アルヴィスでの私の役割は、アルベリヒド機関研究主任、遠見千鶴さんの助手である。共にフェストゥムやファフナー搭乗者の肉体変化などを研究している。
　平時では、遠見医院で事務員をさせてもらっており、やはり千鶴さんと共にいた。
　彼女の娘、真矢ちゃんがファフナーのパイロットとしての適性が高いということが発覚した時は、私もとても動揺することになる。
　弓子ちゃんが真矢ちゃんのデータを改竄したのは、妹を想ってのことだろう。無理もない。
　その後、真矢ちゃん自身の意思により、マークジーベンに搭乗することが決まった。
　彼女は変性意識により、機械的な冷静沈着さを発揮し、命中率の非常に高い狙撃手となる。
　私は、鈴村神社で竜宮島の平和を、一所懸命に祈った。
　どうか、パイロットの皆が無事に帰りますように。島民が誰も犠牲になりませんように。どうか、神様、お願いします。
　巫女をしている立上芹ちゃんから、お守りも渡してもらった。そのお守りを、私はことあるごとに握り締めることになる。ファフナーの搭乗者が同化現象に襲われた時や、戦局が良くない時、鈴村神社のお守りをぎゅっと握り締めた。
　平和という文化の継承。それを守るための戦い。ああ、この世界はなんて、残酷なものなのだろう。
　私は、自身のメンタルケアを行わなければならないと思っている。そうしなくては、他人に迷惑をかけてしまうから。特に、千鶴さんの邪魔になるのは嫌だ。ただでさえ、子供たちの肉体変化を親元に伝えるという苦しい役目を背負っているのだから、これ以上負担をかけたくはない。
　幸いにも、私の精神は、お守りを握ればリラックスする、という条件付けに成功しており、このままいけば大丈夫だろう。千鶴さんの手を煩わせることにはなるまい。
　けれど、やはり、お墓に入る人は、度々出た。その度に、私の精神は揺らぐのだ。
　こんなことではいけない。私は、大人として子供たちを支えるという使命があるのだから。
　お守りを握り締め、「私は大丈夫」と自分に言い聞かせた。