その他
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼は、俺のヒーローだった。
桃色の髪の優しいヒーローの名は、右睡真咲也。真咲也は、本人は知らないだろうが、俺の命の恩人である。
高校一年の冬に、俺は自殺をしようと思ったのだが、真咲也と偶然出会って、こんな善人が生きている世界になら、もう少し居てやってもいいかと考えられたのだ。
その真咲也が、首を吊り、自殺した。
近頃よく連んでいた女曰く、「最近思い悩んでいるようだった」そうだ。誰だ、お前は。
知らない。分からない。理解出来ない。よりによって、何故、真咲也が死んだ?
「……お前だったら、止められたのか? 真咲也の自殺を…………」
「それは…………」
よく知らない、俺からすれば、ぽっと出の女は言い澱む。
「答えなくていい」
「……はい」
この女は、真咲也の何なのだろう? 友人? 恋人? それ以外の何か? 生前親しくしていましたなんて抜かすのか?
恐らく、真咲也の死に最も肉薄していた女。
ゆるせない。ゆるせるはずがない。真咲也の自殺を許した人間なんか。
ああ、でも、それは。彼の自殺を許してしまったのは、何も彼女だけではなく。世界中の人間、全てが憎い。その中でも一番憎らしいのは、自分自身である。俺という人間は、彼に救われたのに。まだ恩返しも済んでないのに。死なれてしまった。死なせてしまった。
神も仏も悪魔もないが、ヒーローは居たというのに。
自分を含む世界への激しい怒り。世界から彼が損なわれたことへの深い悲しみ。それらが胸中で渦巻く。だというのに、ちら、と覗いた窓ガラス越しの俺は、能面みたいに張り付いた無表情で。俺は、心底安心した。だって、俺なんかに泣く権利はない。
俺の眼前にいる女は、ぽろぽろと涙をこぼし始めている。その涙の理由は、知るべきではない。
ショーが終わった後のヒーローみたいに、真咲也が手を振りながら出て来てくれたら、どんなに救われることだろう。
俺みたいな厭世家が生きているのに、真咲也は死んだ。
「俺が死ねばよかったのにな……」
ヒーローという希望を与えられた後の喪失は、俺に絶望をもたらす。出来ることなら、俺は君に出会わずに死ねばよかったのにな。君が居なくなった世界は、こんなにもくすんでしまったよ。
桃色の髪の優しいヒーローの名は、右睡真咲也。真咲也は、本人は知らないだろうが、俺の命の恩人である。
高校一年の冬に、俺は自殺をしようと思ったのだが、真咲也と偶然出会って、こんな善人が生きている世界になら、もう少し居てやってもいいかと考えられたのだ。
その真咲也が、首を吊り、自殺した。
近頃よく連んでいた女曰く、「最近思い悩んでいるようだった」そうだ。誰だ、お前は。
知らない。分からない。理解出来ない。よりによって、何故、真咲也が死んだ?
「……お前だったら、止められたのか? 真咲也の自殺を…………」
「それは…………」
よく知らない、俺からすれば、ぽっと出の女は言い澱む。
「答えなくていい」
「……はい」
この女は、真咲也の何なのだろう? 友人? 恋人? それ以外の何か? 生前親しくしていましたなんて抜かすのか?
恐らく、真咲也の死に最も肉薄していた女。
ゆるせない。ゆるせるはずがない。真咲也の自殺を許した人間なんか。
ああ、でも、それは。彼の自殺を許してしまったのは、何も彼女だけではなく。世界中の人間、全てが憎い。その中でも一番憎らしいのは、自分自身である。俺という人間は、彼に救われたのに。まだ恩返しも済んでないのに。死なれてしまった。死なせてしまった。
神も仏も悪魔もないが、ヒーローは居たというのに。
自分を含む世界への激しい怒り。世界から彼が損なわれたことへの深い悲しみ。それらが胸中で渦巻く。だというのに、ちら、と覗いた窓ガラス越しの俺は、能面みたいに張り付いた無表情で。俺は、心底安心した。だって、俺なんかに泣く権利はない。
俺の眼前にいる女は、ぽろぽろと涙をこぼし始めている。その涙の理由は、知るべきではない。
ショーが終わった後のヒーローみたいに、真咲也が手を振りながら出て来てくれたら、どんなに救われることだろう。
俺みたいな厭世家が生きているのに、真咲也は死んだ。
「俺が死ねばよかったのにな……」
ヒーローという希望を与えられた後の喪失は、俺に絶望をもたらす。出来ることなら、俺は君に出会わずに死ねばよかったのにな。君が居なくなった世界は、こんなにもくすんでしまったよ。