創作企画「冥冥の澱」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
男子厨房に入らず。古臭い我が家の教え。世に、男の料理人がどれだけいることか。
そもそも、性別二元論がもう、古いし。大学で、ジェンダーについての講義を受けてください。
残念ながら、まだ私は、家庭科の授業でしか料理をしたことがない。
「お手伝いが出来ず、すいません」
「気にしなくていいよ。宵くんは、お客さんなんだから」
陽一さんは、朗らかに言う。しかし、私は、絶対に料理を覚えようと決意した。だって、自分の作ったものを、陽一さんに食べてもらえたら嬉しいので。
「宵くん、座ってていいよ?」
「いえ、邪魔でなければ、近くで見ていたいです」
「分かった」
陽一さんは、時々スマホでレシピを見ながら、調理を始めた。玉ねぎをみじん切りにしたり、挽き肉をこねたり、フライパンを温めたり。私には、とても複雑な工程に見える。
格好いいな。私の彼氏です、この人。なんかもう、全世界に自慢したい。カップルチャンネル作りたい。やっぱりやだ。独り占めしたい。
すごいすき。この感情を、どうしよう? どうしたらいい?
「宵くん、出来たよ! テーブルに運ぶね」
「手伝います」
「ありがとう」
個人が個人のために作った手料理。そんな宝物、もらったことがない。
「今夜のメニューは、和風おろしハンバーグです! あと、サラダ。ご飯は、おかわりあるよ」
ふたりで、向かい合って座ったところで、陽一さんがニコニコしながら言った。
「わぁ」
思わず、拍手する。陽一さんは、ちょっと照れくさそうにした。
「写真撮らせてください」
「うん。僕も撮っとこう」
大切に、思い出を切り取る。あなたといれば、全ての記憶が一生ものかも。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
箸でハンバーグを割ると、肉汁が溢れてきた。一口サイズに切ったそれを、そっと口に運ぶ。
「美味しいです……!」
「ありがとー!」
天才シェフ。凄い。好き。
「僕、宵くんの嬉しそうな顔、好きだなぁ。まあ、いつもの笑顔も好きなんだけど」
「えっ?」
「宵くん、いつもニコニコしてるけど、凄く嬉しい時は、少し頬が赤くなるよね」
「は……恥ずかしい…………!」
勘弁してください。
「可愛いね、宵くん」
「やめてください。キスしますよ?」
「い、いいよッ!」
「いいの?!」
落ち着け。心臓が、どきどきする。
「しません。しませんよ、食事中なので」
私は、平静を装って、白米を食べる。美味しい。
そういえば、なんであの時、陽一さんにキスしたんだろう? なんだか凄く愛おしく感じて、気付いたら唇を奪っていた。
やっぱり、今朝見た夢みたいなことをしたいから?
禁止! ご禁制! 今、考えることじゃない!
食事は、一見穏やかに。しかし、私は今までにしたことのない取り繕いをしながら進む。
食後、緑茶と一緒に、私が持ってきた大納言小豆入りの羊羮を食べる。陽一さんは、いたく感動していた。あなたが喜んでくれて、何よりです。
その後、ふたりで動画を見たり、一緒に行きたい場所について話したりした。
「そうだ。陽一さん、私と交際してること、皆さんに話してもいいですか?」
「いいよ」
「どうせなら、めちゃくちゃ驚かせてやりましょうよ。あーでも、旅行が……伏線に……」
察してる人もいそうだ。
「うん。まあいいですよね、普通に報告すれば」
「うん」
「という訳で、ふたりで写真を撮ってグループチャットに送り、特に何も言わず様子見します」
私は、スマホを構える。
「宵くん?」
「はい、ポーズ」
「宵くん?!」
そうして撮れた写真は、私が陽一さんの頬にキスしているもの。
「はい、送信」
既読が、みるみるつく。
そして、「ええっ!?」「なにこれ」「酔ってる?」「おめでとう!」「式には呼んでくれよな」「そいつ、狐やぞ」「おめでとうございます」「祝」と、メッセージが飛んできた。
「あははっ! 困惑してる人と察してた人で、半々くらいですね」
「宵くんって、本当に、面白そうと思ったことすぐやるよね…………」
「毎日が、お祭りですからね。私が望む限り」
本日は、そろそろお開きですが。でも、やっぱり。
「では、帰りますね」
「……うん」
私は、陽一さんに、ぎゅっと抱き着いた。
「帰りたくないって言ったら、どうしますか?」
耳元で囁く。
「帰らなくてもいいよ……!」
「ふふ。ありがとうございます。もう充分です。よければ、今度泊まらせてください」
「うん」
夢みたいに、幸せだなぁ。
終わらない夢のことを、現実と呼んでもいいらしい。
そもそも、性別二元論がもう、古いし。大学で、ジェンダーについての講義を受けてください。
残念ながら、まだ私は、家庭科の授業でしか料理をしたことがない。
「お手伝いが出来ず、すいません」
「気にしなくていいよ。宵くんは、お客さんなんだから」
陽一さんは、朗らかに言う。しかし、私は、絶対に料理を覚えようと決意した。だって、自分の作ったものを、陽一さんに食べてもらえたら嬉しいので。
「宵くん、座ってていいよ?」
「いえ、邪魔でなければ、近くで見ていたいです」
「分かった」
陽一さんは、時々スマホでレシピを見ながら、調理を始めた。玉ねぎをみじん切りにしたり、挽き肉をこねたり、フライパンを温めたり。私には、とても複雑な工程に見える。
格好いいな。私の彼氏です、この人。なんかもう、全世界に自慢したい。カップルチャンネル作りたい。やっぱりやだ。独り占めしたい。
すごいすき。この感情を、どうしよう? どうしたらいい?
