創作企画「冥冥の澱」
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夜半。四象のバーへ、無遠慮にやって来た者がいる。
「チッ。宵はいるか?!」
舌打ちをし、狐ヶ崎明は、誰にともなく質問した。
バーにいた面々は、しん、と静まり返る。
「おい、赤毛が見えているぞ、夜禽の女」
「あらあら、こんな所になんの用です? 私、暇じゃないんですけど。あぁ、明さんが暇なんですね」
とっさにしゃがんで隠れていた夜禽帆希が、立ち上がり、凛とした立ち姿で言う。
「口の利き方に気を付けろ、女。宵はどこだ?」
「さぁ、知りません。ここにはいませんよ」
「隠し立てすると、ろくなことにならないぞ」
「いい加減にしなさいよ! こっちが下手に出てりゃ良い気になりやがって」
今にも殴りかかりそうな勢いで、帆希は怒鳴った。そして、明に近付いていく。
「はっ。それは、こちらの台詞だ。良い気になるなよ。家系に似合わず、呪われた女のくせに、代々陰陽師である夜禽家を潰すつもりか?」
「なッ! このッ! クズ野郎ッ!」
帆希は、明の頬を、平手打ちする。バチン。店内に、音が響いた。
「女が男に手を上げるとはな。全く、親の顔が見てみたい。ああ、もういないのだったな」
冷たい目で帆希を見下し、冷たい声で挑発する。
「ゆるさないッ! ゆるさないぞ、狐ヶ崎明! お前なんか! お前なんかッ!」
帆希は拳を振り上げ、明を殴ろうとした。明が、薄笑いを浮かべていることに気付かずに。
「ストーップ。ダメだヨ。傷害罪になっちゃうカラ」
四象のオーナー、紗絡八卦が、帆希の腕を掴んで止める。いつの間にか背後に来ていた八卦に、帆希は驚き、手の力を抜いた。振り上げた腕を下ろし、キッと明を睨む。
そんな帆希の前に出て、八卦は、口を開く。
「ハジメマシテ。宵クンのオニイチャン。ここのオーナーの紗絡八卦だヨ」
「汚くて怪しい店だ。狐ヶ崎には、あまりにも不釣り合いだな」
自らは名乗りもせずに、眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように宣う明。再びの静寂。四象を愛する皆は、無言のまま、怒りを覚えた。
「え? なんですか? このカスは?」
丹村参が、口火を切る。その指先は、明に向けられていた。心の中で、中指を立てていることは、明白だ。
「空也、この人、きらーい」
真咲空也が、参の後に続く。
「凄いクズだね~」
宝来潔彦が、笑顔で後を追う。何人かは、お前もクズだろ、と内心思ったが、今は共闘することにした。
「本当に宵くんの兄なのか? なんと言うか、失礼千万だな」
真咲博巳は、脳内で、明の顔に「無礼者」と筆で記す。
「俺も同感」と、壬生寿介。
「宵チャンから、ちょいと聞いとったが、最悪じゃの!」と、リリアン。
「なんだ? 有象無象どもが。全く、喧しい」
明は、皆から向けられる怒りを意に介さず、最悪を重ねた。
八卦が、ヒールで、明に当たるか当たらないかのところでドアを蹴る。
「酒の飲み方も分かんない赤ちゃんは、早く名家におかえり〜」
「塩撒け、塩!」と、小宮山銀志朗が野次を飛ばした。それを受けて、無言で影海廻月が塩の入った袋を構える。
「とにかく、ここが狐ヶ崎に相応しくないことだけは理解出来た。宵には、躾が必要だということも。では、失礼する」
本当に失礼だな。と、皆が思った。
狐ヶ崎明は、踵を返して去って行く。
「なにあれ。躾って……宵くん、なにされるの……?」
空也が、心配そうにした。
「それは……宵くん、詳しく教えてくれないから……」
帆希が、苦し気に答える。
「今日も、兄に叱られました」「また、兄を怒らせてしまいました」「家族が、私の将来が心配だと言っていました」
以前、宵が、なんてことないように言っていたことを思い出す。
いつもの笑顔で、本当は、どんな感情だったの? 帆希は自問する。
「ハイハイ。ご家庭の問題には、首突っ込まないようにネ。宵クンなら、大丈夫。きっと、さらっと躱すヨ」
