ペルソナ
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例のごーこんきっさの最下層での一件からミョウジナマエの様子がおかしい。あからさまではないが、避けられている。目を合わせようともしない。まあ、運命の相手だとかふざけたことを言われたのだから仕方ないとは思う。好きな女のひとりもいるだろうに、可哀想だ。
「おい、ミョウジ」
「はい。なんですか?」
「お前、あのことは気にすんな。忘れろ」
「俺は……その……」
「……もしかして、仲間内に好きな女がいんのか……?」
だとしたら、悲惨だ。
「……違います。そんなことはないです」
「そうか。そりゃ不幸中の幸いだな」
「先輩……俺、が気にしてるのはですね、あなたを……」
「俺を……?」
「先輩を、あんな目に遭わせてしまったことですよ。会わせる顔がないです」
「は……? いや、俺のことなんか気にすんなよ」
「でも、迷惑でしたよね?」
「そりゃあ、お前だろ」
「そうですね。本当、迷惑な話です。まさか、あんな……馬鹿げた茶番が始まるなんて……」
「そんな気に病むな。悪い夢だったと思え」
「はい……」
「お前のせいじゃねえよ」
「はい…………でも、俺……」
「……ッ?!」
ミョウジナマエが、感情の起伏がほとんど無い彼が、はらはらと涙を落としている。
「お、おい……?」
「すいませ……なんでも、ないです……」
やっとのこと絞り出したのか、声が震えている。彼は両腕で顔を隠し、口元しか見えない。
「ごめんなさい……ごめんなさい、荒垣先輩……そんなつもり、なかったのに……」
次の言葉は、衝撃的なんてものじゃなかった。
「……あなたのことが、好きです」
「冗談、じゃねえよな……悪りぃ……ヒデェこと言ったよな、俺」
酷く傷付けてしまったのだろう。
「いえ。仕方ないです。そんな考えにはなりませんよ、普通」
『普通に考えて無理がある』
あの時、そう言った。それが、どれほど彼を傷付けたのか。
「もう、嫌だ。消えてしまいたい。こんなこと言うつもりなかったんです。迷惑かけたくなんか、なかったんです」
◆◆◆
あの告白から、もう随分経つ。
「ここでのこと、忘れてしまうみたいですね」
「……らしいな」
「俺が言ったことだけは、必ず忘れてくださいね。勝手なことですが、俺は自分が言ったことを忘れたくないんですけどね。気持ちを伝えるのが苦手なりに、頑張って話したことだから。それと、先輩に優しくしてもらったことも忘れたくないです」
「俺は……」
「先輩は、どうか忘れてください」
「……ああ、わかった」
「ありがとうございます」
実のところ、出来ることなら忘れたくないと思ってしまっている。感情を発露する彼は、それほど眩しいものだった。しかし記憶が継続した場合、彼のことが間違いなく枷になるだろう。それは来るべき時への覚悟を鈍らせるものだ。だから、忘れる以外の答えはない。彼を、どんなに悲しませることになろうとも。
2015/06/03
「おい、ミョウジ」
「はい。なんですか?」
「お前、あのことは気にすんな。忘れろ」
「俺は……その……」
「……もしかして、仲間内に好きな女がいんのか……?」
だとしたら、悲惨だ。
「……違います。そんなことはないです」
「そうか。そりゃ不幸中の幸いだな」
「先輩……俺、が気にしてるのはですね、あなたを……」
「俺を……?」
「先輩を、あんな目に遭わせてしまったことですよ。会わせる顔がないです」
「は……? いや、俺のことなんか気にすんなよ」
「でも、迷惑でしたよね?」
「そりゃあ、お前だろ」
「そうですね。本当、迷惑な話です。まさか、あんな……馬鹿げた茶番が始まるなんて……」
「そんな気に病むな。悪い夢だったと思え」
「はい……」
「お前のせいじゃねえよ」
「はい…………でも、俺……」
「……ッ?!」
ミョウジナマエが、感情の起伏がほとんど無い彼が、はらはらと涙を落としている。
「お、おい……?」
「すいませ……なんでも、ないです……」
やっとのこと絞り出したのか、声が震えている。彼は両腕で顔を隠し、口元しか見えない。
「ごめんなさい……ごめんなさい、荒垣先輩……そんなつもり、なかったのに……」
次の言葉は、衝撃的なんてものじゃなかった。
「……あなたのことが、好きです」
「冗談、じゃねえよな……悪りぃ……ヒデェこと言ったよな、俺」
酷く傷付けてしまったのだろう。
「いえ。仕方ないです。そんな考えにはなりませんよ、普通」
『普通に考えて無理がある』
あの時、そう言った。それが、どれほど彼を傷付けたのか。
「もう、嫌だ。消えてしまいたい。こんなこと言うつもりなかったんです。迷惑かけたくなんか、なかったんです」
◆◆◆
あの告白から、もう随分経つ。
「ここでのこと、忘れてしまうみたいですね」
「……らしいな」
「俺が言ったことだけは、必ず忘れてくださいね。勝手なことですが、俺は自分が言ったことを忘れたくないんですけどね。気持ちを伝えるのが苦手なりに、頑張って話したことだから。それと、先輩に優しくしてもらったことも忘れたくないです」
「俺は……」
「先輩は、どうか忘れてください」
「……ああ、わかった」
「ありがとうございます」
実のところ、出来ることなら忘れたくないと思ってしまっている。感情を発露する彼は、それほど眩しいものだった。しかし記憶が継続した場合、彼のことが間違いなく枷になるだろう。それは来るべき時への覚悟を鈍らせるものだ。だから、忘れる以外の答えはない。彼を、どんなに悲しませることになろうとも。
2015/06/03