「宵くん、出来たよ! テーブルに運ぶね」
「手伝います」
「ありがとう」
個人が個人のために作った手料理。そんな宝物、もらったことがない。
「今夜のメニューは、和風おろしハンバーグです! あと、サラダ。ご飯は、おかわりあるよ」
ふたりで、向かい合って座ったところで、陽一さんがニコニコしながら言った。
「わぁ」
思わず、拍手する。陽一さんは、ちょっと照れくさそうにした。
「写真撮らせてください」
「うん。僕も撮っとこう」
大切に、思い出を切り取る。あなたといれば、全ての記憶が一生ものかも。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
箸でハンバーグを割ると、肉汁が溢れてきた。一口サイズに切ったそれを、そっと口に運ぶ。
「美味しいです……!」
「ありがとー!」
天才シェフ。凄い。好き。
「僕、宵くんの嬉しそうな顔、好きだなぁ。まあ、いつもの笑顔も好きなんだけど」
「えっ?」
「宵くん、いつもニコニコしてるけど、凄く嬉しい時は、少し頬が赤くなるよね」
「は……恥ずかしい…………!」
勘弁してください。
「可愛いね、宵くん」
「やめてください。キスしますよ?」
「い、いいよッ!」
「いいの?!」
落ち着け。心臓が、どきどきする。
「しません。しませんよ、食事中なので」
私は、平静を装って、白米を食べる。美味しい。
そういえば、なんであの時、陽一さんにキスしたんだろう? なんだか凄く愛おしく感じて、気付いたら唇を奪っていた。
やっぱり、今朝見た夢みたいなことをしたいから?
禁止! ご禁制! 今、考えることじゃない!
食事は、一見穏やかに。しかし、私は今までにしたことのない取り繕いをしながら進む。
食後、緑茶と一緒に、私が持ってきた大納言小豆入りの羊羮を食べる。陽一さんは、いたく感動していた。あなたが喜んでくれて、何よりです。
その後、ふたりで動画を見たり、一緒に行きたい場所について話したりした。
「そうだ。陽一さん、私と交際してること、皆さんに話してもいいですか?」
「いいよ」
「どうせなら、めちゃくちゃ驚かせてやりましょうよ。あーでも、旅行が……伏線に……」
察してる人もいそうだ。
「うん。まあいいですよね、普通に報告すれば」
「うん」
「という訳で、ふたりで写真を撮ってグループチャットに送り、特に何も言わず様子見します」
私は、スマホを構える。
「宵くん?」
「はい、ポーズ」
「宵くん?!」
そうして撮れた写真は、私が陽一さんの頬にキスしているもの。
「はい、送信」
既読が、みるみるつく。
そして、「ええっ!?」「なにこれ」「酔ってる?」「おめでとう!」「式には呼んでくれよな」「そいつ、狐やぞ」「おめでとうございます」「祝」と、メッセージが飛んできた。
「あははっ! 困惑してる人と察してた人で、半々くらいですね」
「宵くんって、本当に、面白そうと思ったことすぐやるよね…………」
「毎日が、お祭りですからね。私が望む限り」
本日は、そろそろお開きですが。でも、やっぱり。
「では、帰りますね」
「……うん」
私は、陽一さんに、ぎゅっと抱き着いた。
「帰りたくないって言ったら、どうしますか?」
耳元で囁く。
「帰らなくてもいいよ……!」
「ふふ。ありがとうございます。もう充分です。よければ、今度泊まらせてください」
「うん」
夢みたいに、幸せだなぁ。
終わらない夢のことを、現実と呼んでもいいらしい。
