創作企画「冥冥の澱」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どしたん? 自分。元気なさそうやん」
鍵野司が、心配そうに尋ね、あなたの隣の椅子に座った。
「なんか、ヤなことでもあったんか?」
色々ある。人生に悩みは付き物だ。しかし、隣の人物は、いつも元気で明るい。まるで、この世は自分中心に回っていると言わんばかりに。
ギャンブルで負けて、やけ酒を飲む時も。賭けに勝って、景気良く人に奢る時も。変わらず、鍵野司は、笑っている。
「大丈夫やって。知らんけど」
今もそう、へらっと笑い、根拠なく「大丈夫」だと口にした。
彼女に、悩みを打ち明けてしまおうか?
「当ててみよか? 悩み。ズバリ、人間関係やな!」
司は、最大公約数的な悩みを答える。まあ、悩んでないこともないが。
「どついたればええやん!」
暴力行為を提案するな。彼女は、なんでも拳で解決しようとする傾向がある。
「いてまえ!」
物騒。シンプルに犯罪。
「俺が、やったろか?」
やらんでいい、やらんでいい。丁重に申し出を断った。
「よっしゃ! じゃあ、司ちゃんが旨いもん奢ったるわ! せやから、元気出しや! 勝てるもんも勝てんようなるで!」
なんの話? ギャンブル?
「ほな、いくでー!」
司は、あなたの手を引いて、元気よく席を立つ。
「たこ焼きやろ、串カツやろ、粉もん……何がええ?」
「たこ焼き……」
「せやったら、ウチでたこパしよか? 意外やろけど、ウチ、たこ焼きプレートあんねん」
特に意外でもない。大阪人は皆、自宅にたこ焼きプレートがあると聞いたことがある。それを司に言ってみると。
「皆? ないない。ウチはあるけどな」
それ、お決まりのやつ。結局、皆、持ってるやつ。
「俺は、たこ焼きがいっちゃん得意やねん! 期待しとき!」
眩しい笑顔で、司は告げた。
道すがら、司は、延々と自分の失敗談を笑い話として語った。よく今まで生きて来れたな、と感心する。生きていけるのか、そんなでも。
途中、スーパーでたこ焼きの材料を買い、司の家を目指す。
「着いたで~」
古びたアパートの一室。決して広くない部屋に、司は、あなたを通す。
「そこらに座って待っとってな。ちゃっちゃと用意したるわ」
ちゃぶ台の横の座布団の上に座る。
司は、たこ焼きプレートをちゃぶ台に乗せ、テキパキとたこ焼きを作った。ソースのいい匂いがする。
「ほな、食べよか。いただきます!」
「いただきます」
司お手製の熱々のたこ焼きは、中がとろっとしていて、とても美味しい。
「旨いやろ? 司ちゃんが愛情込めて作ってん。旨さマシマシやで! なんぼでも作ったるから、腹いっぱい食べや! 味変もあるで」
ふたりきりのたこ焼きパーティーは、和やかに。ひたすら明るく、続いていく。
ああ、少しずつ、息がしやすくなってきた。
「自分、今、ええ顔しとるで。その方がええ。人間、悪い時ほど笑てたらええねん。せやから、俺はいっつも笑てんねん。ま、笑みを張り付けとけっちゅう意味やないねんけどな。泣きたかったら、俺の胸くらいいつでも貸したるわ。安心せぇ、アンタには味方がおるんやから」
鍵野司は、にっかり笑う。
鍵野司が、心配そうに尋ね、あなたの隣の椅子に座った。
「なんか、ヤなことでもあったんか?」
色々ある。人生に悩みは付き物だ。しかし、隣の人物は、いつも元気で明るい。まるで、この世は自分中心に回っていると言わんばかりに。
ギャンブルで負けて、やけ酒を飲む時も。賭けに勝って、景気良く人に奢る時も。変わらず、鍵野司は、笑っている。
「大丈夫やって。知らんけど」
今もそう、へらっと笑い、根拠なく「大丈夫」だと口にした。
彼女に、悩みを打ち明けてしまおうか?
「当ててみよか? 悩み。ズバリ、人間関係やな!」
司は、最大公約数的な悩みを答える。まあ、悩んでないこともないが。
「どついたればええやん!」
暴力行為を提案するな。彼女は、なんでも拳で解決しようとする傾向がある。
「いてまえ!」
物騒。シンプルに犯罪。
「俺が、やったろか?」
やらんでいい、やらんでいい。丁重に申し出を断った。
「よっしゃ! じゃあ、司ちゃんが旨いもん奢ったるわ! せやから、元気出しや! 勝てるもんも勝てんようなるで!」
なんの話? ギャンブル?
「ほな、いくでー!」
司は、あなたの手を引いて、元気よく席を立つ。
「たこ焼きやろ、串カツやろ、粉もん……何がええ?」
「たこ焼き……」
「せやったら、ウチでたこパしよか? 意外やろけど、ウチ、たこ焼きプレートあんねん」
特に意外でもない。大阪人は皆、自宅にたこ焼きプレートがあると聞いたことがある。それを司に言ってみると。
「皆? ないない。ウチはあるけどな」
それ、お決まりのやつ。結局、皆、持ってるやつ。
「俺は、たこ焼きがいっちゃん得意やねん! 期待しとき!」
眩しい笑顔で、司は告げた。
道すがら、司は、延々と自分の失敗談を笑い話として語った。よく今まで生きて来れたな、と感心する。生きていけるのか、そんなでも。
途中、スーパーでたこ焼きの材料を買い、司の家を目指す。
「着いたで~」
古びたアパートの一室。決して広くない部屋に、司は、あなたを通す。
「そこらに座って待っとってな。ちゃっちゃと用意したるわ」
ちゃぶ台の横の座布団の上に座る。
司は、たこ焼きプレートをちゃぶ台に乗せ、テキパキとたこ焼きを作った。ソースのいい匂いがする。
「ほな、食べよか。いただきます!」
「いただきます」
司お手製の熱々のたこ焼きは、中がとろっとしていて、とても美味しい。
「旨いやろ? 司ちゃんが愛情込めて作ってん。旨さマシマシやで! なんぼでも作ったるから、腹いっぱい食べや! 味変もあるで」
ふたりきりのたこ焼きパーティーは、和やかに。ひたすら明るく、続いていく。
ああ、少しずつ、息がしやすくなってきた。
「自分、今、ええ顔しとるで。その方がええ。人間、悪い時ほど笑てたらええねん。せやから、俺はいっつも笑てんねん。ま、笑みを張り付けとけっちゅう意味やないねんけどな。泣きたかったら、俺の胸くらいいつでも貸したるわ。安心せぇ、アンタには味方がおるんやから」
鍵野司は、にっかり笑う。