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ムシカゴに来てから、もうしばらく経つ。街獣たちの調査も、一癖も二癖もある職員たちとの関係構築も、良好である。
良好。それなりの信頼関係を築けていると思いたい。
しかし、私は、とあるひとりを特別に想ってしまった。クリスさんのことをだ。けれど、クリスさんには特別な人がいて、それは私ではない。
クリスさんの特別な人、リンさんも、最近はまんざらでもない感じでいる。片足を失うことも厭わないほどに愛されていて、羨ましい。
ある日、私は気付いてしまった。
私は、わざと人を殺すことの出来る立場にいると。その考えが一度浮かべば、街獣の調査に乗り出す時には、常に「人を殺す」という選択肢が脳裏によぎるようになってしまった。
私は悪魔か? 自問する。
少なくとも、私は天使ではなかった。
ある作戦で、私はリンさんを、彼女を葬ることにしたのだ。もちろん、その作戦にはクリスさんは入れない。
好戦的な彼女の案を採用し続け、リンさんは腹を斬られて死んだ。初の死者である。
ナーシャさんからは、同情的な視線を。クリスさんからは軽蔑の眼差しを。私には刺す様に感じ取れた。イイ仲の女が死んだのだ、当然だろう。
次の日、クリスさんは自室から出てきて、ごく普通に私に挨拶をしてきた。
「おはようございます」
「おはようございます、クリスさん」
「…………」
「私を罵らないんですか?」
「今、必死に抑え込んでんだよ、クソ世話係」
「申し訳ありません……」
きっと、この恋は報われない。報われてはならないのだろう。
「なんで、アンタがオレに謝るんですか?」
「リンさんを殺したから」
「大仰な言い方だな。むしろ、アンタは今まで死者をひとりも出さずによくやってたよ」
「気を遣わないでいいですよ。私が憎らしいでしょう?」
「憎くないと言えば嘘になります」
やはり、そうか。
「でも、みっともなくても、生きていくと決めましたから」
「全力でサポートします」
どの口が。殺人者の癖に。私は、罪人だ。
クリスさんは強くなった。かのように見えたが、日に日に様子がおかしくなっていく。
向精神薬の量が増え、似ても似つかない私を「リンさん」と呼び間違うことが増え、彼の精神がボロボロになっていくのを感じる。
「クリスさ……クリス!」
「なんですか? リンさん」
彼は光のない濁った目で私を見つめた。
「今日もがんばろうな」
「はい」
私は、たまにリンさんに成り代わり、クリスさんを元気付けることにする。それが、恋という炎に身を焼かれた羽虫に出来る贖罪と信じて。
良好。それなりの信頼関係を築けていると思いたい。
しかし、私は、とあるひとりを特別に想ってしまった。クリスさんのことをだ。けれど、クリスさんには特別な人がいて、それは私ではない。
クリスさんの特別な人、リンさんも、最近はまんざらでもない感じでいる。片足を失うことも厭わないほどに愛されていて、羨ましい。
ある日、私は気付いてしまった。
私は、わざと人を殺すことの出来る立場にいると。その考えが一度浮かべば、街獣の調査に乗り出す時には、常に「人を殺す」という選択肢が脳裏によぎるようになってしまった。
私は悪魔か? 自問する。
少なくとも、私は天使ではなかった。
ある作戦で、私はリンさんを、彼女を葬ることにしたのだ。もちろん、その作戦にはクリスさんは入れない。
好戦的な彼女の案を採用し続け、リンさんは腹を斬られて死んだ。初の死者である。
ナーシャさんからは、同情的な視線を。クリスさんからは軽蔑の眼差しを。私には刺す様に感じ取れた。イイ仲の女が死んだのだ、当然だろう。
次の日、クリスさんは自室から出てきて、ごく普通に私に挨拶をしてきた。
「おはようございます」
「おはようございます、クリスさん」
「…………」
「私を罵らないんですか?」
「今、必死に抑え込んでんだよ、クソ世話係」
「申し訳ありません……」
きっと、この恋は報われない。報われてはならないのだろう。
「なんで、アンタがオレに謝るんですか?」
「リンさんを殺したから」
「大仰な言い方だな。むしろ、アンタは今まで死者をひとりも出さずによくやってたよ」
「気を遣わないでいいですよ。私が憎らしいでしょう?」
「憎くないと言えば嘘になります」
やはり、そうか。
「でも、みっともなくても、生きていくと決めましたから」
「全力でサポートします」
どの口が。殺人者の癖に。私は、罪人だ。
クリスさんは強くなった。かのように見えたが、日に日に様子がおかしくなっていく。
向精神薬の量が増え、似ても似つかない私を「リンさん」と呼び間違うことが増え、彼の精神がボロボロになっていくのを感じる。
「クリスさ……クリス!」
「なんですか? リンさん」
彼は光のない濁った目で私を見つめた。
「今日もがんばろうな」
「はい」
私は、たまにリンさんに成り代わり、クリスさんを元気付けることにする。それが、恋という炎に身を焼かれた羽虫に出来る贖罪と信じて。