創作企画「冥冥の澱」
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退屈で仕方がない会合。その人々の中に、鮮烈な赤がいた。名前は確か、夜禽帆希。
夜禽家と狐ヶ崎家は、代々陰陽師の家系で、古くから親交がある。今日は、狐ヶ崎の家で、大人たちが、何やら話し合いをしていて。でも、幼い子供にとって、それはそれは、つまらなくて。だから、少年は、少女に声をかけた。
「はじめまして、わたし、狐ヶ崎宵と申します。夜禽帆希さん、ですよね?」
「はい、そうです」
「よかったら、すこしお庭で話しませんか?」
「うん…………!」
会合をこっそりと抜け出した子供たちは、中庭へと向かう。その庭では、数匹の狐が自由に過ごしていた。
親子で仲良く寝そべっている狐や、ぴょんと飛び跳ねている狐、地面を前足で掘っている狐。など。
「かわいいね」
「でしょう? わたしは、キツネを見るのがすきです」
「そうなんだ」
「じゆうなかんじが、いいでしょう?」
少年は、片手で狐を作り、コン、と鳴いた。
「コン!」
少女は、彼の真似をして、狐を作る。
宵は、嬉しくなって、「コンコン!」と両手で狐を作って言った。
ふたりは、狐たちを眺めながら、他愛のない話をする。好きな色は? とか、好きな食べ物は? とか。そんな、ありふれた話。しかし、帆希は、宵の返事が妙に歯切れが悪いのに気付いた。
「わたし、すきなものって、よくわからなくて。キツネはすきですが」
顔から笑みを消して、少年は告白する。
「……それなら、いっぱい色んなもの見よう! いっぱい、あそぼうよ!」
「…………はい! わたし、そうします」
一匹の狐が、ふたりの方を向き、「コン」と鳴いた。
その後、宵は、帆希が好む、様々な和の習い事を共にするようになる。
そんな、ひとつ年下の宵を微笑ましく見守ってきた帆希であったが。
月日は流れて、ふたりは“大人”になった。
「帆希さん、明日、登山に行きません?」
『うん?! 明日!?』
宵は、年を重ねるにつれ、行動力が上がっている。日々、新しいことに挑戦している。
帆希は、若干心配しつつも、それに付き合ったり、楽しそうだから、乗ってみたり、あまりにも急なものだから、適宜断ったりした。
端から見た狐ヶ崎宵は、“自由奔放”なのだが、夜禽帆希は知っている。長きに渡る、彼の感じている“空虚さ”を。
いつか、宵くんが、からからと笑う日が来ますように。
夜禽家と狐ヶ崎家は、代々陰陽師の家系で、古くから親交がある。今日は、狐ヶ崎の家で、大人たちが、何やら話し合いをしていて。でも、幼い子供にとって、それはそれは、つまらなくて。だから、少年は、少女に声をかけた。
「はじめまして、わたし、狐ヶ崎宵と申します。夜禽帆希さん、ですよね?」
「はい、そうです」
「よかったら、すこしお庭で話しませんか?」
「うん…………!」
会合をこっそりと抜け出した子供たちは、中庭へと向かう。その庭では、数匹の狐が自由に過ごしていた。
親子で仲良く寝そべっている狐や、ぴょんと飛び跳ねている狐、地面を前足で掘っている狐。など。
「かわいいね」
「でしょう? わたしは、キツネを見るのがすきです」
「そうなんだ」
「じゆうなかんじが、いいでしょう?」
少年は、片手で狐を作り、コン、と鳴いた。
「コン!」
少女は、彼の真似をして、狐を作る。
宵は、嬉しくなって、「コンコン!」と両手で狐を作って言った。
ふたりは、狐たちを眺めながら、他愛のない話をする。好きな色は? とか、好きな食べ物は? とか。そんな、ありふれた話。しかし、帆希は、宵の返事が妙に歯切れが悪いのに気付いた。
「わたし、すきなものって、よくわからなくて。キツネはすきですが」
顔から笑みを消して、少年は告白する。
「……それなら、いっぱい色んなもの見よう! いっぱい、あそぼうよ!」
「…………はい! わたし、そうします」
一匹の狐が、ふたりの方を向き、「コン」と鳴いた。
その後、宵は、帆希が好む、様々な和の習い事を共にするようになる。
そんな、ひとつ年下の宵を微笑ましく見守ってきた帆希であったが。
月日は流れて、ふたりは“大人”になった。
「帆希さん、明日、登山に行きません?」
『うん?! 明日!?』
宵は、年を重ねるにつれ、行動力が上がっている。日々、新しいことに挑戦している。
帆希は、若干心配しつつも、それに付き合ったり、楽しそうだから、乗ってみたり、あまりにも急なものだから、適宜断ったりした。
端から見た狐ヶ崎宵は、“自由奔放”なのだが、夜禽帆希は知っている。長きに渡る、彼の感じている“空虚さ”を。
いつか、宵くんが、からからと笑う日が来ますように。