アイマス
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甘くていい匂いに誘われて、卯月巻緒は、家庭科室へと入った。
そこには、ひとりでケーキを作っている少年がいる。
巻緒に気付いた彼は、声をかけてきた。
「君、隣のクラスの転校生だろ? 俺、ミョウジナマエ」
「俺は、卯月巻緒。ケーキ焼いてるの?」
「ああ。これ、サプライズ用だから、家で作るワケにはいかなくて」
父親へプレゼントするため、許可を取って借りているのだと彼は語る。
「“心を込めて”作ったんだ。顔面に叩き付けてやろうと思って」
食べる人を幸せにしようという気がないどころか、そもそも食べさせるつもりもない。
巻緒は、ただ、彼の台詞を聞いていた。
「固めに作ったし、表面に砕いて散らしたアーモンドも結構痛いと思うんだ」
ナマエは、笑っている。
「家、ケーキ屋なんだけど、親父に、“心を込めて”作れなんて言われてさ。そんな曖昧でテキトーなこと言われて、すっげームカついた」
心なんて込めなくても、美味しいものは作れるはずだ。レシピ通りに作ればいいだけ。
喋りながらも、ナマエは、着々とケーキを作り上げていく。
「はー。出来た、出来た」
「お疲れ様」
「サンキュー。じゃあ、そろそろ帰るわ。またなー」
「うん。またね」
ふたりは、家庭科室を後にした。
◆◆◆
翌日の放課後。また家庭科室から、ケーキの香りがする。
巻緒は、再び家庭科室に入った。
そこには、やっぱりナマエがいる。
「よう、卯月」
「ミョウジくん、昨日はどうだった?」
「それが、叩き付ける前に奪われちゃってさぁ。もう凄いスピードでさ。で、食べた後に、美味しいって。バカらしい」
ナマエは、苦笑いした。
「どうして美味しく作ったの?」
「だから、レシピ通りに作れば美味しくなんの」
「でも食べさせる気がなかったなら、味なんてどうでも良かったんじゃ? そのレシピは君が考えたものでしょ?」
「いや、だってケーキってのは美味しくなきゃ…………」
確かに言われてみれば、全て、痛みを与えるための材料にするべきだったと思う。
「やっぱり、ミョウジくんは、ケーキは食べる人を幸せにするものだって思ってるんじゃない? 俺と同じように」
巻緒は、真剣な表情で続ける。
「後ね、あのケーキには心が込めてあったよ」
「……復讐心?」
「ううん。レシピ通りに美味しく作ろうって、心を込めてると思う」
「……はは」
ナマエは、困ったように笑った。
「そうかもな。結局、俺は、ケーキが好きだし、それを幸せのためのものだと思ってるのかもな。卯月、ケーキ食わせてやるよ。出来立てのやつを」
「いいの?!」
「好きなんだろ? 卯月のおかげで、色々気付けたし、そのお礼」
「ありがとう、ミョウジくん」
「いいって。ありがとうな」
ふたりのケーキ好きは、楽しい放課後を過ごす。
いずれ別れの時が来るが、その思い出は宝石のようだった。
そこには、ひとりでケーキを作っている少年がいる。
巻緒に気付いた彼は、声をかけてきた。
「君、隣のクラスの転校生だろ? 俺、ミョウジナマエ」
「俺は、卯月巻緒。ケーキ焼いてるの?」
「ああ。これ、サプライズ用だから、家で作るワケにはいかなくて」
父親へプレゼントするため、許可を取って借りているのだと彼は語る。
「“心を込めて”作ったんだ。顔面に叩き付けてやろうと思って」
食べる人を幸せにしようという気がないどころか、そもそも食べさせるつもりもない。
巻緒は、ただ、彼の台詞を聞いていた。
「固めに作ったし、表面に砕いて散らしたアーモンドも結構痛いと思うんだ」
ナマエは、笑っている。
「家、ケーキ屋なんだけど、親父に、“心を込めて”作れなんて言われてさ。そんな曖昧でテキトーなこと言われて、すっげームカついた」
心なんて込めなくても、美味しいものは作れるはずだ。レシピ通りに作ればいいだけ。
喋りながらも、ナマエは、着々とケーキを作り上げていく。
「はー。出来た、出来た」
「お疲れ様」
「サンキュー。じゃあ、そろそろ帰るわ。またなー」
「うん。またね」
ふたりは、家庭科室を後にした。
◆◆◆
翌日の放課後。また家庭科室から、ケーキの香りがする。
巻緒は、再び家庭科室に入った。
そこには、やっぱりナマエがいる。
「よう、卯月」
「ミョウジくん、昨日はどうだった?」
「それが、叩き付ける前に奪われちゃってさぁ。もう凄いスピードでさ。で、食べた後に、美味しいって。バカらしい」
ナマエは、苦笑いした。
「どうして美味しく作ったの?」
「だから、レシピ通りに作れば美味しくなんの」
「でも食べさせる気がなかったなら、味なんてどうでも良かったんじゃ? そのレシピは君が考えたものでしょ?」
「いや、だってケーキってのは美味しくなきゃ…………」
確かに言われてみれば、全て、痛みを与えるための材料にするべきだったと思う。
「やっぱり、ミョウジくんは、ケーキは食べる人を幸せにするものだって思ってるんじゃない? 俺と同じように」
巻緒は、真剣な表情で続ける。
「後ね、あのケーキには心が込めてあったよ」
「……復讐心?」
「ううん。レシピ通りに美味しく作ろうって、心を込めてると思う」
「……はは」
ナマエは、困ったように笑った。
「そうかもな。結局、俺は、ケーキが好きだし、それを幸せのためのものだと思ってるのかもな。卯月、ケーキ食わせてやるよ。出来立てのやつを」
「いいの?!」
「好きなんだろ? 卯月のおかげで、色々気付けたし、そのお礼」
「ありがとう、ミョウジくん」
「いいって。ありがとうな」
ふたりのケーキ好きは、楽しい放課後を過ごす。
いずれ別れの時が来るが、その思い出は宝石のようだった。