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いおりに、この稼業での、パソコンを使った騙しのイロハを教えたのは、俺である。
「分かったか? いおりィ」
「はい、分かりました」
いおりは、優秀な生徒だった。だから、奴には、俺に教えられることを全て教えてやった。
そして、幾年月が流れ、いおりは組から事務所の重要な職を任されるようにまでなる。
俺も鼻が高いってもんだ。
弟分である、いおりのことは、文字通り弟のように可愛がっている。頭を撫でてやったりはしないが、特別な親愛を抱いているのは確かだ。
その可愛い弟分が、どこぞのバンドのボーカルに入れ揚げているらしい。しかも、兄妹揃って。
情報源は、いおりの妹の、しおりちゃんである。
俺は、なんだか嫌な気分になった。急に、顔面に泥を投げられたかのような。しかも、その泥は、拭っても拭ってもとれない。さらに、その泥は心臓の辺りにまで浸透し、内臓を冷やしていく。
ああ、そうか。俺は、いおりを弟みたいになんて思ってなかったんだ。いや、弟みたいに親愛を寄せていたのは事実だ。それは間違いじゃない。そこは、履き違えてはならない。
ただ、それとは別の感情も持っていたという訳だ。恐ろしいほどの執着のような、恋慕の情を。俺は無自覚なままに、いおりに対して、そんなものを抱えていた。
「クソが…………!」
思わず、悪態をつきながら、自室の壁を殴ってしまう。
あの、親に恵まれなかった兄妹を、ただ、慈しむだけの自分でいたかった。しかし、現実は残酷で。カミサマってのがいるとしたら、相当な悪趣味だ。
いおりに、兄のように慕われている自分。それを手放すなんて、俺には出来そうもない。
それに、告白なんてしようものなら、パワーハラスメントになりかねないから、俺は何も言えない。言わない。
いおりが、俺を好きだと告白してきてくれたらいいのに、と恋する乙女みたいなことを思った。
さあさあ、悪趣味なカミサマよ、この恋をどうしてくれるつもりなんだ?
「分かったか? いおりィ」
「はい、分かりました」
いおりは、優秀な生徒だった。だから、奴には、俺に教えられることを全て教えてやった。
そして、幾年月が流れ、いおりは組から事務所の重要な職を任されるようにまでなる。
俺も鼻が高いってもんだ。
弟分である、いおりのことは、文字通り弟のように可愛がっている。頭を撫でてやったりはしないが、特別な親愛を抱いているのは確かだ。
その可愛い弟分が、どこぞのバンドのボーカルに入れ揚げているらしい。しかも、兄妹揃って。
情報源は、いおりの妹の、しおりちゃんである。
俺は、なんだか嫌な気分になった。急に、顔面に泥を投げられたかのような。しかも、その泥は、拭っても拭ってもとれない。さらに、その泥は心臓の辺りにまで浸透し、内臓を冷やしていく。
ああ、そうか。俺は、いおりを弟みたいになんて思ってなかったんだ。いや、弟みたいに親愛を寄せていたのは事実だ。それは間違いじゃない。そこは、履き違えてはならない。
ただ、それとは別の感情も持っていたという訳だ。恐ろしいほどの執着のような、恋慕の情を。俺は無自覚なままに、いおりに対して、そんなものを抱えていた。
「クソが…………!」
思わず、悪態をつきながら、自室の壁を殴ってしまう。
あの、親に恵まれなかった兄妹を、ただ、慈しむだけの自分でいたかった。しかし、現実は残酷で。カミサマってのがいるとしたら、相当な悪趣味だ。
いおりに、兄のように慕われている自分。それを手放すなんて、俺には出来そうもない。
それに、告白なんてしようものなら、パワーハラスメントになりかねないから、俺は何も言えない。言わない。
いおりが、俺を好きだと告白してきてくれたらいいのに、と恋する乙女みたいなことを思った。
さあさあ、悪趣味なカミサマよ、この恋をどうしてくれるつもりなんだ?