子供の頃に、仮面ライダーに助けられたことがある。その人は、怪人から私を守ってくれた。
　崩れた建物の瓦礫をはね除け、怪人をキックでやっつけて、私を安全なところまで運んでくれた、顔も名前も知らぬ人。
　大人になってからも、私は、仮面ライダーという存在に憧れ続けている。
　くじけそうになった時は、彼のことを思い出して、勇気を奮い立たせることにした。
　私の職業は、写真家である。出来ることなら、彼を被写体としたい。彼の格好いい姿を切り取り、世間の人に伝えたい。
　そう思って幾年月が流れた。
　ある日、私が街を歩いていると、前方から複数の悲鳴が上がり、人々がこちらへ逃げて来る。
　私は、逃げて来た人たちからは、逆方向へと走り出した。
　もしかして。もしかしたら、彼にまた会えるのではないか？　という期待をして、私は駆ける。
　そこには、怪人と闘っている彼がいた。
　パンチやキックを繰り出し、果敢に敵と闘う彼を、私は一眼レフを手に、写真に収めた。
　彼の邪魔にならないように、望遠レンズで離れたところから、写真を撮る。力強い舞踏のようにも見える彼をカメラで追う私。
　憧れの人を写せる喜びに、私は打ち震えた。
　今でも闘い続けている彼に、私は感動すら覚える。
　彼に仲間はいるのだろうか？　それとも、孤独な闘いを続けているのだろうか？　今の私には分からないが、彼に取材を申し込んでみたいと考えた。
　やがて怪人を倒した彼は、仮面ライダーとしての姿から、普通の人間の格好へと姿を変える。
　変身解除、というのだろうか。
　中身は、ごく普通の人のように見えた。
　パシャリ。一枚だけ、その姿も写真に撮る。
　これは非公開にするが、私のお守りとして肌身離さず持ち歩かせてもらおう。
　私は、撮ったものを社に持ち帰り、Web雑誌で彼の特集を組むことを、編集長に打診する。
　編集長は、少し迷ったようだが、最終的には了承してくれた。
　私は、早速ライターと協力して、レイアウトを決めていく。
『仮面のヒーロー！　その謎に迫る』という記事を完成させて、私はその記事を公開した。
　彼の活躍に勇気付けられる人が増えますように、と祈りながら。