ポケモン
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◆マスキッパと私
部屋に草が浮いている。ふよふよ。
水槽の浮き草の如く、浮遊しているのだ。ゆらりと。
「いや、何故?」
私は思わず、植物のような触手をくねらす、理知的とは言えない顔をしたポケモンに問うた。
マスキッパは地に足をつけているかと思いきや、微妙に浮いている。
「どういう気分だ、それは」
「すきゅ」
何かを考えているのかさえ怪しい顔付きで、マスキッパは鳴いた。
「私も、湿地では歩き難いから浮くか、みたいなノリで浮きたいのだがね。君、私を乗せて空を飛べはしないのかい?」
「すきゅう」
「ごめん。気にしないでくれ、少し疲れているだけだよ」
このところ睡眠時間を削っていたので、肉体的にも精神的にも疲労しているのだ、私は。
「ふわぁ……少し眠るかね…………」
欠伸をして寝室へ向かおうとしたところで、私は床に落ちていた書類に足を滑らせ、派手に横の棚にぶつかり雪崩を起こした。
そして私は後ろに倒れながら、スローモーション開始。
顔面に迫り来る、『湿原におけるポケモンの生態と多様性保全』! 自著の中で一番分厚いもの!
床にぶつけそうな後頭部と顔のどちらを守るべきか、明晰ではない頭の私は決めかねてしまい、両手は空中を掻いたまま――――床に倒れなかった。マスキッパが緑色の触手で、私の体と『湿原におけるポケモンの生態と多様性保全』を支えていた。
「あ、ありがとう」
なんとか自立し直し、マスキッパの頭を撫でる。
「すきゅっ」
嬉しそうだ。
「なるほどね」
私は部屋の惨状を見回しながら、白衣についた埃を払い、まず掃除をすることにした。
私の相棒は、可愛いくて賢い。
◆出会い篇
湿った土の匂い、冷たい空気。ここ、ノモセ大湿原は決して私の領域ではないが、慣れ親しんできた土地である。
ノモセシティに居を構えて数年、私はこの土地のポケモンを調査・研究してきた。
マスキッパと出会ったのは、ここに来た初年のことである。
その日、私は研究仲間たちと夜間のポケモン観察をしていた。
ヘッドライトを頼りに、足場の悪い湿地を進む。時折ホーホーやヨルノズクの鳴き声がするが、昼よりは遥かに静かだ。夏の夜でも、大湿原はひんやりと涼しい。
ふと、樹上に目をやると、枝に巻き付いたマスキッパがすやすやと眠っていた。初めて観る光景に、「え」と声が出た。樹上で口を開けて餌を待っているうちに眠ってしまったのだろうか? そんなことがあるのか?
「なあ、見たかい?」
「はい。まるで樹上性ポケモンみたいですね」
私の質問に、虫取り網を携えた研究員が答えた。
この個体以外も木の上で眠ることがあるのだろうか? 興味は尽きない。
「マスキッパは浮くし歩くし巻き付くし、面白いよ、本当に」
「捕獲します?」
「ん。そうだな、試してみるか」
「えい」と取り出したダークボールを投げる。軽く、玉入れでもするかのように。すると、特に攻防もなく、やすやすと捕獲出来てしまった。
「これで野生なのか…………」
こうして、私はマスキッパと暮らすことになったのである。
◆ポケモンバトル篇
助手と共にカロス地方を旅している。
観光というよりは、研究のためである。主に花畑に生息するポケモンの調査をする予定である。
それなのに、何故こうなったのだろう。
私は現在、スカイバトルを行っている。何故。
助手がスカイバトルを見てみたいというのだが、グレッグルしか連れていないため、私とマスキッパが行うことになったのである。
まあ助手には世話になっているし、私のマスキッパはポケモンバトルが嫌いではない。
しかしね、十中八九、相手は飛行だぞ。効果は抜群だぞ。アウトだろう。
私に選択肢はないので、マスキッパを出すが。宙に浮き、バトルに臨むマスキッパの姿は、なかなかに超現実的だ。
そして、相手のスカイトレーナーが出してきたのは――――――ソルロック?!
岩! 飛行だらけのスカイバトルだからか!
勝機がありそうだな、これは。
マスキッパの方が行動が遅い。
相手は炎を打ってくるはず。マスキッパの耐久力なら、一度は耐えてくれるだろう。その後、パワーウィップで勝てる。
私の読み通り、マスキッパはソルロックの火炎放射を耐えた。
「流石、私の相棒だな」
「すきゅっ」
勝利は心地好いものであった。
◆私とマスキッパ
現在、私はリージョンフォームのマスキッパ(妄想)に思いを馳せている。こう、蔓が身体中に巻き付いていてだな----それはモジャンボでは?
この妄想はやめだ。
珍しいマスキッパと言えば、色違いである。枯れ草色のマスキッパは、それはそれは可愛らしいものだ。
と、考え事をしている内に、我が故郷のシオンタウンに到着。
ここに来ると、考えざるを得ないことがある。
いずれ、私とマスキッパに別れの時が訪れることだ。
だが今は、知るか!
