刀
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「偽物なんだよな。霊の心なんてものは」
審神者であるミョウジナマエは苦々しく、そう口にした。
「まるで人間みたいに悲しんでいるが、亡霊は生前の人格を完全に持っている訳じゃない。自身をすり減らしながら彷徨って、怨みだけが残っているんだ。それだけを、反響みたいに繰り返す」
数々の幽霊を見て来た男は、近侍のにっかり青江にのみ、素顔を晒している。
「どうしたんだい? 急に」
「お前なんか、紛い物の癖に……」と、ナマエは、にっかりを睨む。
「随分、淋しいことを言うんだね。そう思うなら、どうして刀を人の姿にしたんだい?」
「上の命令に従っただけだ。刀を振るう者が欲しかったんだろ。人じゃないから死なないしな」
刀剣男士が傷付いて死んでも、依代である刀があれば、また降霊を行えば復活させられる。それまでの記憶は失ってしまうが。
「……お前を紛い物にしたのは、俺だ」
溜め息をつくナマエ。
「俺は、心に美しさなんて無いと思ってる。心は心である時点で醜悪だ。その点、無機物は良い。そんなもの無いからな。だが、お前はどうだ? 無機物としての美を損なわれた、お前たちは」
霊が「人」の「紛い物」で、自分たちは「物」の「紛い物」という訳か。
にっかり青江は理解した。
「僕は自分のことを、どこまで行っても刀だと思っているんだけどな。君には、僕が物には見えないのかい?」
「俺は、お前を人だと思ってしまった。その上で、愛してしまった。お前なんて美しくないのに。お前は人か? 物か? 神か? はっきりさせてくれないか」
「僕は、ただの刀だよ」
「それなら、もう黙らせてもいいだろう?」
「構わないよ」
審神者は、片手をにっかりに近付けた。
「はは…………どうして俺は躊躇っているんだ…………?」
馬鹿みたい。
ナマエは項垂れ、手を下ろす。
「俺は、物のままでいたかった」
「どういう意味かな? 君は人間だろう?」
「俺は、お前たちを顕現させる装置だ。 きっと、代替品だってあるさ。主だなんて、そんな大層なものじゃない。そんな、掛け替えのないものじゃない。俺は、そういうものでいたかった」
「僕は、君の物だよ。そして君は、僕の愛する者だ」
「止してくれ。人間は、物の純粋さに応えてやることなんか出来やしないんだ」
ミョウジナマエは、物を愛しているから、恋に落ち切れないでいた。
審神者であるミョウジナマエは苦々しく、そう口にした。
「まるで人間みたいに悲しんでいるが、亡霊は生前の人格を完全に持っている訳じゃない。自身をすり減らしながら彷徨って、怨みだけが残っているんだ。それだけを、反響みたいに繰り返す」
数々の幽霊を見て来た男は、近侍のにっかり青江にのみ、素顔を晒している。
「どうしたんだい? 急に」
「お前なんか、紛い物の癖に……」と、ナマエは、にっかりを睨む。
「随分、淋しいことを言うんだね。そう思うなら、どうして刀を人の姿にしたんだい?」
「上の命令に従っただけだ。刀を振るう者が欲しかったんだろ。人じゃないから死なないしな」
刀剣男士が傷付いて死んでも、依代である刀があれば、また降霊を行えば復活させられる。それまでの記憶は失ってしまうが。
「……お前を紛い物にしたのは、俺だ」
溜め息をつくナマエ。
「俺は、心に美しさなんて無いと思ってる。心は心である時点で醜悪だ。その点、無機物は良い。そんなもの無いからな。だが、お前はどうだ? 無機物としての美を損なわれた、お前たちは」
霊が「人」の「紛い物」で、自分たちは「物」の「紛い物」という訳か。
にっかり青江は理解した。
「僕は自分のことを、どこまで行っても刀だと思っているんだけどな。君には、僕が物には見えないのかい?」
「俺は、お前を人だと思ってしまった。その上で、愛してしまった。お前なんて美しくないのに。お前は人か? 物か? 神か? はっきりさせてくれないか」
「僕は、ただの刀だよ」
「それなら、もう黙らせてもいいだろう?」
「構わないよ」
審神者は、片手をにっかりに近付けた。
「はは…………どうして俺は躊躇っているんだ…………?」
馬鹿みたい。
ナマエは項垂れ、手を下ろす。
「俺は、物のままでいたかった」
「どういう意味かな? 君は人間だろう?」
「俺は、お前たちを顕現させる装置だ。 きっと、代替品だってあるさ。主だなんて、そんな大層なものじゃない。そんな、掛け替えのないものじゃない。俺は、そういうものでいたかった」
「僕は、君の物だよ。そして君は、僕の愛する者だ」
「止してくれ。人間は、物の純粋さに応えてやることなんか出来やしないんだ」
ミョウジナマエは、物を愛しているから、恋に落ち切れないでいた。