アイマス
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糸は薬指どころか五指を絡めとり、容赦なく彼女の元へと引いて行く。
自分に糸は見えないが、それが赤色であることを知っている。これの解き方を、きっと彼女も知らないのだろう。
鞄から、仕事帰りに購入したシンプルな白い封筒と、同じく白い便箋を取り出し、机に向かった。深い考えがあって手紙を書こうと決めた訳ではないが、なんとなく相応しい気がしている。
使い慣れたボールペンで、メモ用紙に何度か彼女の名前を試し書きした。
丁寧に、適正な字数だと聞いた400字ほどで気持ちを綴らねばならない。
◆◆◆
突然の手紙に、君は驚いているだろうか。だとしたら、申し訳ない。しかし、伝えたいことがあるので、良ければ読み進めてほしい。
まず、君には謝らなければならない。
アイドルをしていると、好きな人の恋人にはなれないということを分かっていながら、その人の傍にいるためにアイドルをしている君のことが、僕は少し恐ろしかった。その、ひたむきさが自分に向けられたものであることが、怖かった。
僕は、何もせずに君に好かれていたことが怖かったのかもしれない。
君も時々は僕を、あるいは僕を好きであることを怖がっていたように思う。君は何もなしに僕を好きになったことが、怖かったのではないだろうか?
ここからは更に情けない話になる。
僕は、ずっと君に嫌われるんじゃないかと怯えていた。幻滅され、僕に会いに来た時のような唐突さで、君は去って行くんじゃないかって。そんなことを考えていたことがある。
君に、余計なことをして嫌われたくなかった。
僕は大人として振る舞っていたつもりで、ただの臆病者だったのかもしれないと、近頃はそんな考えが浮かんだ。
要するに、僕は君を好きになるべきじゃないと思っていた。
おとぎ話になぞらえると、魔法使いは王子にはなれないものだから。僕は、その役が気に入っているし、不満はない。
それでも、一度だけ言わせてほしい。まだ、声には出せないけれど。
大好きだよ
いつか、この言葉を自分の口から言って、君からも言ってもらえる日が来ることを願っている。今は、そんな未来を夢見ているよ。
◆◆◆
彼女、佐久間まゆは信仰の対象たるアイドルである。
神聖な彼女の心もまた神聖で、禁足地のように決して侵してはならないものだ。
境界線を越えてはならない。自らの存在意義を失ってしまうから。
しかし、実は僕は悪い魔法使いなので、彼女に600字を超えてしまった手紙を手渡した。
けれど、実は僕は悪い魔法使いにしては小心者なので、これ以上悪いことは出来ないだろう。
2017/12/17
自分に糸は見えないが、それが赤色であることを知っている。これの解き方を、きっと彼女も知らないのだろう。
鞄から、仕事帰りに購入したシンプルな白い封筒と、同じく白い便箋を取り出し、机に向かった。深い考えがあって手紙を書こうと決めた訳ではないが、なんとなく相応しい気がしている。
使い慣れたボールペンで、メモ用紙に何度か彼女の名前を試し書きした。
丁寧に、適正な字数だと聞いた400字ほどで気持ちを綴らねばならない。
◆◆◆
突然の手紙に、君は驚いているだろうか。だとしたら、申し訳ない。しかし、伝えたいことがあるので、良ければ読み進めてほしい。
まず、君には謝らなければならない。
アイドルをしていると、好きな人の恋人にはなれないということを分かっていながら、その人の傍にいるためにアイドルをしている君のことが、僕は少し恐ろしかった。その、ひたむきさが自分に向けられたものであることが、怖かった。
僕は、何もせずに君に好かれていたことが怖かったのかもしれない。
君も時々は僕を、あるいは僕を好きであることを怖がっていたように思う。君は何もなしに僕を好きになったことが、怖かったのではないだろうか?
ここからは更に情けない話になる。
僕は、ずっと君に嫌われるんじゃないかと怯えていた。幻滅され、僕に会いに来た時のような唐突さで、君は去って行くんじゃないかって。そんなことを考えていたことがある。
君に、余計なことをして嫌われたくなかった。
僕は大人として振る舞っていたつもりで、ただの臆病者だったのかもしれないと、近頃はそんな考えが浮かんだ。
要するに、僕は君を好きになるべきじゃないと思っていた。
おとぎ話になぞらえると、魔法使いは王子にはなれないものだから。僕は、その役が気に入っているし、不満はない。
それでも、一度だけ言わせてほしい。まだ、声には出せないけれど。
大好きだよ
いつか、この言葉を自分の口から言って、君からも言ってもらえる日が来ることを願っている。今は、そんな未来を夢見ているよ。
◆◆◆
彼女、佐久間まゆは信仰の対象たるアイドルである。
神聖な彼女の心もまた神聖で、禁足地のように決して侵してはならないものだ。
境界線を越えてはならない。自らの存在意義を失ってしまうから。
しかし、実は僕は悪い魔法使いなので、彼女に600字を超えてしまった手紙を手渡した。
けれど、実は僕は悪い魔法使いにしては小心者なので、これ以上悪いことは出来ないだろう。
2017/12/17