創作企画「冥冥の澱」
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「あら~、宵くん、いらっしゃい」
「お、狐ヶ崎の坊。いつも帆希と仲良くしてくれて、ありがとうな」
帆希さんの、おかあさまと、おとうさま。
すてきなご家ぞく。わたしの家とは、ぜんぜんちがう。狐ヶ崎は、おかしい。
“夜禽の娘、捕まえておけよ、宵”
“夜禽の娘と結婚出来れば、お前がいる価値も、少しはあったな”
おとうさま。おにいさま。それは、どういうことなんですか? おかあさまは、なぜ、なにもいわないんですか?
帆希さんは、“もの”じゃないです。わたしは、おにいさまより、下なんですか?
わたしの家は、おかしい。
「宵くん?」
「なんでもないです。帆希さんのお家、すごくすきです」
「ほんと?! ありがとう!」
「きょうは、なにをしましょうか?」
ああ、たのしいときは、あっというまにすぎさる。
かえりたくないなぁ。
◆◆◆
帆希さんのご両親が、亡くなった。命を、奪われた。
「帆希さん。この度は、ご愁傷様です」
「うん……」
帆希さんは、どこか虚ろに返事をする。無理もない。
葬儀は、無情に進み、おふたりを弔う。あの暖かなご両親が、何故、冷たい土の下に行かなくてはならないのか?
何故? どうして?
“夜禽の当主、死んだそうだな。情けない”
“色々とやり易くなるな、宵”
どうして、あんな人たちは生きているんですか? あなたたちが死んでくださいよ。
私の理想の暖かな家庭が崩れ去り、私の最低な家庭は、安穏としている。
どうして、そんな残酷なことが?
私は、運命を恨んだ。
世界は、真っ暗で、酷いことばかり起きる。目映い光の中に入られるのは、ほんの一瞬。全ては過ぎ去り、また、闇の中。
私が、帆希さんに出来ることは、少ない。私は、“狐ヶ崎の次男”だから。
申し訳ありません、帆希さん。無力な私を、赦さないでください。
私に、泣く資格なんてない。ゆるされない。
私は、ずっと唇を噛み締めて、涙を流すのを堪え続ける。
おふたりを荼毘に付す時も、私はただ黙って、帆希さんの側にいた。大切な幼馴染みの、傍にいた。
その帰り道。黄昏時に、ひとりで歩く。
「…………」
途中、ぴたりと歩みを止める。
「う、あぁ…………」
涙を抑えきれなかった。天を睨み付けながら、慟哭する。
悲しい。哀しい。どうして。なんで。酷い。どうして。どうして。どうして。
胸の内に、真っ黒なものが巣食う。それは、やがて、全身を覆い尽くして。私は、膝をつきそうになる。その重さに耐えながら、立ち尽くす。
夜が、すぐ側まで迫っていた。
「お、狐ヶ崎の坊。いつも帆希と仲良くしてくれて、ありがとうな」
帆希さんの、おかあさまと、おとうさま。
すてきなご家ぞく。わたしの家とは、ぜんぜんちがう。狐ヶ崎は、おかしい。
“夜禽の娘、捕まえておけよ、宵”
“夜禽の娘と結婚出来れば、お前がいる価値も、少しはあったな”
おとうさま。おにいさま。それは、どういうことなんですか? おかあさまは、なぜ、なにもいわないんですか?
帆希さんは、“もの”じゃないです。わたしは、おにいさまより、下なんですか?
わたしの家は、おかしい。
「宵くん?」
「なんでもないです。帆希さんのお家、すごくすきです」
「ほんと?! ありがとう!」
「きょうは、なにをしましょうか?」
ああ、たのしいときは、あっというまにすぎさる。
かえりたくないなぁ。
◆◆◆
帆希さんのご両親が、亡くなった。命を、奪われた。
「帆希さん。この度は、ご愁傷様です」
「うん……」
帆希さんは、どこか虚ろに返事をする。無理もない。
葬儀は、無情に進み、おふたりを弔う。あの暖かなご両親が、何故、冷たい土の下に行かなくてはならないのか?
何故? どうして?
“夜禽の当主、死んだそうだな。情けない”
“色々とやり易くなるな、宵”
どうして、あんな人たちは生きているんですか? あなたたちが死んでくださいよ。
私の理想の暖かな家庭が崩れ去り、私の最低な家庭は、安穏としている。
どうして、そんな残酷なことが?
私は、運命を恨んだ。
世界は、真っ暗で、酷いことばかり起きる。目映い光の中に入られるのは、ほんの一瞬。全ては過ぎ去り、また、闇の中。
私が、帆希さんに出来ることは、少ない。私は、“狐ヶ崎の次男”だから。
申し訳ありません、帆希さん。無力な私を、赦さないでください。
私に、泣く資格なんてない。ゆるされない。
私は、ずっと唇を噛み締めて、涙を流すのを堪え続ける。
おふたりを荼毘に付す時も、私はただ黙って、帆希さんの側にいた。大切な幼馴染みの、傍にいた。
その帰り道。黄昏時に、ひとりで歩く。
「…………」
途中、ぴたりと歩みを止める。
「う、あぁ…………」
涙を抑えきれなかった。天を睨み付けながら、慟哭する。
悲しい。哀しい。どうして。なんで。酷い。どうして。どうして。どうして。
胸の内に、真っ黒なものが巣食う。それは、やがて、全身を覆い尽くして。私は、膝をつきそうになる。その重さに耐えながら、立ち尽くす。
夜が、すぐ側まで迫っていた。