ジュヴナイル

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「翡翠……起きろよ……」
「……ナマエ…………?」
「翡翠! 良かったぁ……」
 愛しい者の安堵する顔が視界に映る。

「僕は……痛っ……」
「頭打ったんだよ、翡翠。敵に壁に叩き付けられてさ」
「そうか…………ッ?!」
「どうした?」
「どうしたも何も……!」
 急いで上体を起こす。ナマエに膝枕されていた。

「急に起きて大丈夫か?」
「大丈夫だよ」

 ここは公園のベンチだ。幸いなことに周りに人はいないが、あの状態は心臓に悪い。彼の膝には保冷剤が乗っている。

「僕はどれくらい気を失っていた?」
「2時間くらい」
「そんなに……すまなかった……」
「謝るのは俺の方だ。俺を庇って攻撃されたんだから」
「君が傷付くくらいなら僕が怪我をした方がいい」
「そんなの嬉しくない」
「君は本当に優しいな」
「ばか。お前が死んだらどうすんだよ。もし、そんなことになったら俺は……」
ナマエ……」
「俺は、お前を食べるしかなくなる」
「え?」
「お前が死んで、ただ朽ちてくとか、ただ燃やすとか、そんなのはごめんだ。絶対に食べる。死んだお前に俺は止められないぞ」
「な、何を馬鹿な……」
「うっせー! ばかはお前だ!」
ナマエ……?」
「そもそも他人に殺されるのも嫌なんだよ。そんなことになるくらいなら俺が殺したいよ。そんな特別な体験、俺以外に味わって欲しくないよ」
「ッ!?……」
 何故か、赤面した。胸がざわつく。

「な……んで、そんなこと……」
「お前は俺のなんだからな」

 真っ直ぐに僕を見つめる彼に、ドキリとした。顔の熱が上がった気がする。

「お前の命も死も俺のだから。魂も肉体も運命も俺に捧げろよ」

 そう言うと彼は、僕の首筋に噛み付いた。ぞくぞくした。

「全て、君に捧げるよ……」
「それでいい」
 夕闇の中、契約は成立した。

「お前は俺が食い尽くす」
 彼は笑う。

「ああ」
 僕も笑った。お互い、好きも愛してるも無い告白だった。





2013/07/03サルベージ
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