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2025年7月5日によせて。
◆◆◆
「渉さん、明日、日本が滅ぶそうですよ」
「ええ。わくわくしますね、ナナ」
「あなたが楽しそうで何よりです」
尾ひれがついた予言によると、大地震が起きるとか津波が来るとかで、この国はおしまいになるらしい。
都市伝説解体センターの調査員であるナナと呼ばれる男は、センター長の廻屋渉とふたりきりで話している。
「ということは、今夜が最後の晩餐なのでしょうか?」
「そうですね。ナナは、何を食べたいですか?」
「イワナの塩焼きがいいです」
ナナは、迷いなく答えた。
「渉さんは?」
「マーガリントーストです」
「お互い、自分の好物ですね」
「そんなものでしょう」
ふ、とふたりは笑う。
穏やかな終末前夜。
「それにしても、予言ですか……」
「未来を予言していたあなたには、やはり思うところがおありで?」
「まあ、そうですね。予言が嘘だったら、その嘘をつくことによって、どんな得があるのか? 気になります」
ただ、何者かになりたかっただけなのか? それとも?
「ナナ。あなたが本物だったとしたら、破滅の予言を公表しますか?」
「……しません。きっと、その方が静かですから」
「あなたらしい答えですね。確かに、公表したら面倒事に巻き込まれるでしょうから」
例えば、“神”として担がれたり。
廻屋は、その言葉は呑み込んだ。
「明日、僕が死ぬのなら、あなたの側にいたいです」
片想いの相手に、小さく告げるナナ。
「許していただけますか?」
「ええ。もちろん。あなたは、私が解体した人ですからね。最期まで一緒にいますよ」
「ありがとうございます」
ナナは、頭を下げた。
「僕は、渉さんのことを愛していますから。あなたと共に在ることだけが、僕の幸せなんです」
「そうですか。あの村を出たことに後悔はないと?」
「ありません。あそこを終わりにしたからこそ、僕は生まれたのです」
廻屋は、黙って微笑む。
そして、ナナが差し出した手を取った。
「どうか、置いて行かないでくださいね?」
「はい。分かっていますよ、ナナ。ところで」
「はい」
「今回の予言の出所ですが、最初は予知でも何でもなかったようですね」
「そうですね。ただの夢が予知夢になり、大地震の予言になり、日本滅亡までいき、現在では、世界滅亡まで拡大されたみたいです」
スマホでSNSを見ると、トレンドには“世界滅亡”とある。
たったひとりが見た夢から、ずいぶんと大きなことになったものだ。
「そろそろ時間ですね。さようなら、渉さん」
「さようなら、ナナ。また明日」
ふたりは、別れる。
ひとりになったナナは、明日も廻屋渉に会いたいと思いながら眠りについた。
◆◆◆
「渉さん、明日、日本が滅ぶそうですよ」
「ええ。わくわくしますね、ナナ」
「あなたが楽しそうで何よりです」
尾ひれがついた予言によると、大地震が起きるとか津波が来るとかで、この国はおしまいになるらしい。
都市伝説解体センターの調査員であるナナと呼ばれる男は、センター長の廻屋渉とふたりきりで話している。
「ということは、今夜が最後の晩餐なのでしょうか?」
「そうですね。ナナは、何を食べたいですか?」
「イワナの塩焼きがいいです」
ナナは、迷いなく答えた。
「渉さんは?」
「マーガリントーストです」
「お互い、自分の好物ですね」
「そんなものでしょう」
ふ、とふたりは笑う。
穏やかな終末前夜。
「それにしても、予言ですか……」
「未来を予言していたあなたには、やはり思うところがおありで?」
「まあ、そうですね。予言が嘘だったら、その嘘をつくことによって、どんな得があるのか? 気になります」
ただ、何者かになりたかっただけなのか? それとも?
「ナナ。あなたが本物だったとしたら、破滅の予言を公表しますか?」
「……しません。きっと、その方が静かですから」
「あなたらしい答えですね。確かに、公表したら面倒事に巻き込まれるでしょうから」
例えば、“神”として担がれたり。
廻屋は、その言葉は呑み込んだ。
「明日、僕が死ぬのなら、あなたの側にいたいです」
片想いの相手に、小さく告げるナナ。
「許していただけますか?」
「ええ。もちろん。あなたは、私が解体した人ですからね。最期まで一緒にいますよ」
「ありがとうございます」
ナナは、頭を下げた。
「僕は、渉さんのことを愛していますから。あなたと共に在ることだけが、僕の幸せなんです」
「そうですか。あの村を出たことに後悔はないと?」
「ありません。あそこを終わりにしたからこそ、僕は生まれたのです」
廻屋は、黙って微笑む。
そして、ナナが差し出した手を取った。
「どうか、置いて行かないでくださいね?」
「はい。分かっていますよ、ナナ。ところで」
「はい」
「今回の予言の出所ですが、最初は予知でも何でもなかったようですね」
「そうですね。ただの夢が予知夢になり、大地震の予言になり、日本滅亡までいき、現在では、世界滅亡まで拡大されたみたいです」
スマホでSNSを見ると、トレンドには“世界滅亡”とある。
たったひとりが見た夢から、ずいぶんと大きなことになったものだ。
「そろそろ時間ですね。さようなら、渉さん」
「さようなら、ナナ。また明日」
ふたりは、別れる。
ひとりになったナナは、明日も廻屋渉に会いたいと思いながら眠りについた。
