ハンターさんは、この村の英雄だ。
　私は、薬師をしているので、度々ハンターさんと会う機会があるのだが、人柄も良く、私の話を興味深そうに聞いてくれる。
　強大な敵であるモンスターを、ひとりと、お供のアイルーと一緒に見事に狩ってくれるハンターさんのおかげで、村は活気にあふれた。
　ある日、薬の材料になる物をハンターさんが売りに来てくれた時に、「モンスターが怖くはないのですか？」と訊いたことがある。
　すると、「初めて闘う相手には恐怖を抱くこともあるが、動きを見切れるようになれば恐れは消える」と、頼もしい答えが返ってきた。なんて凛々しいのだろう。
　実は私は、ハンターさんに恋をしている。あの方との交流は、何ものにも代えがたい大切な時間だと思う。
　毎朝、目が覚めてすることは、ハンターさんが今日も無事であるようにと願うこと。毎晩、寝る前に想うことは、ハンターさんが恋しいという気持ち。
　時には、夢にも登場することさえある。寝ても覚めても、あの人を想う。
　武器を携えた勇ましいあなたが好き。たくさんの料理を頬張る元気なあなたが好き。私と話してくれる優しいあなたが好き。
　この想いを、いつか伝えたい。しかし、私の口は思うように動いてくれない。
　そんな日々が続いている。
　ある日、ハンターさんに私の名前を呼ばれて振り返ると、「ありがとう」と、お礼を言われた。
　私が、よっぽど不思議そうな顔をしていたのだろう。ハンターさんは微笑しながら、私が調合した薬のおかげで難を逃れたのだと説明してくれる。

「どう、いたしまして。お、お役に立てたのなら、幸いです」

　つい、緊張してしまう。頬が熱くなるのを感じる。
　私も、ハンターさんの持つような勇気を出して、自分の気持ちを伝えたい。そう思って、私は貝のように閉じた口をなんとか開き、言葉を紡いだ。

「いつも、お疲れ様です。あの、私はあなたのことをとても敬愛して…………いや、あの、愛しています…………」