カリギュラ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
風祭小鳩先輩と付き合うことになった。
リドゥでの、おままごとみたいな恋。
出会ったのは、学校の食堂。彼は千夏さんをナンパしていた。その後、ナンパ先が私になり、二度会えたら、それは運命だと彼は言った。だが、私には、そうは思えない。
「ナマエ、愛してるぜ!」
「私も愛してるよ、小鳩先輩」
そんなことを言い合って、抱き締め合って、キスをする。
ああ、ああ、こんなことは、おままごとだ。
私の正体を知ったら、この恋は終わりを迎えるのだろう。それが、どうしようもなく悲しい。
私が今の私じゃなくても、あなたは愛してくれますか?
疑問を呑み込み、私は小鳩先輩と指を絡ませて手を繋ぐ。温かい。
「今日のデートは、どうする?」
「プラネタリウムに行きたいです」
「オッケー!」
偽物の星。偽物の私にはお似合いだ。
ふたりで見るプラネタリウムの星々は、美しかった。
「クレープでも食べに行く?」
「はい」
私たちは、また手を繋いで、歩き出す。
ところで私は、吟の正体を知っている。現実での肉体は、女性。おそらく、私と同じで、Xジェンダー。
そして、私の現実での肉体の性別は、男性である。それを先輩に告げる勇気がない。
買ったクレープを食べているが、なんだか砂を噛んでいるかのような気分だ。
私は感情が表に出るタイプではないから、小鳩先輩は気付かないだろうけれど。というか、気付いてほしくはないのだけれど。
砂を噛み終えて呑み込んだ後、私たちは別れて、帰路につく。
「キィ」
「どうした? 我がハンシンよ」
「私の正体を知ったら、小鳩先輩は私を嫌うかな?」
「……キィには、分からない。だが、現実に帰るんだろう?」
「そのつもりだよ」
「それなら、遅かれ早かれ正体は知られることになるだろう」
「そうだね。怖いなぁ」
「部長…………」
「小鳩先輩に嫌われたら、嫌だなぁ」
「コバトに嫌われることを恐れているのだな、部長は」
「うん。近頃の私は、それが一番恐ろしいんだ」
「ハンシンよ、そう悲観することもないのではないか? 案外すんなり受け入れてくれるかもしれないぞ」
「だといいんだけどね…………」
キィの楽観は、とてもありがたいが、私には少し難しかった。
だって、小鳩先輩はシスヘテロ男性だと思うから。肉体が男性の私を愛して、なんて言われても困るのではないかと考えてしまう。
眠りにつく前には、余計なことばかり考える。私の悪い癖だ。
パンドラの楽曲、オルターガーデンの一部が、頭の中で繰り返し再生される。
「愛していたことさえ馬鹿らしく思うの」
彼に、そんな風に思われたら、生きていけないかもしれない。
眠る直前まで、小鳩先輩のことを想い、私は意識を手放した。
◆◆◆
そもそもの話。何故、私が小鳩先輩と付き合うことになったのかというと。先輩は、いつもの調子で私にナンパな声をかけて来て、現実で女扱いされたことのなかった私は、なんだか舞い上がってしまって。そして、何度かデートを重ねて、恋人同士になるに至ったのだ。
リドゥで、そのような関係になることについて、小鳩先輩はどう考えているのだろう?