その言葉を皮切りに、バーに集まった各々は、いつもみたいに過ごすことにした。
二度と来るなよ。と思った後で。
「チッ。宵はいるか?!」
舌打ちをし、狐ヶ崎明は、誰にともなく質問した。
バーにいた面々は、しん、と静まり返る。
「おい、赤毛が見えているぞ、夜禽の女」
「あらあら、こんな所になんの用です? 私、暇じゃないんですけど。あぁ、明さんが暇なんですね」
とっさにしゃがんで隠れていた夜禽帆希が、立ち上がり、凛とした立ち姿で言う。
「口の利き方に気を付けろ、女。宵はどこだ?」
「さぁ、知りません。ここにはいませんよ」
「隠し立てすると、ろくなことにならないぞ」
「いい加減にしなさいよ! こっちが下手に出てりゃ良い気になりやがって」
今にも殴りかかりそうな勢いで、帆希は怒鳴った。そして、明に近付いていく。
「はっ。それは、こちらの台詞だ。良い気になるなよ。家系に似合わず、呪われた女のくせに、代々陰陽師である夜禽家を潰すつもりか?」
「なッ! このッ! クズ野郎ッ!」
帆希は、明の頬を、平手打ちする。バチン。店内に、音が響いた。
「女が男に手を上げるとはな。全く、親の顔が見てみたい。ああ、もういないのだったな」
冷たい目で帆希を見下し、冷たい声で挑発する。
「ゆるさないッ! ゆるさないぞ、狐ヶ崎明! お前なんか! お前なんかッ!」
帆希は拳を振り上げ、明を殴ろうとした。明が、薄笑いを浮かべていることに気付かずに。
「ストーップ。ダメだヨ。傷害罪になっちゃうカラ」
四象のオーナー、紗絡八卦が、帆希の腕を掴んで止める。いつの間にか背後に来ていた八卦に、帆希は驚き、手の力を抜いた。振り上げた腕を下ろし、キッと明を睨む。
そんな帆希の前に出て、八卦は、口を開く。
「ハジメマシテ。宵クンのオニイチャン。ここのオーナーの紗絡八卦だヨ」
「汚くて怪しい店だ。狐ヶ崎には、あまりにも不釣り合いだな」
自らは名乗りもせずに、眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように宣う明。再びの静寂。四象を愛する皆は、無言のまま、怒りを覚えた。
「え? なんですか? このカスは?」
丹村参が、口火を切る。その指先は、明に向けられていた。心の中で、中指を立てていることは、明白だ。
「空也、この人、きらーい」
真咲空也が、参の後に続く。
「凄いクズだね~」
宝来潔彦が、笑顔で後を追う。何人かは、お前もクズだろ、と内心思ったが、今は共闘することにした。
「本当に宵くんの兄なのか? なんと言うか、失礼千万だな」
真咲博巳は、脳内で、明の顔に「無礼者」と筆で記す。
「俺も同感」と、壬生寿介。
「宵チャンから、ちょいと聞いとったが、最悪じゃの!」と、リリアン。
「なんだ? 有象無象どもが。全く、喧しい」
明は、皆から向けられる怒りを意に介さず、最悪を重ねた。
八卦が、ヒールで、明に当たるか当たらないかのところでドアを蹴る。
「酒の飲み方も分かんない赤ちゃんは、早く名家におかえり〜」
「塩撒け、塩!」と、小宮山銀志朗が野次を飛ばした。それを受けて、無言で影海廻月が塩の入った袋を構える。
「とにかく、ここが狐ヶ崎に相応しくないことだけは理解出来た。宵には、躾が必要だということも。では、失礼する」
本当に失礼だな。と、皆が思った。
狐ヶ崎明は、踵を返して去って行く。
「なにあれ。躾って……宵くん、なにされるの……?」
空也が、心配そうにした。
「それは……宵くん、詳しく教えてくれないから……」
帆希が、苦し気に答える。
「今日も、兄に叱られました」「また、兄を怒らせてしまいました」「家族が、私の将来が心配だと言っていました」
以前、宵が、なんてことないように言っていたことを思い出す。
いつもの笑顔で、本当は、どんな感情だったの? 帆希は自問する。
「ハイハイ。ご家庭の問題には、首突っ込まないようにネ。宵クンなら、大丈夫。きっと、さらっと躱すヨ」
その言葉を皮切りに、バーに集まった各々は、いつもみたいに過ごすことにした。
二度と来るなよ。と思った後で。