創作企画「冥冥の澱」
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暗い、暗い海を眺めている。潮騒が、耳に心地好い。
月明かりが綺麗な、夜の浜辺で、私と陽一さんは、手を繋いで並んでいる。
「陽一さん、引き返すなら今ですよ」
言葉とは裏腹に、私は、彼の手を強く握った。
独りにしないで。お願いだから。
「宵くんと、一緒がいいな」
「……全部、嘘ですよ。あなたが好きとか、全部」
「宵くんって、ほんと嘘つきだよね」
笑われた。バレている。世界で一番、あなたが好きです。
「選んでくれて、ありがとう」
「それは、私の台詞です。ありがとうございます」
私を選んでくれて。隣にいてくれて。
「行きましょうか」
「うん」
ふたりで、海の深くへ進んでいく。なんだろう、この安心感は?
やっと終われるから? 私の人生が完結するから?
「きっと、これって、ハッピーエンドですよね」
「そうだね」
陽一さんの声は、どこまでも優しい。私の心は浮わついていて、波間を揺蕩うクラゲみたい。
あの人たち、私がいなくなっても、別に困らないんだろうな。母は、泣くかもしれないが。父と兄は、「恥さらし」と言うだろう。あなたたちの方こそ、「恥さらし」なんですが。よく生きてこられましたね?
生き恥さらし。私は、あなた方とは違うので。さよなら、大嫌いな人たち。
お葬式なんて、要りません。直葬してください。本当は、あなたたちに見送られるのすら、嫌なんですよ。
海水が、膝上まできた。
「私たちって、どこへ行くんでしょうね?」
「うーん。どこだろう?」
「私は、陽一さんがいれば、それで構わないんですけど」
「僕も。宵くんがいれば、それでいいよ」
嬉しい。
「例え、行き着く先が地獄でも、あなたといられるなら、幸せです」
「ありがとう、宵くん」
結局、愛ってよく分からないけど、この結末は悪くない。今まで生きてきた甲斐があった。お疲れ様でした。
腰まで、水に浸かる。手は、固く繋がれたまま。
木漏れ日。そよ風。歌う小鳥。咲き誇る花。流れる水。大好きな幼馴染み。大切な仲間たち。学友。街行く人。幸せそうな家族。その全てに、嫉妬してしまう夜がありました。
自分は、なんて惨めなんだと。永遠に、このままなのかもしれないと。たくさんのものを、妬んでいた私。
だけど、もう、大丈夫。優しくて、ずっと明けない夜の中にいましょう。ふたりきりで。
「陽一さん」
「うん?」
「大好きですよ」
「宵くんのこと、大好きだよ」
ふたりで、顔を寄せ合い、笑顔を作る。
最期に、そんなやり取りをして、ふたり、とぷんと海に沈んだ。
月明かりが綺麗な、夜の浜辺で、私と陽一さんは、手を繋いで並んでいる。
「陽一さん、引き返すなら今ですよ」
言葉とは裏腹に、私は、彼の手を強く握った。
独りにしないで。お願いだから。
「宵くんと、一緒がいいな」
「……全部、嘘ですよ。あなたが好きとか、全部」
「宵くんって、ほんと嘘つきだよね」
笑われた。バレている。世界で一番、あなたが好きです。
「選んでくれて、ありがとう」
「それは、私の台詞です。ありがとうございます」
私を選んでくれて。隣にいてくれて。
「行きましょうか」
「うん」
ふたりで、海の深くへ進んでいく。なんだろう、この安心感は?
やっと終われるから? 私の人生が完結するから?
「きっと、これって、ハッピーエンドですよね」
「そうだね」
陽一さんの声は、どこまでも優しい。私の心は浮わついていて、波間を揺蕩うクラゲみたい。
あの人たち、私がいなくなっても、別に困らないんだろうな。母は、泣くかもしれないが。父と兄は、「恥さらし」と言うだろう。あなたたちの方こそ、「恥さらし」なんですが。よく生きてこられましたね?
生き恥さらし。私は、あなた方とは違うので。さよなら、大嫌いな人たち。
お葬式なんて、要りません。直葬してください。本当は、あなたたちに見送られるのすら、嫌なんですよ。
海水が、膝上まできた。
「私たちって、どこへ行くんでしょうね?」
「うーん。どこだろう?」
「私は、陽一さんがいれば、それで構わないんですけど」
「僕も。宵くんがいれば、それでいいよ」
嬉しい。
「例え、行き着く先が地獄でも、あなたといられるなら、幸せです」
「ありがとう、宵くん」
結局、愛ってよく分からないけど、この結末は悪くない。今まで生きてきた甲斐があった。お疲れ様でした。
腰まで、水に浸かる。手は、固く繋がれたまま。
木漏れ日。そよ風。歌う小鳥。咲き誇る花。流れる水。大好きな幼馴染み。大切な仲間たち。学友。街行く人。幸せそうな家族。その全てに、嫉妬してしまう夜がありました。
自分は、なんて惨めなんだと。永遠に、このままなのかもしれないと。たくさんのものを、妬んでいた私。
だけど、もう、大丈夫。優しくて、ずっと明けない夜の中にいましょう。ふたりきりで。
「陽一さん」
「うん?」
「大好きですよ」
「宵くんのこと、大好きだよ」
ふたりで、顔を寄せ合い、笑顔を作る。
最期に、そんなやり取りをして、ふたり、とぷんと海に沈んだ。