一時の享楽か? 現実でも付き合う覚悟があるのか? 分からない。
翌日、授業をサボって、ふたりきりの晴れた学校の屋上にて、「小鳩先輩は私のどこが好きなの?」と訊いてみた。
「全部、と言いてぇところだけど、ブッチョの全てをオレは知らねぇんだよなぁ……」
先輩は、私の目を真っ直ぐ見つめながら言う。
「ナマエはさ、どこまでオレに踏み込ませてくれんの?」
「それは……その……」
「オレが、27歳ニートだって知っても、ナマエは引かなかった。愛してくれた。ナマエが鬼でも悪魔でも、オレは愛す努力をしたいと思ってる」
先輩の言葉は真摯だ。
「まず、その……私は、31歳なんだよね……」
「歳上カノジョいいじゃん!」
「それで、職業は、フリーのライター」
「カッケーな!」
「それから、私は、私は……これ以上、私に踏み込みますか? 本当に、いいんですか?」
小鳩先輩は私の手を握り、「ああ」と真剣な表情で答える。
「私、Xジェンダーの中性なんです。俺の肉体の性別は、男、です…………」
「ナマエ、愛してるぜ……! 人間と人間なんだから、問題なんてほとんどないようなもんじゃねぇか!」
「小鳩先輩…………!?」
彼が急に抱き締めてきたので、私は驚いた。
抱き締め返そうとする腕は震えて、儘ならない。
「俺も好きだよ、小鳩………」
必死に、それだけの台詞を絞り出す。
「その、俺ってのが素なのか?」
「うん。まあ、そうなるかな」
「いいじゃん!」
「小鳩…………無理してない……?」
「全然、って言えたらカッコ良かったんだけどよ。すこしだけ動揺してる」
小鳩は、そう言いながらも、俺を抱き締める力を強くした。
「もう、これ以上失いたくねぇ。ナマエを失いたくねぇよ…………」
俺は、やっとのことで抱き締め返す。
「小鳩、先輩。私とセックスしませんか?」
「えっ!?」
「私とセックスするなら、今のうちですよ。だって、現実では俺は男なんですから。後輩女子とセックス、したくないですか?」
「ナマエは、したいのかよ?」
「小鳩先輩となら。今の私、結構可愛いでしょう? 今しか出来ないかもしれないですよ?」
「うっ。小首を傾げながら言うのは反則っしょ~!」
小鳩先輩は、私から体を離して、頭を抱える。真剣に悩んでいる様子だ。
「私の家、昼間は誰もいないんですよ」
「うわーっ! 青春っぽい!」
「ふふ」
◆◆◆
結局のところ、私たちは性行為をすることにした。
小鳩先輩を部屋に招き入れ、私は、鞄を下ろして、ポニーテールをほどき、制服を脱ごうとする。
「待った。オレが脱がす」
「あ、その方が良いですか」
なるほど。私は、ベッドに腰を下ろして、先輩を見上げた。少し、顔が赤くなっている彼が可愛くて、思わず微笑んでしまう。
ブレザーを脱がされ、ネクタイを外され……スカートとストッキングは自分で脱いだ。
あとは、身に付けているのは、下着だけ。
先輩は、優しく私を押し倒した。
「オレも脱がなきゃだよな。ちょっと待ってくれ」
「はい」
小鳩先輩も、下着一枚になって、何故か正座している。
「本当にいいんだな?」
「いいですよ」
私は上体を起こして、ブラジャーのホックを外した。そして、パンツも脱ぐ。
「綺麗だな…………」
そう、俺が望んだからだ。綺麗な女の子として産まれていれば、と。
「先輩……」
私は少し顔を赤らめて、小鳩先輩を見つめた。
その後は、ごく普通に正常位でセックスをした。ごく普通の男女の表象は、私の望んだもののはずなのに、どこか冷めた目でそれを見ている私がいる。こんなものが欲しかったのか、と。
事後。私と先輩は、ベッドに並んで天井を見上げている。
「気持ち良かったですか?」
「……サイコー。ナマエは?」
「正直、よく分かりません」
「そっか……」
「でも、小鳩先輩とセックスしたこと、後悔はないですから。これはこれで、大切な思い出として持ち帰ります」
「そうか」
「俺、現実に帰ったら、小鳩の処女もらいたいなっ」
「えっ!? 本来は、そっち側なん?!」
「いや、可能性の話です」
俺は、クスクス笑いながら告げた。
「ま、まあ、ナマエならなくもない、かもな……?」
「無理はしなくていいよ?」
「現実に帰ってから、じっくり考えるわ」
「よろしく」
そう言って、小鳩に軽くキスする。
男女の恋愛ごっこはおしまい。
「あ、一緒にお風呂入ります?」
「入る!」
「はーい」
リドゥにいる間は、このごっこ遊びを続けてもいいか、と私は思い直した。
リドゥでの、おままごとみたいな恋。
出会ったのは、学校の食堂。彼は千夏さんをナンパしていた。その後、ナンパ先が私になり、二度会えたら、それは運命だと彼は言った。だが、私には、そうは思えない。
「ナマエ、愛してるぜ!」
「私も愛してるよ、小鳩先輩」
そんなことを言い合って、抱き締め合って、キスをする。
ああ、ああ、こんなことは、おままごとだ。
私の正体を知ったら、この恋は終わりを迎えるのだろう。それが、どうしようもなく悲しい。
私が今の私じゃなくても、あなたは愛してくれますか?