私もマスキッパも健康だ! まだまだまだまだ、一緒にやりたいことがあるのだ。
私の勇敢なマスキッパで、バトルに挑み、トリックルームを使いたい。
様々な美味しいものを食べさせたい。
ポケモンの生態調査がてらのキャンプを楽しみたい。
「次は何をしようか?」
「すきゅきゅっ」
やりたいことを、やれるだけやろう。
私たちは、未知なるものを求め、足を踏み出した。
2020/06/12
部屋に草が浮いている。ふよふよ。
水槽の浮き草の如く、浮遊しているのだ。ゆらりと。
「いや、何故?」
私は思わず、植物のような触手をくねらす、理知的とは言えない顔をしたポケモンに問うた。
マスキッパは地に足をつけているかと思いきや、微妙に浮いている。
「どういう気分だ、それは」
「すきゅ」
何かを考えているのかさえ怪しい顔付きで、マスキッパは鳴いた。
「私も、湿地では歩き難いから浮くか、みたいなノリで浮きたいのだがね。君、私を乗せて空を飛べはしないのかい?」
「すきゅう」
「ごめん。気にしないでくれ、少し疲れているだけだよ」
このところ睡眠時間を削っていたので、肉体的にも精神的にも疲労しているのだ、私は。
「ふわぁ……少し眠るかね…………」
欠伸をして寝室へ向かおうとしたところで、私は床に落ちていた書類に足を滑らせ、派手に横の棚にぶつかり雪崩を起こした。
そして私は後ろに倒れながら、スローモーション開始。
顔面に迫り来る、『湿原におけるポケモンの生態と多様性保全』! 自著の中で一番分厚いもの!
床にぶつけそうな後頭部と顔のどちらを守るべきか、明晰ではない頭の私は決めかねてしまい、両手は空中を掻いたまま――――床に倒れなかった。マスキッパが緑色の触手で、私の体と『湿原におけるポケモンの生態と多様性保全』を支えていた。
「あ、ありがとう」
なんとか自立し直し、マスキッパの頭を撫でる。
「すきゅっ」
嬉しそうだ。
「なるほどね」
私は部屋の惨状を見回しながら、白衣についた埃を払い、まず掃除をすることにした。
私の相棒は、可愛いくて賢い。
◆出会い篇
湿った土の匂い、冷たい空気。ここ、ノモセ大湿原は決して私の領域ではないが、慣れ親しんできた土地である。
ノモセシティに居を構えて数年、私はこの土地のポケモンを調査・研究してきた。
マスキッパと出会ったのは、ここに来た初年のことである。
その日、私は研究仲間たちと夜間のポケモン観察をしていた。
ヘッドライトを頼りに、足場の悪い湿地を進む。時折ホーホーやヨルノズクの鳴き声がするが、昼よりは遥かに静かだ。夏の夜でも、大湿原はひんやりと涼しい。
ふと、樹上に目をやると、枝に巻き付いたマスキッパがすやすやと眠っていた。初めて観る光景に、「え」と声が出た。樹上で口を開けて餌を待っているうちに眠ってしまったのだろうか? そんなことがあるのか?
「なあ、見たかい?」
「はい。まるで樹上性ポケモンみたいですね」
私の質問に、虫取り網を携えた研究員が答えた。
この個体以外も木の上で眠ることがあるのだろうか? 興味は尽きない。
「マスキッパは浮くし歩くし巻き付くし、面白いよ、本当に」
「捕獲します?」
「ん。そうだな、試してみるか」
「えい」と取り出したダークボールを投げる。軽く、玉入れでもするかのように。すると、特に攻防もなく、やすやすと捕獲出来てしまった。
「これで野生なのか…………」
こうして、私はマスキッパと暮らすことになったのである。
◆ポケモンバトル篇
助手と共にカロス地方を旅している。
観光というよりは、研究のためである。主に花畑に生息するポケモンの調査をする予定である。
それなのに、何故こうなったのだろう。
私は現在、スカイバトルを行っている。何故。
助手がスカイバトルを見てみたいというのだが、グレッグルしか連れていないため、私とマスキッパが行うことになったのである。
まあ助手には世話になっているし、私のマスキッパはポケモンバトルが嫌いではない。
しかしね、十中八九、相手は飛行だぞ。効果は抜群だぞ。アウトだろう。
私に選択肢はないので、マスキッパを出すが。宙に浮き、バトルに臨むマスキッパの姿は、なかなかに超現実的だ。
そして、相手のスカイトレーナーが出してきたのは――――――ソルロック?!
岩! 飛行だらけのスカイバトルだからか!
勝機がありそうだな、これは。
マスキッパの方が行動が遅い。
相手は炎を打ってくるはず。マスキッパの耐久力なら、一度は耐えてくれるだろう。その後、パワーウィップで勝てる。
私の読み通り、マスキッパはソルロックの火炎放射を耐えた。
「流石、私の相棒だな」
「すきゅっ」
勝利は心地好いものであった。
◆私とマスキッパ
現在、私はリージョンフォームのマスキッパ(妄想)に思いを馳せている。こう、蔓が身体中に巻き付いていてだな----それはモジャンボでは?
この妄想はやめだ。
珍しいマスキッパと言えば、色違いである。枯れ草色のマスキッパは、それはそれは可愛らしいものだ。
と、考え事をしている内に、我が故郷のシオンタウンに到着。
ここに来ると、考えざるを得ないことがある。
いずれ、私とマスキッパに別れの時が訪れることだ。
だが今は、知るか!
私もマスキッパも健康だ! まだまだまだまだ、一緒にやりたいことがあるのだ。
私の勇敢なマスキッパで、バトルに挑み、トリックルームを使いたい。
様々な美味しいものを食べさせたい。
ポケモンの生態調査がてらのキャンプを楽しみたい。
「次は何をしようか?」
「すきゅきゅっ」
やりたいことを、やれるだけやろう。
私たちは、未知なるものを求め、足を踏み出した。
2020/06/12