ヴィクトリア駅に着いた。ここからは、徒歩で8分。そこに目的地がある。
花は、人混みの中を縫うように歩き、すいすいと進んでいく。
早く、自分の目で見てみたいわ。
その一心で歩いた。
「まあ……」
思わず、小さく声を出す。
花の目の前には、荘厳なバッキンガム宮殿があった。エリザベス女王が暮らしていた場所。今の季節では、宮殿内には入れないが、衛兵が交替するところを見てみたい。ぜひとも。そのために、10時までには着くようにしたのだ。
少しそわそわしながら、時を待つ。
入り口に立っている、黒い帽子に赤い制服の衛兵たちは、世界中から集まった観光客たちには目もくれず、真っ直ぐ前を見つめ、務めに従事している。
やがて、交替の時間がきた。衛兵たちが敬礼をし、規則正しい歩みで、交替する。
花は、それをスマートフォンのカメラに収めた。それを、家族の元へ送信する。
“バッキンガム宮殿の衛兵交替の様子です。とても見事なお仕事振りでした”
メッセージも、送信。さて、次はどこへ行こうかしら?
この旅は、花の気の向くままに進められている。気の向くまま、風の向くまま、旅をするのは、いつ以来だろう?
「Excuse me.」
「はい?」
不意に、肩を叩かれる。振り向くと、イギリス人と覚しき女性が、笑顔でいた。
「Hi.Shall I take a picture?」
「まあ、お写真を撮ってくださるの? Yes.Thank you so much.」
花は、スマートフォンを、女性に預ける。そして、バッキンガム宮殿を背にして、記念写真を撮った。
「Have a nice trip.」
「Thank you very much!」
女性は、花に手を振り、去って行く。花は、一礼した。
鞄から、ガイドブックを取り出す。
次は、そうね。大英博物館がいいかしら? それとも、ヴィクトリア&アルバート博物館? ロンドン自然史博物館もいいわね。
決めたわ。全部行きましょう。でも、今日は大英博物館ね。電車で、ブルームズベリーへ向かいましょう。
ガイドブックをしまい、いざ、というところで、男に鞄を引ったくられた。
「あっ」
走って逃げようとする男の足に、自分の足を引っかける。バランスを崩した男の腕を捻り上げて、鞄を取り戻した。
そして、そのまま拘束し、「Call the police!」と叫ぶ。周りにいたひとりが「OK!」と言い、警察を呼び、男は連行された。
そうそう。旅って、色々起こるのよね。良いことも、悪いことも。
早く、大英博物館へ行かないと。一日では、きっと見終わらないのだけれど。まあ、気の向くままに行きましょう。
花は、先ほど撮ってもらった写真を、送った。
“まだまだ帰らないので、そのつもりでいらしてくださいね”
どうして、着物を着たお姫様が、地下鉄なんかに乗っているのだろう?
その女は、別にお姫様でもなければ、ガラスケースの中のお人形でもなく、狐ヶ崎花という名前の人間である。
花は、ヨーロッパ巡りの真っ最中だ。息子の宵に言われて、自身のやりたいことを思い出し、実行している。
ヴィクトリア駅に着いた。ここからは、徒歩で8分。そこに目的地がある。
花は、人混みの中を縫うように歩き、すいすいと進んでいく。
早く、自分の目で見てみたいわ。
その一心で歩いた。
「まあ……」
思わず、小さく声を出す。
花の目の前には、荘厳なバッキンガム宮殿があった。エリザベス女王が暮らしていた場所。今の季節では、宮殿内には入れないが、衛兵が交替するところを見てみたい。ぜひとも。そのために、10時までには着くようにしたのだ。
少しそわそわしながら、時を待つ。
入り口に立っている、黒い帽子に赤い制服の衛兵たちは、世界中から集まった観光客たちには目もくれず、真っ直ぐ前を見つめ、務めに従事している。
やがて、交替の時間がきた。衛兵たちが敬礼をし、規則正しい歩みで、交替する。
花は、それをスマートフォンのカメラに収めた。それを、家族の元へ送信する。
“バッキンガム宮殿の衛兵交替の様子です。とても見事なお仕事振りでした”
メッセージも、送信。さて、次はどこへ行こうかしら?
この旅は、花の気の向くままに進められている。気の向くまま、風の向くまま、旅をするのは、いつ以来だろう?
「Excuse me.」
「はい?」
不意に、肩を叩かれる。振り向くと、イギリス人と覚しき女性が、笑顔でいた。
「Hi.Shall I take a picture?」
「まあ、お写真を撮ってくださるの? Yes.Thank you so much.」
花は、スマートフォンを、女性に預ける。そして、バッキンガム宮殿を背にして、記念写真を撮った。
「Have a nice trip.」
「Thank you very much!」
女性は、花に手を振り、去って行く。花は、一礼した。
鞄から、ガイドブックを取り出す。
次は、そうね。大英博物館がいいかしら? それとも、ヴィクトリア&アルバート博物館? ロンドン自然史博物館もいいわね。
決めたわ。全部行きましょう。でも、今日は大英博物館ね。電車で、ブルームズベリーへ向かいましょう。
ガイドブックをしまい、いざ、というところで、男に鞄を引ったくられた。
「あっ」
走って逃げようとする男の足に、自分の足を引っかける。バランスを崩した男の腕を捻り上げて、鞄を取り戻した。
そして、そのまま拘束し、「Call the police!」と叫ぶ。周りにいたひとりが「OK!」と言い、警察を呼び、男は連行された。
そうそう。旅って、色々起こるのよね。良いことも、悪いことも。
早く、大英博物館へ行かないと。一日では、きっと見終わらないのだけれど。まあ、気の向くままに行きましょう。
花は、先ほど撮ってもらった写真を、送った。
“まだまだ帰らないので、そのつもりでいらしてくださいね”