疑問を呑み込み、私は小鳩先輩と指を絡ませて手を繋ぐ。温かい。
「今日のデートは、どうする?」
「プラネタリウムに行きたいです」
「オッケー!」
偽物の星。偽物の私にはお似合いだ。
ふたりで見るプラネタリウムの星々は、美しかった。
「クレープでも食べに行く?」
「はい」
私たちは、また手を繋いで、歩き出す。
ところで私は、吟の正体を知っている。現実での肉体は、女性。おそらく、私と同じで、Xジェンダー。
そして、私の現実での肉体の性別は、男性である。それを先輩に告げる勇気がない。
買ったクレープを食べているが、なんだか砂を噛んでいるかのような気分だ。
私は感情が表に出るタイプではないから、小鳩先輩は気付かないだろうけれど。というか、気付いてほしくはないのだけれど。
砂を噛み終えて呑み込んだ後、私たちは別れて、帰路につく。
「キィ」
「どうした? 我がハンシンよ」
「私の正体を知ったら、小鳩先輩は私を嫌うかな?」
「……キィには、分からない。だが、現実に帰るんだろう?」
「そのつもりだよ」
「それなら、遅かれ早かれ正体は知られることになるだろう」
「そうだね。怖いなぁ」
「部長…………」
「小鳩先輩に嫌われたら、嫌だなぁ」
「コバトに嫌われることを恐れているのだな、部長は」
「うん。近頃の私は、それが一番恐ろしいんだ」
「ハンシンよ、そう悲観することもないのではないか? 案外すんなり受け入れてくれるかもしれないぞ」
「だといいんだけどね…………」
キィの楽観は、とてもありがたいが、私には少し難しかった。
だって、小鳩先輩はシスヘテロ男性だと思うから。肉体が男性の私を愛して、なんて言われても困るのではないかと考えてしまう。
眠りにつく前には、余計なことばかり考える。私の悪い癖だ。
パンドラの楽曲、オルターガーデンの一部が、頭の中で繰り返し再生される。
「愛していたことさえ馬鹿らしく思うの」
彼に、そんな風に思われたら、生きていけないかもしれない。
眠る直前まで、小鳩先輩のことを想い、私は意識を手放した。
◆◆◆
そもそもの話。何故、私が小鳩先輩と付き合うことになったのかというと。先輩は、いつもの調子で私にナンパな声をかけて来て、現実で女扱いされたことのなかった私は、なんだか舞い上がってしまって。そして、何度かデートを重ねて、恋人同士になるに至ったのだ。
リドゥで、そのような関係になることについて、小鳩先輩はどう考えているのだろう?
