ポケモン
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寒い寒い、霧深い森の中。わたしは、両親に置き去りにされた。口減らしに、捨てられたのだ。
哀れな捨て子は、野生のポケモンから隠れ、森をさまよい、生き倒れる。見上げた空は灰色で、冷たい。
そこに、その方は現れた。黒くて大きなつばの帽子。銀髪に銀眼。真っ黒なドレスを着た、美しい、あなた。
初めてその方を見た時、魔女だと思った。
「あなたは、魔女さま?」
わたしは、この魔女さまになら、食べられてもいい。しかし、わたしを見下ろす魔女さまは、少し困ったような顔をしている。
「いいや、魔女ではない。わしは、コギト。そなたは?」
「わたしは、ナマエです」
「ふむ。ナマエよ、ひとまず、わしの庵へ来るがよい」
「えっ?」
コギトさまが、わたしの肩に触れ、一迅の風が吹く。次の瞬間、わたしは見知らぬ家屋の中にいた。
やっぱり、魔女なんじゃ…………?
わたしは、力を振り絞り、起き上がって懇願する。
「魔女さま。いえ、コギトさま。わたしを、あなたの弟子にしてくださいませんか?」
「わらわの元で学べることなど、たかが知れておるが、よいかの? 魔術も超能力も身に付かぬぞ」
「構いません。どうか、あなたのお側に置いてください」
わたしは、頭を深々と下げた。
「そんなにかしこまるでない。わらわは、務めを果たすために、日々を生きておるだけじゃ。魔女でもなければ、仙人でもない」
「あなたが、そうおっしゃるなら、そうなのでしょう。でも、わたしにとって、あなたは特別な方なのです」
「では、ナマエよ。そなたを今から、わしの弟子とする。まずは、そうさな、薬草の見分け方でも教えるとするかの」
「はい! よろしくお願いします」
こうして、わたしはコギトさまの元で生活をすることになったのである。
◆◆◆
コギトさまの弟子になってから、10年の月日が流れた。わたしは、今年で20歳になる。
身長は、コギトさまより高くなり、力も付いた。コギトさまを抱えることだって出来る。
一方、コギトさまは、10年前から変わらず、美しい。その様は、やっぱり魔女めいている。
「コギトさま、お茶を淹れました」
「うむ。ありがたく、いただくとするかのう」
コギトさまから教わった、薬草や木の実を混ぜたお茶を出す。
様々な薬の作り方。木の実の育て方。ポケモンに見付からない採取の仕方。本当に、たくさんのことを教わった。
コギトさまと、ふたりで穏やかに過ごす日々を、わたしはとても大切に思っている。
2杯目のお茶を飲んでいると、招かれざる客がやって来た。
「こんにちは」
「げぇっ!」
「いつもながら、酷いですね、ナマエさんは」
イチョウ商会のウォロさんだ。最悪だ。
「あなたが、コギトさまを質問攻めにするのがいけないのです!」
「ジブン、そんなことしてますか?」
「してますよ!」
「いやぁ、好奇心が抑えられないもので」
ウォロさんは、悪びれずに微笑む。
コギトさまの神秘を暴こうとは、なんて不躾なのでしょう!
「コギトさま! この男は出入り禁止にすべきです!」
「ふたり共、騒がしいのう」
「も、申し訳ありません」
「え? ジブンもですか?」
「あなたも、コギトさまに謝りなさい」
「えぇ?」
ウォロさんは、飄々としている。憎たらしい!
「ナマエ、少しウォロと話がある。薪割りを頼めるかのう?」
「はい。お任せください」
わたしは、一度ウォロさんを睨んでから、庵を出て、薪割りに勤しむ。
「キィーっ! ウォロの野郎~!」
斧を振り上げ、勢いよく下ろす。薪割りは、よいイラつきの発散になる。
分かっている。ウォロさんに対する、わたしのイラつきは、嫉妬心だ。
あのふたりの関係が何なのか、わたしは知らないし、知ることはないのだろう。
コギトさまと、わたしは、師匠と弟子だ。それ以上でも、以下でもない。それがいい。
そう思うのに。この嫉妬心は、どこから来るのだろう?
