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ひとり暮らしの青年の家に、ボーカロイドのカイトがやって来た。
「はじめまして。よろしくお願いしますね、マスター」
『よろしく』
マスターはスマートフォンに文字を打ち、機械音声を出力する。
カイトは、マスターが何らかの理由で声が出せないのだと察した。
「マスター、まずは俺は何をしましょうか?」
『僕の作った曲を歌って、カイト』
「分かりました、マスター」
カイトのマスターの作った歌は、“叫び”だった。声を出せない彼の“叫び”は、悲しみと苦しみに満ちたもので。ハイトーンの長い長い“叫び”は、ボーカロイドでなくては歌唱するのが難しい歌であった。
それを見事に歌い上げるカイトに、青年は感動する。理想の歌声を聴けたことに、静かに涙した。
「マスター?」
『嬉しい』
『僕の歌を歌ってもらえて』
『本当にありがとう』
青年は、次々とスマホで言葉を紡ぐ。
カイトが家に来てから、青年に出来ることが増えた。彼は今まで、なるべく外へ出ないように生きてきたのだ。通販以外での買い物を避けていたのだが、実店舗へ行くようになり、外出先で人とぶつかった時には、代わりにカイトにすぐ謝ってもらえる。
カイトと共に過ごし、季節は巡る。夏から、秋へ。秋から、冬へと。
そうして同じ時を過ごすうちに、ふたりの仲は深まっていく。
カイトと共に過ごし、時は流れる。1年から、2年。2年から、3年。
そうして絆を深めていくにつれて、マスターとカイトは、以心伝心、お互いの考えていることが分かるようになっていった。
『カイト』
「どうかしましたか? マスター」
『僕が声を出せない理由を聞いてほしくて』
「もちろん聞きますよ。マスターのこと、知りたいです」
『実は僕は』
彼が話す内容は、このようなものだった。高校生の頃にいじめに遭ったことがきっかけで、失声症を患い、声が出せなくなったのだと言う。それ以前の彼は、歌うことが大好きだったこと。暇があれば、作詞、作曲をしては自分で歌っていたこと。
カイトは静かにマスターの過去を聞いた。そして、これからもマスターのために歌うと誓いを口にし、末長く一緒にいることを願う。それは、祈りのように。
「はじめまして。よろしくお願いしますね、マスター」
『よろしく』
マスターはスマートフォンに文字を打ち、機械音声を出力する。
カイトは、マスターが何らかの理由で声が出せないのだと察した。
「マスター、まずは俺は何をしましょうか?」
『僕の作った曲を歌って、カイト』
「分かりました、マスター」
カイトのマスターの作った歌は、“叫び”だった。声を出せない彼の“叫び”は、悲しみと苦しみに満ちたもので。ハイトーンの長い長い“叫び”は、ボーカロイドでなくては歌唱するのが難しい歌であった。
それを見事に歌い上げるカイトに、青年は感動する。理想の歌声を聴けたことに、静かに涙した。
「マスター?」
『嬉しい』
『僕の歌を歌ってもらえて』
『本当にありがとう』
青年は、次々とスマホで言葉を紡ぐ。
カイトが家に来てから、青年に出来ることが増えた。彼は今まで、なるべく外へ出ないように生きてきたのだ。通販以外での買い物を避けていたのだが、実店舗へ行くようになり、外出先で人とぶつかった時には、代わりにカイトにすぐ謝ってもらえる。
カイトと共に過ごし、季節は巡る。夏から、秋へ。秋から、冬へと。
そうして同じ時を過ごすうちに、ふたりの仲は深まっていく。
カイトと共に過ごし、時は流れる。1年から、2年。2年から、3年。
そうして絆を深めていくにつれて、マスターとカイトは、以心伝心、お互いの考えていることが分かるようになっていった。
『カイト』
「どうかしましたか? マスター」
『僕が声を出せない理由を聞いてほしくて』
「もちろん聞きますよ。マスターのこと、知りたいです」
『実は僕は』
彼が話す内容は、このようなものだった。高校生の頃にいじめに遭ったことがきっかけで、失声症を患い、声が出せなくなったのだと言う。それ以前の彼は、歌うことが大好きだったこと。暇があれば、作詞、作曲をしては自分で歌っていたこと。
カイトは静かにマスターの過去を聞いた。そして、これからもマスターのために歌うと誓いを口にし、末長く一緒にいることを願う。それは、祈りのように。