創作企画「冥冥の澱」
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「おーい、神花! 神花、ちょっと待って!」
そんな大きな呼び声に、振り向いてみると、声の主は、私を見て驚いた。走ってこちらに来たらしい彼は、気まずそうにしている。
「あの、すいません。人違いでした! 失礼します!」
「はい…………」
どうやら、私と「カミハナさん」を間違えたようだ。
私と似ている「カミハナさん」とは、何者なのか? 興味深い。
しかし、そろそろ講義の時間だ。教室へ向かおう。
次は、宗教学の講義。哲学科は、宗教哲学を取り扱うことがあるので、実は近しい分野である。
今日は、前回の続き、「共同体と宗教について」。
教室の席に着くと、右斜め前に、ポニーテールが見えた。ポニーテールの、推定男性。
えーと。もしかして、「カミハナさん」では?
講義が終わったら、絶対に声をかけよう。絶対! 面白いので!
そうして、つつがなく講義は終わり。
件の彼を見ると、のんびりとした動作で筆記用具や参考書などを鞄にしまっていた。
うずうずする。少しずつ近付き、話しかけるタイミングを窺う。
鞄の中に全てを収めた今が、チャンスだ。
「あの、もしかして、あなたはカミハナさんですか?」
「はい。神花紫水と申します」
深々と礼をされたので、慌てて礼を返し、「私、狐ヶ崎宵といいます。よろしくお願いします」と言う。何をよろしくするんだろう?
事の経緯を説明する。そして、双方、軽く自己紹介した。年齢・学年ともに同じであることが判明。
「宵くんは、哲学者さんになるのですか?」
「いえ、宇宙飛行士です」
「わぁ。凄いですねぇ。僕は、まだ決まってないです」
「すいません。嘘です」
“狐ヶ崎の次男”以外なら、なんにでもなりたいですよ。
「え? 何故嘘を?」
「バイブスで」
「ばいぶす?」
「ノリです」
「ノリですか」
「はい」
「宵くんって飄々とした人ですね」
上品に笑いながら、紫水さんは言った。
「ありがとうございます。よく言われます」
私は、いつもの笑みのままで。
その後、私と紫水さんは、連絡先を交換して別れた。
友達付き合いを始めてみると、紫水さんは色々と忙しい人で。だけど、それを感じさせない穏やかな空気を纏っている。
山は紫色に。日の光を受けた水は明るく、美しく。そんな人。
「和菓子がお好きなら、ご紹介したいお店がありまして」
『ぜひ、ご一緒したいです』
そんなこんなで、帆希さんがバイトしている時を狙って、和菓子屋に行った。
後々、三人とも、自分以外を「目立つ人たち」と思っていたことが分かり、笑ってしまった。
日々よ、いつまでも楽しくあれ。
◆◆◆
「ほら、前歩いてるだろ、ポニテの男」
「ああ? ふたりいるけど?」
「おっとりしてる方」
「知らねーよ! 右か左かで言え」
聴こえてる、聴こえてる。すいませんね、落ち着きがなくて。
そんな大きな呼び声に、振り向いてみると、声の主は、私を見て驚いた。走ってこちらに来たらしい彼は、気まずそうにしている。
「あの、すいません。人違いでした! 失礼します!」
「はい…………」
どうやら、私と「カミハナさん」を間違えたようだ。
私と似ている「カミハナさん」とは、何者なのか? 興味深い。
しかし、そろそろ講義の時間だ。教室へ向かおう。
次は、宗教学の講義。哲学科は、宗教哲学を取り扱うことがあるので、実は近しい分野である。
今日は、前回の続き、「共同体と宗教について」。
教室の席に着くと、右斜め前に、ポニーテールが見えた。ポニーテールの、推定男性。
えーと。もしかして、「カミハナさん」では?
講義が終わったら、絶対に声をかけよう。絶対! 面白いので!
そうして、つつがなく講義は終わり。
件の彼を見ると、のんびりとした動作で筆記用具や参考書などを鞄にしまっていた。
うずうずする。少しずつ近付き、話しかけるタイミングを窺う。
鞄の中に全てを収めた今が、チャンスだ。
「あの、もしかして、あなたはカミハナさんですか?」
「はい。神花紫水と申します」
深々と礼をされたので、慌てて礼を返し、「私、狐ヶ崎宵といいます。よろしくお願いします」と言う。何をよろしくするんだろう?
事の経緯を説明する。そして、双方、軽く自己紹介した。年齢・学年ともに同じであることが判明。
「宵くんは、哲学者さんになるのですか?」
「いえ、宇宙飛行士です」
「わぁ。凄いですねぇ。僕は、まだ決まってないです」
「すいません。嘘です」
“狐ヶ崎の次男”以外なら、なんにでもなりたいですよ。
「え? 何故嘘を?」
「バイブスで」
「ばいぶす?」
「ノリです」
「ノリですか」
「はい」
「宵くんって飄々とした人ですね」
上品に笑いながら、紫水さんは言った。
「ありがとうございます。よく言われます」
私は、いつもの笑みのままで。
その後、私と紫水さんは、連絡先を交換して別れた。
友達付き合いを始めてみると、紫水さんは色々と忙しい人で。だけど、それを感じさせない穏やかな空気を纏っている。
山は紫色に。日の光を受けた水は明るく、美しく。そんな人。
「和菓子がお好きなら、ご紹介したいお店がありまして」
『ぜひ、ご一緒したいです』
そんなこんなで、帆希さんがバイトしている時を狙って、和菓子屋に行った。
後々、三人とも、自分以外を「目立つ人たち」と思っていたことが分かり、笑ってしまった。
日々よ、いつまでも楽しくあれ。
◆◆◆
「ほら、前歩いてるだろ、ポニテの男」
「ああ? ふたりいるけど?」
「おっとりしてる方」
「知らねーよ! 右か左かで言え」
聴こえてる、聴こえてる。すいませんね、落ち着きがなくて。