創作企画「冥冥の澱」
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「コンばんはぁ~」
ひょい、と顔を出した狐ヶ崎宵が、片手で狐を作りながら、挨拶してきた。
「今夜は、皆既月食ですね」
そうだ。月がみるみる欠けていく。
「コン。突然ですが、私って、つまらない人間なんですよ」
本当に突然、狐ヶ崎は、言葉をこぼした。
「生き甲斐なんて、ないんです。好きとか、愛とか、よく分かりません。信念もないです」
陰陽師の家に生まれたから、それをしているだけ。自分がどうあるべきか分からないから、哲学をしているだけ。彼は、そう語る。
「あなたのことは、好きですけど。でも、これが何なのかは、分かりません」
みんな、好きなものがあるんだって。みんな、誰かのかけがえのない存在なんだって。みんな、譲れないものを持ってるんだって。みんな、貫いているものがあるんだって。
みんな。みんな、みんな。みぃんな。
「ズルいですよ、みんな。私は、どうして欠けているんですか?」
その問いに、どう答えるべきなのか。
少し迷っているうちに、狐ヶ崎は、更に口を開いた。
「あーあ。私は何を言ってるんでしょうね? あなたに、甘えているんですかね? 申し訳ないです」
彼は、目に見えて落ち込んでいる。珍しいことだ。
日々、飄々と生きているのに。上手く人生をやっているのに。何かが足りない。渇いている。
「…………私のこと、助けてくださいよ」
ぼそり、と聴こえるか聴こえないかくらいの小さな悲鳴。
狐ヶ崎は、「コン」と咳払いをして。
「今夜のことは、全部忘れてください。お願いします」
忘れた方がいいのだろうか?
しかし、あなたは。
「忘れない」ことにした。
「……案外、意地悪なんですね」
困ったような、いつもの笑み。彼は、手遊びの狐を作り、「コン」と呟いた。
ひょい、と顔を出した狐ヶ崎宵が、片手で狐を作りながら、挨拶してきた。
「今夜は、皆既月食ですね」
そうだ。月がみるみる欠けていく。
「コン。突然ですが、私って、つまらない人間なんですよ」
本当に突然、狐ヶ崎は、言葉をこぼした。
「生き甲斐なんて、ないんです。好きとか、愛とか、よく分かりません。信念もないです」
陰陽師の家に生まれたから、それをしているだけ。自分がどうあるべきか分からないから、哲学をしているだけ。彼は、そう語る。
「あなたのことは、好きですけど。でも、これが何なのかは、分かりません」
みんな、好きなものがあるんだって。みんな、誰かのかけがえのない存在なんだって。みんな、譲れないものを持ってるんだって。みんな、貫いているものがあるんだって。
みんな。みんな、みんな。みぃんな。
「ズルいですよ、みんな。私は、どうして欠けているんですか?」
その問いに、どう答えるべきなのか。
少し迷っているうちに、狐ヶ崎は、更に口を開いた。
「あーあ。私は何を言ってるんでしょうね? あなたに、甘えているんですかね? 申し訳ないです」
彼は、目に見えて落ち込んでいる。珍しいことだ。
日々、飄々と生きているのに。上手く人生をやっているのに。何かが足りない。渇いている。
「…………私のこと、助けてくださいよ」
ぼそり、と聴こえるか聴こえないかくらいの小さな悲鳴。
狐ヶ崎は、「コン」と咳払いをして。
「今夜のことは、全部忘れてください。お願いします」
忘れた方がいいのだろうか?
しかし、あなたは。
「忘れない」ことにした。
「……案外、意地悪なんですね」
困ったような、いつもの笑み。彼は、手遊びの狐を作り、「コン」と呟いた。