あなたの、美しい姿が好き。立ち居振る舞いが好き。その歌声が好き。踊りが好き。
　彼女、木場真奈美さんは、カッコいいアイドルである。現在、私が唯一推しているアイドルだ。
　まず、最初に好きなったのは、彼女の顔。キリッとした眉毛、睫毛の長い力強い瞳。不敵に笑う唇。全てが私の好みだった。
　それに加えて、彼女は歌もダンスも上手くて、中身も素敵な、完璧な人である。
　欠けたパズルピースのない人。そんな印象がある。
　真奈美さんの存在に勇気づけられて、私は、憧れの彼女をロールモデルとして、自分磨きをするようになった。
　メイクもスタイリングも、精一杯がんばる。
自分を使って、推しているあなたを表現するのは、とても楽しい。
　最近では、「どこからどう見ても木場真奈美推し」だと言われるまでに至った。
　そして、ボイストレーニングも習ってみることにする。
　腹筋を鍛えながら、丹田を意識し、腹式呼吸を身に付けた。発声出来る音域を増やすように練習もする。
　そうして、私は、仮歌やコーラスで歌の仕事が出来るようになった。
　日々、一生懸命仕事に励んでいると、なんと、木場真奈美さんの事務所から声がかかり、彼女の曲でコーラスとして参加させてもらえることに。
　私は、内心で踊り狂った。
　ずっと、ずっと憧れてきたアイドルと一緒に仕事が出来る！　幸せ過ぎて、少し怖いくらいだ。
　収録日まで、私は指折り数えて過ごす。
　そして、とうとう、その日がやってきた。
　私は、かなり緊張しながら、真奈美さんに挨拶しに行く。

「おはようございます！　本日は、よろしくお願いします！　木場さん！」

　張り切って声を大きくし過ぎた気がする。不快に思われていないか、不安になる。

「おはよう。今日は、よろしく頼むよ。君は、素敵な声だね。私と共に、良い作品に仕上げようじゃないか」
「はい！　がんばります！」

　真奈美さんに褒められて、共に歌を作り上げられて、今日は、なんて良い日なんだろう。
　大好きな真奈美さんを引き立たせるように、私は精一杯歌おう。彼女への敬愛を込めて。