刀
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ミョウジ家は、代々人ならざるものと戦ってきた一族である。
ミョウジに生まれた者は、人生に一度、必ず世界を救う時がやって来るとまで言われていた。
しかしミョウジナマエは、自分はそんな器ではないと思っている。
大した霊力もなく、呪うことに特化した男。それが、呪い屋のミョウジナマエだ。英雄ではない。
「春だなぁ」
ナマエは、自身が作り上げた景色を自由自在に変えられる庭の桜を見ながら、ぽつりと呟く。
「主、朝食が出来たよ」
歌仙兼定が、ナマエを呼びに来た。
「分かった。今行く」
歌仙が用意した料理は、旬の食材を取り入れた風流なもので。あまり自分を情緒的ではないと思っているナマエでも感心する出来映えだった。
「いただきます」
ナマエがそう言うと、刀剣男士たちも朝食を食べ始める。
その後。審神者は、刀たちに本日の任務を与えてから、近侍のにっかり青江を連れて桜の木の下に行った。
「なあ」
「なんだい?」
「この偽物の桜を、どう思う?」
「綺麗だね。主の見ている景色が綺麗なんだろうね」
「そうか……」
ナマエは、自分を情緒的ではないと思ってはいるが、その実、世界の美しさも醜さもよく見ている人間なのである。
「俺は、美しい物が好きだ。だから、この景色を作ったんだろうよ」
一呼吸置いて。
「にっかり。ミョウジ露時と話してみようと思う」
「霊に話が通じるかな?」
「期待は出来ないな。でも、やってみるよ」
ナマエは、天切露時を抜刀した。
「ミョウジの露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ち去らでのみ、住み果つるならひならば、いかにもののあはれなからん」
ナマエが唱えると、露時の霊が眼前に現れる。
「露時さんよ、なんでミョウジの者を呪う?」
「…………」
返事はない。
「……ダメか。にっかり」
「ああ」
にっかりが抜刀し、露時に刃を向ける。すると、蜃気楼のように消え去った。
「ミョウジ露時は、なんで歪んじまったんだろうな」
「終わらせたいのかもしれないよ」
「一体何を?」
「“ミョウジの使命”を、ね」
「…………」
その起こりは、平安時代まで遡る。
鬼に呪われたミョウジの一族は、その鬼を討ち倒してから、今日まで続いてきた。
人々を救った。世界を救った。そんなミョウジの者を、誰が救ってくれるのだろう?
ミョウジナマエには、分からない。
ただ、この宿業のようなものから、自分は逃れられないのだと思った。
「にっかり。もうしばらく、俺に付き合ってもらうぞ」
「ああ、もちろん。僕は、君の刀だからね」
柔らかに微笑む近侍は、人のような姿にも関わらず、美しく見える。
ナマエは、まだそのことを素直に喜べなかった。
4月の晴れ空の下。
ひとりと一振りは、隣にいた。
ミョウジに生まれた者は、人生に一度、必ず世界を救う時がやって来るとまで言われていた。
しかしミョウジナマエは、自分はそんな器ではないと思っている。
大した霊力もなく、呪うことに特化した男。それが、呪い屋のミョウジナマエだ。英雄ではない。
「春だなぁ」
ナマエは、自身が作り上げた景色を自由自在に変えられる庭の桜を見ながら、ぽつりと呟く。
「主、朝食が出来たよ」
歌仙兼定が、ナマエを呼びに来た。
「分かった。今行く」
歌仙が用意した料理は、旬の食材を取り入れた風流なもので。あまり自分を情緒的ではないと思っているナマエでも感心する出来映えだった。
「いただきます」
ナマエがそう言うと、刀剣男士たちも朝食を食べ始める。
その後。審神者は、刀たちに本日の任務を与えてから、近侍のにっかり青江を連れて桜の木の下に行った。
「なあ」
「なんだい?」
「この偽物の桜を、どう思う?」
「綺麗だね。主の見ている景色が綺麗なんだろうね」
「そうか……」
ナマエは、自分を情緒的ではないと思ってはいるが、その実、世界の美しさも醜さもよく見ている人間なのである。
「俺は、美しい物が好きだ。だから、この景色を作ったんだろうよ」
一呼吸置いて。
「にっかり。ミョウジ露時と話してみようと思う」
「霊に話が通じるかな?」
「期待は出来ないな。でも、やってみるよ」
ナマエは、天切露時を抜刀した。
「ミョウジの露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ち去らでのみ、住み果つるならひならば、いかにもののあはれなからん」
ナマエが唱えると、露時の霊が眼前に現れる。
「露時さんよ、なんでミョウジの者を呪う?」
「…………」
返事はない。
「……ダメか。にっかり」
「ああ」
にっかりが抜刀し、露時に刃を向ける。すると、蜃気楼のように消え去った。
「ミョウジ露時は、なんで歪んじまったんだろうな」
「終わらせたいのかもしれないよ」
「一体何を?」
「“ミョウジの使命”を、ね」
「…………」
その起こりは、平安時代まで遡る。
鬼に呪われたミョウジの一族は、その鬼を討ち倒してから、今日まで続いてきた。
人々を救った。世界を救った。そんなミョウジの者を、誰が救ってくれるのだろう?
ミョウジナマエには、分からない。
ただ、この宿業のようなものから、自分は逃れられないのだと思った。
「にっかり。もうしばらく、俺に付き合ってもらうぞ」
「ああ、もちろん。僕は、君の刀だからね」
柔らかに微笑む近侍は、人のような姿にも関わらず、美しく見える。
ナマエは、まだそのことを素直に喜べなかった。
4月の晴れ空の下。
ひとりと一振りは、隣にいた。