一時の享楽か? 現実でも付き合う覚悟があるのか? 分からない。
翌日、授業をサボって、ふたりきりの晴れた学校の屋上にて、「小鳩先輩は私のどこが好きなの?」と訊いてみた。
「全部、と言いてぇところだけど、ブッチョの全てをオレは知らねぇんだよなぁ……」
先輩は、私の目を真っ直ぐ見つめながら言う。
「ナマエはさ、どこまでオレに踏み込ませてくれんの?」
「それは……その……」
「オレが、27歳ニートだって知っても、ナマエは引かなかった。愛してくれた。ナマエが鬼でも悪魔でも、オレは愛す努力をしたいと思ってる」
先輩の言葉は真摯だ。
「まず、その……私は、31歳なんだよね……」
「歳上カノジョいいじゃん!」
「それで、職業は、フリーのライター」
「カッケーな!」
「それから、私は、私は……これ以上、私に踏み込みますか? 本当に、いいんですか?」
小鳩先輩は私の手を握り、「ああ」と真剣な表情で答える。
「私、Xジェンダーの中性なんです。俺の肉体の性別は、男、です…………」
「ナマエ、愛してるぜ……! 人間と人間なんだから、問題なんてほとんどないようなもんじゃねぇか!」
「小鳩先輩…………!?」
彼が急に抱き締めてきたので、私は驚いた。
抱き締め返そうとする腕は震えて、儘ならない。
「俺も好きだよ、小鳩………」
必死に、それだけの台詞を絞り出す。
「その、俺ってのが素なのか?」
「うん。まあ、そうなるかな」
「いいじゃん!」
「小鳩…………無理してない……?」
「全然、って言えたらカッコ良かったんだけどよ。すこしだけ動揺してる」
小鳩は、そう言いながらも、俺を抱き締める力を強くした。
「もう、これ以上失いたくねぇ。ナマエを失いたくねぇよ…………」
俺は、やっとのことで抱き締め返す。
「小鳩、先輩。私とセックスしませんか?」
「えっ!?」
「私とセックスするなら、今のうちですよ。だって、現実では俺は男なんですから。後輩女子とセックス、したくないですか?」
「ナマエは、したいのかよ?」
「小鳩先輩となら。今の私、結構可愛いでしょう? 今しか出来ないかもしれないですよ?」
「うっ。小首を傾げながら言うのは反則っしょ~!」
小鳩先輩は、私から体を離して、頭を抱える。真剣に悩んでいる様子だ。
「私の家、昼間は誰もいないんですよ」
「うわーっ! 青春っぽい!」
「ふふ」
◆◆◆
結局のところ、私たちは性行為をすることにした。
小鳩先輩を部屋に招き入れ、私は、鞄を下ろして、ポニーテールをほどき、制服を脱ごうとする。
「待った。オレが脱がす」
「あ、その方が良いですか」
なるほど。私は、ベッドに腰を下ろして、先輩を見上げた。少し、顔が赤くなっている彼が可愛くて、思わず微笑んでしまう。
ブレザーを脱がされ、ネクタイを外され……スカートとストッキングは自分で脱いだ。
あとは、身に付けているのは、下着だけ。
先輩は、優しく私を押し倒した。
「オレも脱がなきゃだよな。ちょっと待ってくれ」
「はい」
小鳩先輩も、下着一枚になって、何故か正座している。
「本当にいいんだな?」
「いいですよ」
私は上体を起こして、ブラジャーのホックを外した。そして、パンツも脱ぐ。
「綺麗だな…………」
そう、俺が望んだからだ。綺麗な女の子として産まれていれば、と。
「先輩……」
私は少し顔を赤らめて、小鳩先輩を見つめた。
その後は、ごく普通に正常位でセックスをした。ごく普通の男女の表象は、私の望んだもののはずなのに、どこか冷めた目でそれを見ている私がいる。こんなものが欲しかったのか、と。
事後。私と先輩は、ベッドに並んで天井を見上げている。
「気持ち良かったですか?」
「……サイコー。ナマエは?」
「正直、よく分かりません」
「そっか……」
「でも、小鳩先輩とセックスしたこと、後悔はないですから。これはこれで、大切な思い出として持ち帰ります」
「そうか」
「俺、現実に帰ったら、小鳩の処女もらいたいなっ」
「えっ!? 本来は、そっち側なん?!」
「いや、可能性の話です」
俺は、クスクス笑いながら告げた。
「ま、まあ、ナマエならなくもない、かもな……?」
「無理はしなくていいよ?」
「現実に帰ってから、じっくり考えるわ」
「よろしく」
そう言って、小鳩に軽くキスする。
男女の恋愛ごっこはおしまい。
「あ、一緒にお風呂入ります?」
「入る!」
「はーい」
リドゥにいる間は、このごっこ遊びを続けてもいいか、と私は思い直した。