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高級ラウンジ、ウィズダムの存在は前から知っていた。
あたしは、一介のネイリスト。グルメ巡りが趣味。正直、縁がないと思っていた。
でも、富豪ばかりが通うようなネイルサロンにスカウトされて、あたしの稼ぎは何倍もの額になって。手が届くようになったんだ。
◆◆◆
浄が、初めてウィズダムに来たあたしに付いたのは、たまたまなんだろうけど、あたしはそれを運命だと思った。
ウィズダムに来店したら、必ず彼を指名する。
浄は、“レディ”に優しい。だから、あたしにも優しい。
そんなことで喜べていた頃が懐かしいよ。
「…………」
「ナマエさん?」
「あ、ごめん。なんでもない」
いけない。せっかく浄が隣にいるんだから、楽しまないと。
「見て、今日のネイル」
「いつ見ても芸術的だね」
「そうでしょ? スカルプチュアネイルは、あたしの特技だからね」
凶器のように伸ばされた爪は、キラキラと輝いていて。浄には言わないけど、彼をイメージしたカラーとデコレーションがしてある。
SNSにアップした時には、#推し概念ネイルとタグを付けた。
あたし、ミョウジナマエは、浄のガチ恋女だ。どうしようもない。
いいツラの男だな。イケメンを鑑賞出来てラッキーだな。くらいで済ませられてたらよかったのかもね。
「浄ってさ、女の好みとかないの?」
「全てのレディは、俺の好みだよ」
「はっ。よく言うよね」
呆れ混じりに笑った。
「本当のことだから」
いつも、あなたは、薄い膜を張っている。その柔和な仮面を引き剥がしてやりたい。
でも、真実の浄を、あたしは好きでいられるだろうか?
あなたの深層を、あたしは何も知らない。
「あたし、恋をしてるんだ」
「へぇ。それは素敵だね」
「素敵じゃないよ。感情がぐちゃぐちゃで、頭の中はドロドロなんだから」
「恋するレディは、美しいよ」
「…………」
人の気も知らないで。いや、気付かれてるのか? その上で、のらりくらりとかわされてるのかもしれない。
「あたしが恋した男はさ、波間を揺蕩うクラゲみたいな奴でね。なんにも掴ませてくれないんだ」
「それは、悪い男?」
「どうかな。不誠実ってワケじゃないだろうけど。でも、あたしが見てるのは、幻みたいなものかもね」
渇いた笑いが漏れた。浄は、あたしを優しく見つめている。
「ナマエさんの目に映るものも、その男の真実の顔かもしれないよ」
「だといいね」
あたしは、客のひとりに過ぎない。あなたに恋してる女なんて、ごまんといるんだろう。
全員、出し抜いてやりたい。浄の一番になりたい。
せめて、引っ掻き傷くらいつけてやりたいよ。
あたしは、一介のネイリスト。グルメ巡りが趣味。正直、縁がないと思っていた。
でも、富豪ばかりが通うようなネイルサロンにスカウトされて、あたしの稼ぎは何倍もの額になって。手が届くようになったんだ。
◆◆◆
浄が、初めてウィズダムに来たあたしに付いたのは、たまたまなんだろうけど、あたしはそれを運命だと思った。
ウィズダムに来店したら、必ず彼を指名する。
浄は、“レディ”に優しい。だから、あたしにも優しい。
そんなことで喜べていた頃が懐かしいよ。
「…………」
「ナマエさん?」
「あ、ごめん。なんでもない」
いけない。せっかく浄が隣にいるんだから、楽しまないと。
「見て、今日のネイル」
「いつ見ても芸術的だね」
「そうでしょ? スカルプチュアネイルは、あたしの特技だからね」
凶器のように伸ばされた爪は、キラキラと輝いていて。浄には言わないけど、彼をイメージしたカラーとデコレーションがしてある。
SNSにアップした時には、#推し概念ネイルとタグを付けた。
あたし、ミョウジナマエは、浄のガチ恋女だ。どうしようもない。
いいツラの男だな。イケメンを鑑賞出来てラッキーだな。くらいで済ませられてたらよかったのかもね。
「浄ってさ、女の好みとかないの?」
「全てのレディは、俺の好みだよ」
「はっ。よく言うよね」
呆れ混じりに笑った。
「本当のことだから」
いつも、あなたは、薄い膜を張っている。その柔和な仮面を引き剥がしてやりたい。
でも、真実の浄を、あたしは好きでいられるだろうか?
あなたの深層を、あたしは何も知らない。
「あたし、恋をしてるんだ」
「へぇ。それは素敵だね」
「素敵じゃないよ。感情がぐちゃぐちゃで、頭の中はドロドロなんだから」
「恋するレディは、美しいよ」
「…………」
人の気も知らないで。いや、気付かれてるのか? その上で、のらりくらりとかわされてるのかもしれない。
「あたしが恋した男はさ、波間を揺蕩うクラゲみたいな奴でね。なんにも掴ませてくれないんだ」
「それは、悪い男?」
「どうかな。不誠実ってワケじゃないだろうけど。でも、あたしが見てるのは、幻みたいなものかもね」
渇いた笑いが漏れた。浄は、あたしを優しく見つめている。
「ナマエさんの目に映るものも、その男の真実の顔かもしれないよ」
「だといいね」
あたしは、客のひとりに過ぎない。あなたに恋してる女なんて、ごまんといるんだろう。
全員、出し抜いてやりたい。浄の一番になりたい。
せめて、引っ掻き傷くらいつけてやりたいよ。