この時のわたしは、まだ知らなかった。ウォロさんよりも、わたしが羨むことになる存在がいることを。コギトさまの“待ち人”のことを。
哀れな捨て子は、野生のポケモンから隠れ、森をさまよい、生き倒れる。見上げた空は灰色で、冷たい。
そこに、その方は現れた。黒くて大きなつばの帽子。銀髪に銀眼。真っ黒なドレスを着た、美しい、あなた。
初めてその方を見た時、魔女だと思った。
「あなたは、魔女さま?」
わたしは、この魔女さまになら、食べられてもいい。しかし、わたしを見下ろす魔女さまは、少し困ったような顔をしている。
「いいや、魔女ではない。わしは、コギト。そなたは?」
「わたしは、ナマエです」
「ふむ。ナマエよ、ひとまず、わしの庵へ来るがよい」
「えっ?」
コギトさまが、わたしの肩に触れ、一迅の風が吹く。次の瞬間、わたしは見知らぬ家屋の中にいた。
やっぱり、魔女なんじゃ…………?
わたしは、力を振り絞り、起き上がって懇願する。
「魔女さま。いえ、コギトさま。わたしを、あなたの弟子にしてくださいませんか?」
「わらわの元で学べることなど、たかが知れておるが、よいかの? 魔術も超能力も身に付かぬぞ」
「構いません。どうか、あなたのお側に置いてください」
わたしは、頭を深々と下げた。
「そんなにかしこまるでない。わらわは、務めを果たすために、日々を生きておるだけじゃ。魔女でもなければ、仙人でもない」
「あなたが、そうおっしゃるなら、そうなのでしょう。でも、わたしにとって、あなたは特別な方なのです」
「では、ナマエよ。そなたを今から、わしの弟子とする。まずは、そうさな、薬草の見分け方でも教えるとするかの」
「はい! よろしくお願いします」
こうして、わたしはコギトさまの元で生活をすることになったのである。
◆◆◆
コギトさまの弟子になってから、10年の月日が流れた。わたしは、今年で20歳になる。
身長は、コギトさまより高くなり、力も付いた。コギトさまを抱えることだって出来る。
一方、コギトさまは、10年前から変わらず、美しい。その様は、やっぱり魔女めいている。
「コギトさま、お茶を淹れました」
「うむ。ありがたく、いただくとするかのう」
コギトさまから教わった、薬草や木の実を混ぜたお茶を出す。
様々な薬の作り方。木の実の育て方。ポケモンに見付からない採取の仕方。本当に、たくさんのことを教わった。
コギトさまと、ふたりで穏やかに過ごす日々を、わたしはとても大切に思っている。
2杯目のお茶を飲んでいると、招かれざる客がやって来た。
「こんにちは」
「げぇっ!」
「いつもながら、酷いですね、ナマエさんは」
イチョウ商会のウォロさんだ。最悪だ。
「あなたが、コギトさまを質問攻めにするのがいけないのです!」
「ジブン、そんなことしてますか?」
「してますよ!」
「いやぁ、好奇心が抑えられないもので」
ウォロさんは、悪びれずに微笑む。
コギトさまの神秘を暴こうとは、なんて不躾なのでしょう!
「コギトさま! この男は出入り禁止にすべきです!」
「ふたり共、騒がしいのう」
「も、申し訳ありません」
「え? ジブンもですか?」
「あなたも、コギトさまに謝りなさい」
「えぇ?」
ウォロさんは、飄々としている。憎たらしい!
「ナマエ、少しウォロと話がある。薪割りを頼めるかのう?」
「はい。お任せください」
わたしは、一度ウォロさんを睨んでから、庵を出て、薪割りに勤しむ。
「キィーっ! ウォロの野郎~!」
斧を振り上げ、勢いよく下ろす。薪割りは、よいイラつきの発散になる。
分かっている。ウォロさんに対する、わたしのイラつきは、嫉妬心だ。
あのふたりの関係が何なのか、わたしは知らないし、知ることはないのだろう。
コギトさまと、わたしは、師匠と弟子だ。それ以上でも、以下でもない。それがいい。
そう思うのに。この嫉妬心は、どこから来るのだろう?
この時のわたしは、まだ知らなかった。ウォロさんよりも、わたしが羨むことになる存在がいることを。コギトさまの“待ち人”のことを。